審査基準と処分基準の違い|行政手続法5条・12条

行政庁が処分をするかどうかを判断するときの基準のうち、行政手続法が定めているのが審査基準(5条)と処分基準(12条)です。審査基準は申請に対する処分の基準、処分基準は不利益処分の基準です。

2つの基準は、定義も規定の形もよく似ています。違うのは、定めることと公にすることが、審査基準では義務、処分基準では努力義務になっているところです。反対に、できる限り具体的なものにすることは、どちらも義務です。

このページでは、行政書士試験の受験生向けに、2つの基準を条文の文言のまま1行ずつ並べ、そのうえで処分基準と理由の提示についての判例、申請に対する処分にだけある標準処理期間を確かめます。

本記事は、2026年9月時点の行政手続法(令和8年7月24日施行)にもとづいています。表で扱う条文は、令和8年度試験の基準日(令和8年4月1日)の時点と同じ内容です。


審査基準と処分基準を1行ずつ並べる

表Aは、審査基準と処分基準を同じ項目で並べたものです。上の5行が5条と12条の中身、その下が、意見公募手続・標準処理期間・地方公共団体とのかかわりです。


表A 審査基準と処分基準(行政手続法)
項目 審査基準(5条) 処分基準(12条)
定義(2条8号) 申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(ロ) 不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(ハ)
対象となる処分 申請に対する処分。申請=許認可等を求める行為であって、行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの(2条3号) 不利益処分。行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分(2条4号)
定めること 行政庁は、審査基準を定めるものとする(5条1項) 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(12条1項)
具体性 許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない(5条2項) 不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない(12条2項)
公にすること 行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(5条3項) 公にしておくよう努めなければならない(12条1項)
意見公募手続 命令等に当たる(2条8号ロ)。定めようとするときは意見公募手続の対象(39条1項) 命令等に当たる(2条8号ハ)。定めようとするときは意見公募手続の対象(39条1項)
公にされない基準 法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のものには、第6章(意見公募手続等)の規定を適用しない(3条2項6号) 同じ(3条2項6号は審査基準、処分基準又は行政指導指針を挙げている)
標準処理期間 申請が事務所に到達してから処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは公にしておかなければならない(6条) 不利益処分の章(12条〜31条)に標準処理期間の定めは無い
地方公共団体の機関の処分 地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)には、次章から第六章まで(第2章〜第6章)の規定を適用しない(3条3項)。地方公共団体は、法律の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならない(46条) 同じ(3条3項・46条)。なお、地方公共団体の機関が命令等を定める行為は、根拠が法律に置かれていても第2章〜第6章を適用しないので、法律に基づく処分の審査基準・処分基準でも、定める行為に意見公募手続の規定は適用されない(3条3項)

表Aのうち、2つの列で書き方が違うのは「定めること」と「公にすること」の2行です。定義・具体性・意見公募手続・地方公共団体の機関の処分の行は、対象となる処分が違うだけで、同じ形をしています。

「定めるものとする」と「努めなければならない」

審査基準について、5条1項は「行政庁は、審査基準を定めるものとする」と定め、5条3項は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を「公にしておかなければならない」と定めています。どちらも行政庁の義務です。

処分基準について、12条1項は「行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」と定めています。定めることと公にすることの両方が、1つの文の中で努力義務になっています。

一方、具体性の定めは同じ形です。審査基準は許認可等の性質に照らして(5条2項)、処分基準は不利益処分の性質に照らして(12条2項)、できる限り具体的なものとしなければなりません。処分基準も、定めるのであれば具体的にすることは義務です。

「処分基準は努力義務なので、定める場合もできる限り具体的なものとするよう努めれば足りる」とする肢は誤りです。努力義務になっているのは12条1項の「定め、かつ、これを公にしておく」ことで、12条2項の具体性は「しなければならない」です。

審査基準を公にする義務にも例外があります。5条3項は「行政上特別の支障があるときを除き」と定めています。また、公にする方法は、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付け「その他の適当な方法」で、申請者の求めに応じて書面を交付することまでは定められていません。

1つの許可制度の中で2つの基準が並ぶ

たとえば、ある営業について行政庁の許可が要る制度があるとします。この制度の中で、許可の申請があったときに許可をするかどうかを判断するための基準が審査基準です。すでに許可を受けている人について、許可を取り消すかどうか、営業の停止を命ずるかどうか、どちらの処分にするかを判断するための基準が処分基準です。

同じ行政庁が同じ制度について定める基準でも、申請に対する処分に使うのか、不利益処分に使うのかで、5条と12条のどちらの規律を受けるかが決まります。許可の申請を拒否する処分は、申請に対する処分であって不利益処分ではありません(2条4号ロ)。拒否するかどうかの基準も審査基準に当たります。

不利益処分をしようとするときの聴聞と弁明の機会の付与については、聴聞と弁明の機会の付与のページで扱っています。

どちらも「命令等」で、意見公募手続の対象

審査基準と処分基準は、どちらも行政手続法の「命令等」に該当します(2条8号ロ・ハ)。そのため、定めようとするときは、原則として意見公募手続が必要です(39条1項)。

ただし、3条2項6号は、審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のものを定める行為について、第6章(意見公募手続等)の規定を適用しないと定めています。公にされない基準を定めるときは、意見公募手続は義務づけられません。

また、地方公共団体の機関が命令等を定める行為には、根拠となる規定が法律に置かれていても、第6章の規定が適用されません(3条3項)。法律に基づく処分であれば、地方公共団体の機関が定める審査基準にも5条は適用されますが、その審査基準を定める行為に意見公募手続の規定は適用されない、という組み合わせになります。

意見公募手続の手順は、意見公募手続のページで並べています。


処分基準と理由の提示(最高裁平成23年6月7日判決)

不利益処分をする場合、行政庁は、名あて人に対し、同時に、その理由を示さなければなりません(14条1項本文)。申請を拒否する処分にも、同じ趣旨の定めがあります(8条1項本文)。では、処分基準が定められ公にされている場合、理由の提示の中で処分基準の適用関係まで示す必要があるのでしょうか。この点を扱ったのが、最高裁判所第三小法廷平成23年6月7日判決(民集65巻4号2081頁)です。

判決は、14条1項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、同項本文の趣旨に照らし、処分の根拠法令の規定内容、処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、処分の性質及び内容、処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべきだとしました。そのうえで、一級建築士の免許取消処分について、処分基準が公にされていて、その内容も複雑なものであった事案で、処分の原因となる事実と根拠法条を示すだけで処分基準の適用関係を示さなかった理由の提示では、「いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって」処分が選択されたのかを知ることができないとし、14条1項本文の定める理由の提示の要件を欠いた違法な処分であると判断しています。

この判決は、処分基準があればどんな場合でも適用関係を示さなければならない、とまで述べたものではありません。理由の提示の程度は、上に挙げた事情を総合考慮して決まる、というのが判決の一般論です。条文(14条1項本文)は処分と同時に理由を示すことを求めていますが、どの程度まで示すかは書いていません。


申請に対する処分にだけある標準処理期間(6条)

申請に対する処分には、審査基準のほかに、標準処理期間の定めがあります。行政庁は、申請が事務所に到達してから処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、適当な方法により公にしておかなければなりません(6条)。

ここでも書き方の組み合わせが問われます。標準処理期間を定めることは努力義務、定めたときに公にしておくことは義務です。審査基準(定めることも公にすることも義務)とも、処分基準(どちらも努力義務)とも違う組み合わせです。不利益処分の章(第3章)には、標準処理期間にあたる定めはありません。

なお、申請が事務所に到達したときは、行政庁は遅滞なく審査を開始しなければなりません(7条)。標準処理期間は、この審査にかかる期間の目安として定めるものです。


本試験での出題

表Bは、平成21年度〜令和7年度の本試験のうち、5条と12条にかかわる肢があった問を並べたものです。「当たる肢」はその問のうちこれらの条にかかわる肢の数で、「問われ方」は過去問の分析で付けた分類です。問題文は載せていません。


表B 本試験での出題(行政手続法5条・12条。平成21年度〜令和7年度・16問27肢)
年度・問 形式 条文 当たる肢 問題のテーマ 問われ方
平成23年度 問11 択一式 行手法5条 1肢 行政手続法の規定内容(理由の提示・通知・方式) 条文知識
平成23年度 問12 択一式 行手法12条 2肢 処分基準・意見公募手続等の規定内容 条文知識/任意↔義務
平成24年度 問11 択一式 行手法5条 2肢 法律に基づく地方公共団体の処分と行政手続法 主体すり替え/定義の正誤
平成25年度 問13 択一式 行手法12条 1肢 一級建築士免許取消事件(理由の提示) 判例の結論
平成26年度 問11 択一式 行手法12条 1肢 不利益処分の手続(処分基準・理由・意見陳述・聴聞) 任意↔義務
平成26年度 問12 択一式 行手法5条 5肢 審査基準を公にする義務とその例外 任意↔義務/制度の混同/原則↔例外
平成27年度 問13 択一式 行手法5条 1肢 申請に対する処分の手続(Q&A形式) 条文知識
平成28年度 問12 択一式 行手法12条 1肢 行政庁等の法的義務と努力義務の区別 任意↔義務
平成30年度 問11 択一式 行手法5条・行手法12条 1肢 申請に対する処分と不利益処分の比較 任意↔義務
令和元年度 問13 択一式 行手法12条 1肢 行政手続法の横断論点(指針公表・標準処理期間・処分基準・理由提示・意見公募) 任意↔義務
令和元年度 問42 多肢選択式 行手法12条 1肢 処分基準の法的性質と裁量統制・訴えの利益 用語の意味(手続)
令和3年度 問43 多肢選択式 行手法12条 1肢 理由提示の趣旨と処分基準(建築士懲戒・最判平23.6.7) 判例の結論
令和5年度 問13 択一式 行手法5条・行手法12条 2肢 行政庁等の義務と努力義務の区別 任意↔義務
令和6年度 問11 択一式 行手法5条・行手法12条 1肢 免許取消しへの行政手続法の適用(適用除外・不利益処分) 制度の混同
令和6年度 問13 択一式 行手法5条・行手法12条 5肢 審査基準・処分基準の設定と公表の義務 原則↔例外/任意↔義務/定義の正誤
令和7年度 問13 択一式 行手法5条・行手法12条 1肢 申請に対する処分(理由提示・情報提供・審査基準・補正) 制度の混同

表Bの期間のうち、5条(審査基準)が問われたのは平成23年度〜令和7年度で、その間に9問16肢、12条(処分基準)は12問14肢です(1つの肢が5条と12条の両方にかかわることがあるので、足しても表Bの肢数にはなりません)。平成26年度 問12・令和6年度 問13は、すべての肢が5条か12条にかかわる問で、そのうち平成26年度 問12はすべての肢が5条にかかわる問でした。表Bの「問われ方」に「任意↔義務」が多いのは、定めることと公にすることの書き方を入れ替えた肢が多いためです。

上の判例は、表Bの範囲(5条・12条)の外の問も含めて、平成25年度 問13・平成29年度 問12・令和3年度 問43で問われています。表Bの範囲では、記述式では出題されていません。5条・12条は、記述式に出ていない条文のうち択一で問われることの多いものとして、記述式の論点別のページの表にも挙がっています。


よくある質問

審査基準とは?

申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいいます(行政手続法2条8号ロ)。行政庁は審査基準を定めるものとされ(5条1項)、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとし(同条2項)、行政上特別の支障があるときを除き、公にしておかなければなりません(同条3項)。

処分基準は公にしなければなりませんか?

義務ではなく、努力義務です。行政手続法12条1項は、行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない、と定めています。審査基準のほうは、行政上特別の支障があるときを除き、公にしておかなければならない義務です(5条3項)。

審査基準を公にしなくてよい場合はありますか?

あります。行政手続法5条3項は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければならないと定めているので、行政上特別の支障があるときは、公にしておく義務はありません。なお、公にされるもの以外の審査基準を定める行為には、意見公募手続を含む第6章の規定が適用されません(3条2項6号)。

審査基準や処分基準を定めるときも、意見公募手続は要りますか?

原則として要ります。審査基準と処分基準は、どちらも行政手続法の命令等に該当し(2条8号ロ・ハ)、命令等を定めようとするときは意見公募手続をとらなければならないからです(39条1項)。ただし、公にされるもの以外の審査基準・処分基準を定める行為には、第6章の規定が適用されません(3条2項6号)。


まとめ

審査基準(5条)は申請に対する処分の基準で、定めることも公にすることも義務です(公にすることには、行政上特別の支障があるときの例外があります)。処分基準(12条)は不利益処分の基準で、定めることと公にすることが努力義務です。できる限り具体的なものとすることは、どちらも義務です。

どちらも命令等として意見公募手続の対象になり、処分基準は、公にされていると理由の提示の程度にもかかわってきます。標準処理期間(定めるのは努力義務・定めたら公にするのは義務)とあわせて、3つの組み合わせを表Aの行で確かめておきましょう。

地方公共団体の機関がする処分のうち、根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものについては、行政手続法の適用除外のページで3条3項を扱っています。

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