行政不服審査法の執行停止|行政事件訴訟法との違い

審査請求をしても、それだけで処分が止まるわけではありません。審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げないとされています(行政不服審査法25条1項)。裁決が出るまでの間、処分を止めるための仕組みが執行停止です。

行政不服審査法の執行停止は、審査庁が誰かによって、職権でできるかどうかと、とれる措置の幅が変わります。審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁自身である場合と、それ以外の場合とで、25条2項と3項に分けて書かれているためです。さらに、よく似た制度である行政事件訴訟法25条の執行停止とは、義務になる場面、取消しの手続、内閣総理大臣の異議の有無が違います。

このページでは、行政書士試験の受験生向けに、この3つ(2種類の審査庁と裁判所)を条文の文言のまま1行ずつ並べます。なお、ここで扱うのは行政不服審査法の執行停止で、税金の滞納処分の執行停止とは別の制度です。

本記事は、2026年9月時点の行政不服審査法(令和8年6月24日施行)と行政事件訴訟法(令和8年5月21日施行)にもとづいています。表で扱う条文は、令和8年度試験の基準日(令和8年4月1日)の時点と同じ内容です。


審査庁ごとに、行政事件訴訟法と並べる

表Aは、行政不服審査法25条の執行停止を、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁であるとき(2項)と、それ以外のとき(3項)に分け、行政事件訴訟法25条の執行停止と同じ項目で並べたものです。


表A 執行停止を、審査庁ごとに行政事件訴訟法と並べる
項目 処分庁の上級行政庁・処分庁である審査庁(25条2項) それ以外の審査庁(25条3項) 裁判所(行政事件訴訟法25条)
原則(執行不停止) 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(25条1項) 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(25条1項) 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(行政事件訴訟法25条1項)
申立てか職権か 審査請求人の申立てにより又は職権で(25条2項) 審査請求人の申立てにより(25条3項)。職権ではできない 申立てにより(行政事件訴訟法25条2項)。職権ではできない
処分庁などの意見 — 処分庁の意見を聴取した上で(25条3項) 口頭弁論を経ないですることができるが、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない(行政事件訴訟法25条6項)
とれる措置 処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(25条2項) 処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止に限る。停止以外の措置をとることはできない(25条3項ただし書) 処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(行政事件訴訟法25条2項)
することができる場合 必要があると認める場合(25条2項) 必要があると認める場合(25条3項) 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき(行政事件訴訟法25条2項)
しなければならない場合 審査請求人の申立てがあった場合に、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき(25条4項) 審査請求人の申立てがあった場合に、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき(25条4項) 「しなければならない」という定めは無い(25条2項は「することができる」)
義務が外れる・できない場合 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない(25条4項ただし書) 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない(25条4項ただし書) 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない(行政事件訴訟法25条4項)
重大な損害の判断 損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案する(25条5項) 損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案する(25条5項) 損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案する(行政事件訴訟法25条3項)
効力の停止ができない場合 処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるとき(25条6項) 処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるとき(25条6項) 処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合(行政事件訴訟法25条2項ただし書)
審理員の意見書 審理員は、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる(40条)。提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない(25条7項) 審理員は、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる(40条)。提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない(25条7項) —
執行停止の取消し 執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる(26条)。申立てについての定めは無い 執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる(26条)。申立てについての定めは無い 決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、相手方の申立てにより、決定で取り消すことができる(行政事件訴訟法26条1項)
内閣総理大臣の異議 定めは無い(行政不服審査法に内閣総理大臣の異議の制度は置かれていない) 定めは無い(行政不服審査法に内閣総理大臣の異議の制度は置かれていない) 異議があったときは、執行停止をすることができず、すでにした決定は取り消さなければならない(行政事件訴訟法27条4項)
決定に対する不服 行政不服審査法に即時抗告の定めは無い 行政不服審査法に即時抗告の定めは無い 即時抗告ができる。即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない(行政事件訴訟法25条7項・8項)

2つの審査庁の違いは、表Aの2行目から4行目に集まっています。処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、審査請求人の申立てにより又は職権で、停止にかぎらずその他の措置もとることができます(25条2項)。それ以外の審査庁は、審査請求人の申立てがなければ執行停止をすることができず、処分庁の意見を聴取した上で、停止以外の措置はとれません(同条3項)。

処分庁やその上級行政庁は、処分について自ら判断する立場にあるので広く動けて、それ以外の審査庁は処分庁の外にいるので申立てと処分庁の意見を待つ、と考えると整理しやすいでしょう。

行政事件訴訟法では、裁判所が申立てにより執行停止をする形で、職権ではできません(行政事件訴訟法25条2項)。審査請求の場面で職権でできるのは、処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁だけ、と覚えておくと取り違えにくくなります(再調査の請求での扱いは後の節で見ます)。

義務になるのは「申立て」があったときだけ

行政不服審査法には、審査庁が執行停止をしなければならない場合があります。25条2項・3項の規定による審査請求人の申立てがあった場合に、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときです(25条4項)。

この義務は、審査請求人の申立てがあった場合についての定めです。審査庁が職権で執行停止をするかどうかを考えている場面には、25条4項の「しなければならない」は及びません。「重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、職権でも執行停止をしなければならない」とする肢は誤りです。

25条4項にはただし書があり、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでないとされています。行政事件訴訟法25条4項が、同じ2つの場合について「することができない」と書いているのとは書き方が違います。行政不服審査法のほうは、しなければならないという義務が解除されるという形です。行政事件訴訟法25条には、執行停止を「しなければならない」とする定めはありません。

25条6項 ― 処分の効力の停止は、ほかの措置で足りないときだけ

処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができません(25条6項)。この定めは25条2項から4項までの場合に及ぶので、審査庁がどちらの種類であっても同じです。

行政事件訴訟法にも同じ考え方の定めがありますが、比べる相手の書き方が違います。行政事件訴訟法は「処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合」(行政事件訴訟法25条2項ただし書)、行政不服審査法は「処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるとき」です。行政不服審査法のほうが、その他の措置まで含めて比べる書き方になっています。


審理員の意見書(40条)

審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができます(40条)。執行停止をするのは審査庁で、審理員が自ら執行停止をするわけではありません。なお、審査庁が9条1項各号に掲げる委員会などである場合のように、審理員が指名されない場合もあります(9条1項ただし書)。

意見書が提出されたときに審査庁に求められるのは、速やかに、執行停止をするかどうかを決定することです(25条7項)。執行停止の申立てがあったときも同じです。

審理員から執行停止をすべき旨の意見書が提出されても、審査庁が執行停止をしなければならなくなるわけではありません。25条7項が審査庁に求めているのは、執行停止をするかどうかを決定することです。40条が審理員に認めているのも、意見書を提出することです。


執行停止の取消し(26条)

審査庁は、執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、その執行停止を取り消すことができます(26条)。

行政事件訴訟法26条1項と並べると、違いは2つです。

  • 申立て:行政事件訴訟法では、裁判所は相手方の申立てにより、決定をもって執行停止の決定を取り消します。行政不服審査法26条には、申立てについての定めがありません
  • 取り消せる場面:行政事件訴訟法は、執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときとしています。行政不服審査法は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったときを、事情の変更と並べて掲げています

内閣総理大臣の異議は、行政不服審査法には無い

行政不服審査法には、内閣総理大臣の異議の定めは置かれていません。行政不服審査法の本則の条文には、「内閣総理大臣」という語そのものが出てきません。

内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法27条の制度です。執行停止の申立てがあった場合に、内閣総理大臣は裁判所に対して異議を述べることができ、異議があったときは、裁判所は執行停止をすることができず、すでに執行停止の決定をしているときは取り消さなければなりません(行政事件訴訟法27条1項・4項)。異議には理由を附さなければならず、やむをえない場合でなければ述べてはならず、述べたときは次の常会において国会に報告しなければなりません(同条2項・6項)。

行政不服審査法と行政事件訴訟法を並べて問う肢では、「審査庁がした執行停止に対しても、内閣総理大臣は異議を述べることができる」のように、行政事件訴訟法の制度を行政不服審査法に持ち込んだ形がありえます。異議を述べる相手は裁判所で、審査庁ではありません。

行政事件訴訟法27条は、仮の義務付けと仮の差止めにも準用されています(行政事件訴訟法37条の5第4項)。3つの仮の救済の要件は、仮の義務付けと仮の差止めのページで並べています。


再調査の請求・再審査請求での執行停止

執行停止の規定は、再調査の請求と再審査請求にも準用されます。ただし、準用から外される項は、再調査の請求では3項、再審査請求では2項と、対照的です。

  • 再調査の請求:25条(3項を除く)と26条を準用する(61条)
  • 再審査請求:第2章の規定を準用する。25条については2項を除く(66条1項)

準用するときの語の読替えは、別表第二(再調査の請求)と別表第三(再審査請求)に書かれています。表Cは、その読替えまで入れて、誰が執行停止をするのか、職権でできるのか、何ができるのかを並べたものです。


表C 再調査の請求・再審査請求での執行停止(61条・66条と別表の読替え)
項目 審査請求 再調査の請求(61条で準用) 再審査請求(66条1項で準用)
25条・26条の扱い そのまま適用される(25条・26条) 25条(3項を除く)と26条を準用する(61条) 第2章の規定を準用する。25条は2項を除いて準用され、26条も準用される(66条1項)
執行停止をする者 審査庁(処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁と、それ以外の審査庁で扱いが違う) 処分庁(別表第二の読替え) 再審査庁(別表第三の読替え)
申立てか職権か 審査庁によって違う(表Aの「申立てか職権か」の行) 申立てにより又は職権で(25条2項の準用) 申立てによる(25条3項の準用)。職権ではできない
とれる措置 審査庁によって違う(表Aの「とれる措置」の行) 停止その他の措置(25条2項の準用) 原裁決等の効力、原裁決等の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(25条3項の読替え)
意見の聴取 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、処分庁の意見を聴取した上で執行停止をする(25条3項) 定めは無い(25条3項は準用されない) 裁決庁等の意見を聴取した上で(25条3項の読替え)
しなければならない場合(25条4項) 審査請求人の申立てがあったとき(「前二項」の申立て) 準用する(「前二項」を「第二項」と読み替える) 準用する(「前二項」を「前項」と読み替える)
速やかに決定する場面(25条7項) 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から執行停止をすべき旨の意見書が提出されたとき 執行停止の申立てがあったときだけ(意見書の部分は読替えで外れる) 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員の意見書が提出されたとき。委員会等である再審査庁(9条1項各号に掲げる機関である再審査庁)のときは、執行停止の申立てがあったとき
執行停止の取消し(26条) 審査庁が取り消すことができる(26条) 準用する(61条) 準用する(66条1項)

再調査の請求は、処分庁自身に対してするものです。そのため、処分庁である審査庁についての25条2項が残り、読替えによって処分庁が、申立てにより又は職権で、停止その他の措置をとることができます。再審査請求では25条3項のほうが残り、読替えによって再審査庁が、申立てにより、裁決庁等の意見を聴取した上で、停止をすることになります。処分庁の手元での見直しなら2項の形、処分庁の外での見直しなら3項の形、と考えると整理しやすいでしょう。

また、再調査の請求では、25条7項の「審理員から第四十条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出されたとき」の部分が読替えで外れ、「執行停止の申立てがあったとき」だけになります(別表第二)。なお、61条が再調査の請求に準用する規定には、審理員の意見書を定める40条も含まれていません。


本試験での出題

表Bは、平成21年度〜令和7年度の本試験のうち、行政不服審査法25条・26条・40条、61条・66条の執行停止にかかわる肢、行政事件訴訟法25条にかかわる肢があった問を並べたものです。「問われ方」は過去問の分析で付けた分類で、問題文は載せていません。


表B 本試験での出題(行政不服審査法25条・26条・40条、61条・66条は執行停止の肢だけ、行政事件訴訟法25条。平成21年度〜令和7年度・20問38肢)
年度・問 形式 条文 当たる肢 問題のテーマ 問われ方
平成21年度 問17 択一式 行訴法25条 3肢 仮の救済制度(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め) 要件・効果の正誤/制度の混同
平成24年度 問16 択一式 行訴法25条 1肢 取消訴訟と無効確認訴訟の異同(準用関係) 制度の混同
平成25年度 問18 択一式 行訴法25条 1肢 取消訴訟の審理手続 要件・効果の正誤
平成26年度 問26 択一式 行訴法25条 1肢 転入届の受理義務と関連する行政法上の諸問題 適用範囲
平成27年度 問15 択一式 行審法25条 1肢 審査請求の審理・適用除外・執行不停止・適格 原則↔例外
平成27年度 問17 択一式 行訴法25条 5肢 執行停止(25条)の要件・手続 制度の混同/要件・効果の正誤/主体すり替え/条文知識
平成28年度 問14 択一式 行審法25条・行審法61条 1肢 再調査の請求(要件・対象・審理・執行停止) 要件・効果の正誤
平成28年度 問15 択一式 行審法40条 1肢 審理員(指名・名簿・権限・意見書・諮問) 主体すり替え
平成29年度 問16 択一式 行審法25条・行審法26条・行審法40条 5肢 執行停止の要件と審査庁・審理員の権限 要件・効果の正誤/任意↔義務/条文知識/原則↔例外
平成29年度 問17 択一式 行訴法25条 1肢 申請拒否処分の取消訴訟(義務付け・執行停止・出訴期間・訴えの利益・拘束力) 制度の混同
平成29年度 問19 択一式 行訴法25条 1肢 仮の差止め(37条の5)の要件・手続 条文知識
平成30年度 問16 択一式 行審法26条 1肢 審査請求期間・執行停止取消し・却下・再調査決定の条文語句 要件・効果の正誤
平成30年度 問19 択一式 行訴法25条 1肢 差止訴訟の「重大な損害」要件(厚木基地訴訟) 判例の結論
平成30年度 問26 択一式 行訴法25条 1肢 市立保育所廃止条例と抗告訴訟(処分性・第三者効) 要件・効果の正誤
令和元年度 問17 択一式 行訴法25条 5肢 執行停止(25条)の要件・手続 手続の流れ・順序/要件・効果の正誤/条文知識
令和3年度 問14 択一式 行審法25条・行審法26条・行審法61条 5肢 執行停止 原則↔例外/要件・効果の正誤/条文知識/適用範囲
令和3年度 問16 択一式 行審法25条 1肢 審査請求(期間・方式・不利益変更禁止・裁決理由・執行停止申立て) 要件・効果の正誤
令和3年度 問17 択一式 行訴法25条 1肢 行訴法条文の空欄補充(執行停止・無効確認原告適格・非申請型義務付け) 条文知識
令和4年度 問19 択一式 行訴法25条 1肢 処分無効確認訴訟の要件・準用(36条・38条) 条文知識
令和6年度 問16 択一式 行審法25条 1肢 行審法と行訴法の比較(期間・教示・拘束力・執行停止・差止め) 制度の混同

行政不服審査法25条は、平成27年度〜令和6年度の間に6問11肢が確認できます。執行停止の取消し(26条)は3問3肢、審理員の意見書(40条)は2問2肢、再調査の請求での執行停止(61条)は2問2肢です。

行政事件訴訟法25条は12問22肢で、平成27年度 問17・令和元年度 問17は、すべての肢が行政事件訴訟法25条にかかわる問でした。表Bの範囲では、記述式では出題されていません。記述式に出ていない条文のうち択一で問われることの多いものは、記述式の論点別のページの表で確かめられます。


よくある質問

行政不服審査法における執行停止とは?

審査請求がされても処分の効力・執行・手続の続行は妨げられないことを前提に(行政不服審査法25条1項)、審査庁が、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部を停止することなどをいいます。処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、申立てにより又は職権で、停止その他の措置をとることができ(同条2項)、それ以外の審査庁は、申立てにより、処分庁の意見を聴取した上で、停止をすることができます(同条3項)。

行政不服審査法で執行停止を取り消すことはできますか?

できます。執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができます(行政不服審査法26条)。行政事件訴訟法の執行停止の取消しが相手方の申立てによる裁判所の決定でされる(行政事件訴訟法26条1項)のに対し、行政不服審査法26条には申立てについての定めがありません。

執行不停止の原則とは?

審査請求や処分の取消しの訴えの提起があっても、それだけでは処分の効力・執行・手続の続行が止まらない、という原則です。行政不服審査法25条1項は「審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」、行政事件訴訟法25条1項は「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」と定めています。処分を止めるには、それぞれの法律の執行停止によります。

執行停止の具体例は?

たとえば、営業停止処分を受けた事業者が、その処分に対して審査請求をし、裁決が出るまでの間、処分の効力を止めるよう申し立てる場面が考えられます。審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁であれば、必要があると認める場合に執行停止をすることができます(行政不服審査法25条2項)。この申立てについて、審査庁が、処分により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや本案について理由がないとみえるときを除き、執行停止をしなければなりません(同条4項)。実際に執行停止がされるかどうかは、個々の事案がこれらの要件に当たるかどうかによります。


まとめ

行政不服審査法の執行停止は、審査請求があっても処分が止まらないことを前提に、審査庁が誰かで2つの形に分かれます。処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は申立てにより又は職権で、停止その他の措置をとることができます。それ以外の審査庁は申立てにより、処分庁の意見を聴取した上で、停止だけをすることができます。申立てがあったときは、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき、どちらの審査庁も、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや本案について理由がないとみえるときを除き、執行停止をしなければなりません。

行政事件訴訟法と並べたときは、義務になる場面があるかどうか、取消しに申立てが要るかどうか、内閣総理大臣の異議があるかどうかの3つを、表Aの行で確かめておきましょう。

行政事件訴訟法の仮の救済は、仮の義務付けと仮の差止めのページで執行停止と並べています。

審査請求と取消訴訟そのものの違いは、審査請求と取消訴訟の違いのページで確かめられます。

行政法のほかの論点は、行政法の学習のページに一覧でまとめています。