行政書士の行政法|行政手続法・行審法・行訴法の違いと論点の記事

このページは、行政書士試験の行政法の記事の入口です。行政法の論点のページを、法律ごとに整理しています。

行政法では、執行停止のように同じ名前の制度が2つの法律に置かれていたり、審査請求と取消訴訟のように、同じ処分を争う手段が別々の法律に分かれていたりします。そこで論点のページは、制度の名前から引ける形で1つずつ作り、ここにまとめていきます。リンクの付いているものが公開済みで、付いていないものはこれから作るページです。

あわせて、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の違いを、それぞれの法律が1条で何を定めているかを軸に、1つの表に並べています。試験案内の行政法の括弧書きには名前のない、情報公開法と公文書管理法がどこで出題されているかも示します。

行政法の範囲は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表している令和8年度行政書士試験のご案内(2026年9月時点)に基づいています。


試験における「行政法」の出題範囲

試験案内は、法令等の科目の行政法について、「行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする」と示しています。このページの記事の並びも、この順に沿っています。

記述式では、平成21年度〜令和7年度の51問のうち17問が行政法から出題されています。そのうち11問が行政事件訴訟法です。どの年度にどの論点が出題されたかは、記述式の論点別の過去問にまとめています。


行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の違い

行政法のうち、名前も扱う場面も近いのがこの3つの法律です。大まかにいうと、行政手続法は行政庁が処分などをするときの手続を、行政不服審査法は処分や不作為に不服があるときに行政庁へ申し立てる手続を、行政事件訴訟法は裁判所で争う手続を定めています。表Aは、3つの法律を同じ項目で並べたものです。


表A 行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法(令和8年4月1日の時点の条文)
項目 行政手続法 行政不服審査法 行政事件訴訟法
1条が定めること 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(…)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする(1条1項) 行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、…国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする(1条1項) 目的の定めはない。1条の見出しは「この法律の趣旨」で、行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる、と定める
何を定める法律か 処分、行政指導及び届出に関する手続と、命令等を定める手続(1条1項)。例:申請に対する処分の審査基準(5条)、不利益処分をしようとする場合の聴聞・弁明の機会の付与(13条1項) 処分についての審査請求(2条)・不作為についての審査請求(3条)。このほか再調査の請求(5条)・再審査請求(6条) 行政事件訴訟=抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟(2条)。抗告訴訟は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟(3条1項)
誰が判断するか 処分をする行政庁。行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、…意見陳述のための手続を執らなければならない(13条1項) 審査請求がされた行政庁(審査庁。9条1項)。審査請求をすべき行政庁は4条が定め、処分庁等に上級行政庁がない場合などは当該処分庁等(1号)、前三号に掲げる場合以外の場合は当該処分庁等の最上級行政庁(4号) 裁判所。取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する(12条1項)
違法と不当 — 違法又は不当な処分(1条1項)。違法だけでなく不当も対象になる 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる(30条)
審査請求・出訴の期間(処分の場合) — 処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(18条1項本文)。処分(…)があった日の翌日から起算して一年(18条2項本文) 処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月(14条1項本文)。処分又は裁決の日から一年(14条2項本文)
ほかの法律との関係 他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる(1条2項)。適用除外は3条・4条 他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる(1条2項)。適用除外は7条 他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる(1条)

表Aは、令和8年度試験の基準日(令和8年4月1日)の時点の条文で作っています。その後の改正で本文が変わった条のうち表Aにかかわるのは行政手続法4条(4項2号)だけで、表Aのセルの文言は変わっていません。

1行目を読み比べると、行政手続法と行政不服審査法の1条は「目的とする」で終わりますが、行政事件訴訟法には目的の定めがありません。1条の見出しは「この法律の趣旨」で、行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除いてこの法律による、と定めているだけです。3つの法律の目的を並べて覚えるときは、ここに気をつけてください。

目的の語も違います。行政手続法は「公正の確保と透明性」の向上を図り、国民の権利利益の「保護に資する」ことを目的としています。行政不服審査法は、国民の権利利益の「救済」と、行政の適正な運営の確保の2つを挙げています。1条は、平成21年度〜令和7年度の間に、行政手続法で6問10肢、行政不服審査法で4問4肢が問われています(過去問の分析で、1条にかかわるとした肢の数です)。平成21年度 問12は行政手続法1条の目的を問う問題で、行政不服審査法1条の語を使った肢が1つ、情報公開法1条の語を使った肢が2つありました(行政不服審査法の数には入れていません)。

「違法と不当」の行は、行政不服審査法と行政事件訴訟法の分かれ目です。審査請求では「違法又は不当な処分」が対象になりますが、取消訴訟では、裁量処分は裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り取り消されます。審査請求と出訴の期間も、審査請求は「知った日の翌日から起算して三月」、取消訴訟は「知つた日から六箇月」と、条文の表現から異なります。ただし、取消訴訟も初日は数えないので、どちらも翌日から数え始めます(違うのは期間の長さです)。この2つの行は、審査請求と取消訴訟の違いのページで条文ごとに並べています。

最後の行のとおり、3つの法律はどれも、ほかの法律に特別の定めがあればそちらによる、と定めています。行政手続法の適用除外(3条・4条)は行政手続法の適用除外のページにまとめています。


法律ごとの論点のページ

行政手続法
行政手続法の適用除外/審査基準と処分基準の違い/聴聞と弁明の機会の付与/意見公募手続
行政不服審査法
行政不服審査法の執行停止
行政事件訴訟法
仮の義務付けと仮の差止め
国家賠償法
国家賠償法1条
地方自治法
住民監査請求と住民訴訟
2つの法律をまたぐもの
審査請求と取消訴訟の違い

1つの法律の中は、条文の順に並べています(行政手続法なら3条・4条、5条・12条、13条〜31条、38条〜45条の順)。近い制度と並べているページもあります。行政不服審査法の執行停止のページは、行政事件訴訟法の執行停止と並べています。仮の義務付けと仮の差止めのページは、同じ行政事件訴訟法の執行停止と並べています。国家賠償法1条のページは、民法715条(使用者責任)と並べています。

なお、この並びは出題の多い順ではありません。また、行政法の一般的な法理論のページは、現時点では作成を予定していません。


情報公開法・公文書管理法はどこで出題されるか

情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律。表Bでは「行政機関情報公開法」とも書いています)と公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)は、試験案内の行政法の括弧書きには名前がありません。ただ、括弧書きは「〜を中心とする」と示すもので、名前のない行政法の法令も出題されます。表Bの問題は、どれも法令等の問題(問1〜46の範囲)です。基礎知識の分野名「情報通信・個人情報保護」とは別の法律なので、混同しないようにしてください。

表Bは、平成21年度〜令和7年度の本試験のうち、問題の主題に情報公開か公文書管理が入っている5問を並べたものです。「問われ方」は過去問の分析で付けた分類で、問題文は載せていません。


表B 問題の主題が情報公開・公文書管理の問(平成24年度〜令和7年度・5問)
年度・問 形式 問題のテーマ 問われ方
平成24年度 問25 択一式 情報公開の不開示決定に対する争訟手段 主体すり替え/要件・効果の正誤/条文知識/判例の結論
令和2年度 問25 択一式 情報公開をめぐる最高裁判例(訴訟要件・立証責任・国賠等) 判例の結論
令和4年度 問42 多肢選択式 情報公開法と行政手続・不服審査 用語の意味/定義の正誤/条文知識
令和6年度 問26 択一式 公文書管理法の行政文書の定義・作成義務・整理・管理規則・報告 定義の正誤/要件・効果の正誤/条文知識
令和7年度 問26 択一式 行政機関情報公開法の開示請求・行政文書の定義・不開示情報 制度の混同/定義の正誤/適用範囲/要件・効果の正誤

表Bのテーマには、不開示の決定を争う審査請求や訴訟、国家賠償のように、行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法と重なるものがあります。公文書管理法だけを主題にした問題は令和6年度 問26です。問題の主題に入っていない問題でも、平成21年度 問12・令和5年度 問26では、情報公開法・公文書管理法の条文にかかわる肢が出ています。

1条の目的も、行政手続法と比べておくと混同を防げます。情報公開法の1条は、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」ことなどを目的としています。公文書管理法の1条も「現在及び将来の国民に説明する責務」を挙げています。行政手続法の1条が挙げるのは「公正の確保と透明性」の向上で、「説明する責務」の語はありません。上で触れた平成21年度 問12には、行政手続法の目的を問う問題の中に、情報公開法1条の語を使った肢が2つあります。

このサイトでは、情報公開法・公文書管理法の独立したページは設けていません。個人情報保護法は試験案内の基礎知識の分野名(情報通信・個人情報保護)にあるので、個人情報保護法と情報通信のページで扱っています。


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公表されている記述式の配点と試験の合格基準、記述式51問の法律別の出題の内訳は、行政書士の記述式の全体像に掲載しています。行政法以外の科目の記事は、行政書士試験の学習ガイドからご覧いただけます。