35条・37条書面の賃貸(貸借)|売買と何が変わるか

このページは宅建試験の受験生向けに、35条書面・37条書面が賃貸(法令では貸借と呼ばれます)でどう変わるかを整理したものです。売買で覚えた知識のまま貸借の肢を読むと、「これも書くはず」「これも説明するはず」と判断してしまいがちです。

まずは結論を確かめておきましょう。35条書面には、貸借で説明しなくなる事項と新たに説明する事項の両方があり、説明する法令上の制限の範囲も変わります。37条書面には、貸借で書かない5つと置き換わる2つがあります。そして、宅地建物取引業者が自ら貸主になるとき、その業者自身には35条書面・37条書面の義務がありません(媒介・代理をする別の業者には義務があります)。

貸借で変わることの全体像は35条書面と37条書面の違いの「貸借(賃貸)のときに変わること」で紹介しています。このページでは、その先の「なぜそうなるか」を、条文の書き方から解説します。

本記事は2026年9月時点で施行されている宅地建物取引業法および同法施行規則にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。


宅地建物取引業者が自ら貸主になるときは、その業者には35条書面・37条書面の義務が無い

宅地建物取引業は、宅地・建物の売買・交換と、宅地・建物の売買・交換・貸借の代理・媒介をする行為で、業として行うものです(法2条2号)。自ら貸主として貸すことは、この定義に含まれていません。そのため、自ら貸主となる業者には、その契約について宅地建物取引業法の35条・37条の義務が課されません。借主が宅地建物取引業者であっても、この結論は変わりません。

注意したいのは、業者が貸主の物件でも、別の業者が媒介・代理をすれば、その業者には義務があることです。媒介をした業者は、借りようとする者に35条書面を交付して説明し、契約が成立したら、貸主と借主の両方に37条書面を交付します。貸主が宅地建物取引業者でも、媒介業者の義務はなくなりません。


35条書面:貸借で説明しなくなる事項と、その理由

35条書面で貸借のときに説明しなくなる事項は、条文の外し方で2つの型に分かれます。1つは、条文の条件が売買・交換を前提にしている型です。手付金等の保全措置(法35条1項10号)は業者が自ら売主となる売買の制度で、金銭の貸借のあっせん(同12号)は「代金又は交換差金に関する」ものなので、貸借では条件が成立しません。もう1つは、条文が貸借を名指しで外している型です。私道に関する負担(同3号)は「建物の貸借の契約以外のもの」とされ、説明しないのは建物の貸借だけです。また、書類の保存の状況(同6号の2ロ)と住宅性能評価(規則16条の4の3第6号)は、規則が対象を売買・交換に絞っています。

2つの型の分け方は語呂合わせと覚え方に、事項ごとの結論は35条書面の記載事項一覧の「貸借では説明しない事項」にあります。ここでは、法令上の制限の範囲を、より詳しく解説します。

法令に基づく制限は、説明する範囲が変わる

法令に基づく制限の概要(法35条1項2号)は、貸借でも説明します。変わるのは、どの法令の制限を説明するかです。施行令3条が、契約の内容ごとに範囲を分けています。

  • 売買・交換(宅地又は建物の貸借以外の契約)……施行令3条1項に並んだ法律の規定に基づく制限
  • 宅地の貸借……1項の制限から、一部の規定に基づくものを除いたもの(施行令3条2項)
  • 建物の貸借……新住宅市街地開発法・新都市基盤整備法・流通業務市街地の整備に関する法律の規定に基づく制限だけ(施行令3条3項)

このため、建物の貸借では、建築基準法の建蔽率や容積率の制限は説明しません。宅地の貸借では、施行令3条2項が建築基準法の規定を除いていないので、建蔽率や容積率の制限も説明の範囲に残ります。建物を借りる人は建物を建て替える立場になく、土地を借りる人はその土地の上に建物を建てる立場にある、と整理すると結論を思い出しやすくなります。


35条書面:貸借で増える事項と、宅地の貸借・建物の貸借で分かれるもの

貸借のときだけ増える説明事項は、規則16条の4の3の7号〜13号です。7つの結論は、35条書面の記載事項一覧のS23〜S29の行で確かめられます。このページでは、宅地の貸借と建物の貸借で結論が分かれるものをまとめて取り上げます。前の見出しと同じく、借りるのが建物か土地かで考えると、違いを整理しやすくなります。

  • 私道に関する負担……宅地の貸借では説明し、建物の貸借では説明しません(法35条1項3号)。
  • 台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況……建物の貸借だけです(規則16条の4の3第7号)。
  • 契約終了時における宅地の上の建物の取壊し……宅地の貸借に限り、取壊しに関する事項を定めようとするときに説明します(同13号)。
  • 法令に基づく制限……宅地の貸借は施行令3条2項、建物の貸借は同条3項の範囲です。

どちらの貸借でも説明するのは、規則16条の4の3の8号〜12号の5つです(同条柱書)。

区分所有建物の貸借

区分所有建物(分譲マンションなど)では、法35条1項6号の事項(規則16条の2)のうち、建物の貸借で説明するのは3号と8号の2つだけです(規則16条の2柱書)。規則16条の4の3の10号・12号との関係は、35条書面の記載事項一覧のS06の行と、このページのよくある質問で扱っています。


37条書面:貸借では「書かない5つ」と「置き換わる2つ」

37条書面の貸借の記載事項は、法37条2項1号が、1項のうち1号・2号・4号・7号・8号・10号だけを引用する形で決まります。引用されない号のうち5つは貸借では書かず、代金(1項3号)と代金以外の金銭(同6号)の2つは、借賃(2項2号)と借賃以外の金銭(2項3号)に置き換わります。5つの中身と「借りる人は所有者にならない」という覚え方は35条書面と37条書面の違いで、行ごとの要否は37条書面の記載事項一覧の表で引けます。

このページで押さえておきたいのは、2項の冒頭の文言です。売買・交換の1項は「自ら当事者として契約を締結したとき」「当事者を代理して」「媒介により」の3つを並べますが、貸借の2項は「当事者を代理して」「媒介により」の2つだけです。最初の見出しで見た、自ら貸主には義務がかからないという結論が、37条の条文にもそのまま表れています。


お金の事項はどこに書くか(敷金・借賃・借賃以外の金銭・預り金)

貸借でとくに迷いやすいのが、お金の事項です。お金の事項は、借賃の額、借賃以外の金銭、契約終了時の精算、預かった金銭の保全の4つに分けると、書面ごとの扱いの違いを整理できます。

借賃の額(37条書面だけ)
借賃の額と支払の時期・方法を、37条書面に必ず記載します(法37条2項2号)。35条書面の法35条1項7号が対象にしているのは、借賃以外に授受される金銭です。
借賃以外の金銭(敷金・礼金・権利金など。両方)
35条書面では、額と授受の目的を定めの有無を問わず説明します(法35条1項7号)。37条書面では、定めがあるときに額・授受の時期・目的を記載します(法37条2項3号)。
終わるときの精算(35条書面だけ)
敷金その他契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項を、貸借のときに、定めの有無を問わず説明します(規則16条の4の3第11号)。
預かったお金の保全(35条書面)
支払金・預り金を受領しようとするときに保全措置を講ずるかどうか、講ずるときはその概要を、貸借でも説明します(法35条1項11号)。受領する額が50万円未満のものは、ここでいう支払金・預り金から除かれます(規則16条の3第1号)。業者が自ら売主となる売買だけの手付金等の保全措置(法35条1項10号)と区別しておきましょう。

50万円のような数値は、宅建の数値のページでほかの数値と並べて確かめられます。

ここまでの貸借で変わる事項は、基本の論点を集めた演習問題(53問)でも試せます。


35条書面と37条書面の演習

売買と貸借で結論が分かれるところは、選択肢の形で問われると迷いがちです。問題を解きながら確かめてみましょう。

コアセット(35条・37条の基本) 全53問

35条書面と37条書面の基本の論点を集めたセットです。貸借で説明しない事項・記載しない事項や、自ら貸主のときの扱いを問う問題も入っています。登録は不要です。

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よくある質問

宅建業者が自ら貸主となるときも、35条書面や37条書面は必要ですか?

自ら貸主となる業者自身には、35条書面・37条書面の義務はありません。宅地建物取引業は、宅地・建物の売買・交換と、売買・交換・貸借の代理・媒介をする行為で業として行うもので(法2条2号)、自ら貸主として貸すことは含まれないため、宅地建物取引業法の35条・37条の義務が課されません。貸借の37条書面を定めた法37条2項も、代理と媒介の場合だけを定めています。ただし、業者が貸主の物件でも、別の業者が媒介・代理をするときは、その業者が借りようとする者に35条書面を交付して説明し、契約が成立したら37条書面を交付します(媒介なら貸主と借主の両方、代理なら相手方と代理を依頼した者)。

建物の賃貸では、建蔽率や容積率の制限を説明しますか?

説明しません。法令に基づく制限の概要(法35条1項2号)は建物の貸借でも説明事項ですが、説明する制限の範囲は施行令3条が契約の内容ごとに定めています。建物の貸借で説明するのは、新住宅市街地開発法・新都市基盤整備法・流通業務市街地の整備に関する法律の規定に基づく制限だけで(施行令3条3項)、建築基準法の建蔽率・容積率の制限は入っていません。宅地の貸借では施行令3条2項の範囲になり、建蔽率・容積率の制限も説明します。

マンション(区分所有建物)の賃貸では、管理規約や管理費も説明しますか?

通常の管理費用の額は、建物の貸借では説明しません。法35条1項6号の事項(規則16条の2)のうち、建物の貸借で説明するのは、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときのその内容(3号)と、一棟の建物とその敷地の管理が委託されているときの委託先の氏名・住所(8号)の2つだけです(規則16条の2柱書)。共用部分に関する規約の定めや、維持修繕のための費用の積立ての定めなどは、売買・交換では説明しますが、建物の貸借では説明しません。なお、規約以外による利用の制限は、区分所有建物でも規則16条の4の3第10号で説明します。

賃貸で預かるお金の保全措置は、35条書面で説明しますか?

説明します。支払金・預り金を受領しようとするときに保全措置を講ずるかどうか、講ずる場合の措置の概要は、法35条1項11号の説明事項で、売買に限られていません。ここでいう支払金・預り金は、借賃・権利金・敷金など名義を問わず業者が受領する金銭ですが、受領する額が50万円未満のものなどは除かれます(規則16条の3)。これに対して、手付金等の保全措置の概要(法35条1項10号)は、業者が自ら売主となる売買の制度であるため、貸借では説明しません。


まとめ

最後に、このページの流れを振り返っておきましょう。自ら貸主となる業者自身には、35条書面・37条書面の義務がありません。35条書面は、条件が成立しない事項と条文が外している事項を説明しなくなり、法令上の制限は範囲が変わり、貸借の事項が増えます。37条書面は、5つを書かず、2つが借賃の側に置き換わります。お金の事項は、借賃の額が37条書面、借賃以外の金銭は両方(35条は定めの有無を問わず、37条は定めがあるとき)、精算と保全が35条書面です。貸借の肢で迷ったときは、「借りる人に必要な情報か」で目安をつけ、正誤は「どの号がそれを定めているか」で確かめてみてください。

事項ごとの要否は35条書面の記載事項一覧と37条書面の記載事項一覧の表を、貸借の列で絞り込んで見ることができます。誰が説明し誰に交付するかは35条・37条書面と宅建士にまとめています。

宅地建物取引業法の科目の中で、ほかの論点とあわせて見渡したいときは、宅建業法のページからたどれます。