35条書面の記載事項一覧|宅建試験の35条を4区分の表で整理

35条書面(重要事項説明書)の説明事項は、全部で30項目あります。「とてもすべては覚えきれない」と感じられるかもしれませんが、ご安心ください。この記事は宅建試験の対策として、その30項目を宅地か建物か/売買・交換か貸借かの4区分に分けた一覧表にまとめたものです。

35条が難しく見える本当の理由は、項目の多さではありません。同じ事項でも、取引の種類によって必要・不要が変わる点にあります。そこでこのページでは、文章を追うよりも直感的に整理していただけるよう、表を主役にしました。まずは表をご覧いただき、あとから理屈を読み進めていただくのがおすすめです。書面の役割そのものの違いは35条書面と37条書面の違いにまとめています。

本記事は2026年9月時点で施行されている宅地建物取引業法および同法施行規則にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。

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35条・37条書面 記載事項の一覧

ここから先は、この一覧表を印刷して手元に置き、照らし合わせながら読むと、より整理しやすくなります。35条書面の30項目と37条書面の15項目を、4区分の表にまとめています。

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35条書面の説明事項 全30項目(4区分の一覧表)

この一覧表を効率よく使うための4つのポイントをご紹介します。

  • 表の上にある「取引で絞り込む」ボタンを押していただくと、その取引で必要な行だけが表示されます。たとえば「建物貸借」を押すと、30項目が22項目になります。
  • 記号は●必要/▲定めがあるとき/◐一部必要/-不要/×対象外です。
  • 「不要」と「対象外」は違います。対象外=その取引にはそもそも規定が及ばない、不要=規定はあるが記載を要しない。この2つを分けておくと、条文を読むときの見通しがまるで変わります。
  • 各行のS01などの番号は、このサイトの記事で共通に使っている番号です。行のリンクをブックマークしておいていただくと、過去問で迷われたときにその行だけを開くことができます。

表1 35条書面(重要事項説明書)の説明事項と取引の別
説明事項・記載事項 条文根拠 宅地の
売買・交換
建物の
売買・交換
宅地の
貸借
建物の
貸借
S01
登記された権利の種類・内容、登記名義人
定めの有無を問わず必要
法35条1項1号 必要 必要 必要 必要
S02
法令に基づく制限の概要
定めの有無を問わず必要
法35条1項2号 必要 必要 必要 必要
S03
私道に関する負担に関する事項
定めの有無を問わず必要
法35条1項3号 必要 必要 必要 不要
S04
飲用水・電気・ガスの供給、排水施設の整備状況
定めの有無を問わず必要
法35条1項4号 必要 必要 必要 必要
S05
未完成物件の完了時における形状・構造
工事完了前のときに必要
法35条1項5号 必要 必要 必要 必要
S06
区分所有建物の敷地の権利・規約の定め等
規約の定めがあるときに必要
法35条1項6号、規則16条の2 対象外 必要 対象外 一部必要
S07
既存建物の建物状況調査の実施の有無と結果の概要
実施しているかどうかは常に説明
法35条1項6号の2イ、規則16条の2の2 対象外 必要 対象外 必要
S08
既存建物の設計図書・点検記録等の書類の保存の状況
保存の状況を説明
法35条1項6号の2ロ、規則16条の2の3 対象外 必要 対象外 不要
S09
代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と授受の目的
定めの有無を問わず必要
法35条1項7号 必要 必要 必要 必要
S10
契約の解除に関する事項
定めの有無を問わず必要ひっかけ注意
法35条1項8号 必要 必要 必要 必要
S11
損害賠償額の予定または違約金に関する事項
定めの有無を問わず必要ひっかけ注意
法35条1項9号 必要 必要 必要 必要
S12
手付金等の保全措置の概要
手付金等を受領しようとする場合に必要
法35条1項10号 必要 必要 不要 不要
S13
支払金・預り金を受領する場合の保全措置
措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要
法35条1項11号、規則16条の3 必要 必要 必要 必要
S14
代金・交換差金についての金銭の貸借のあっせん
あっせんの内容と、成立しないときの措置
法35条1項12号 必要 必要 不要 不要
S15
契約不適合責任の履行に関して講ずる措置
措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要
法35条1項13号 必要 必要 不要(推定) 不要(推定)
S16
造成宅地防災区域内にあるときはその旨
区域内にあるときに必要
法35条1項14号、規則16条の4の3第1号 必要 必要 必要 必要
S17
土砂災害警戒区域内にあるときはその旨
区域内にあるときに必要
規則16条の4の3第2号 必要 必要 必要 必要
S18
津波災害警戒区域内にあるときはその旨
区域内にあるときに必要
規則16条の4の3第3号 必要 必要 必要 必要
S19
水害ハザードマップにおける物件の所在地
図面に位置が表示されているときに必要
規則16条の4の3第3号の2 必要 必要 必要 必要
S20
石綿の使用の有無の調査結果
記録されているときにその内容
規則16条の4の3第4号 不要 必要 不要 必要
S21
耐震診断の内容
診断を受けたものであるときにその内容
規則16条の4の3第5号 不要 必要 不要 必要
S22
住宅性能評価を受けた新築住宅である旨
評価を受けた新築住宅であるときにその旨
規則16条の4の3第6号 不要 必要 不要 不要
S23
台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況
定めの有無を問わず必要
規則16条の4の3第7号 不要 不要 不要 必要
S24
契約期間および契約の更新に関する事項
定めの有無を問わず必要
規則16条の4の3第8号 不要 不要 必要 必要
S25
定期借地権・定期建物賃貸借等を設定しようとするときはその旨
設定しようとするときに必要
規則16条の4の3第9号 不要 不要 必要 必要
S26
用途その他の利用に係る制限に関する事項
定めの有無を問わず必要
規則16条の4の3第10号 不要 不要 必要 必要
S27
敷金その他契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項
定めの有無を問わず必要
規則16条の4の3第11号 不要 不要 必要 必要
S28
管理が委託されているときの委託先の氏名・住所
委託されているときに必要
規則16条の4の3第12号 不要 不要 必要 必要
S29
契約終了時における宅地の上の建物の取壊しに関する事項
定めようとするときに必要
規則16条の4の3第13号 不要 不要 必要 不要
S30
割賦販売の追加事項(現金販売価格・割賦販売価格・引渡しまでの支払金の額等)
割賦販売のときに必要
法35条2項 必要 必要 対象外 対象外

必要
定めがあるとき
一部必要
不要(規定はあるが記載を要しない)
対象外(その取引には規定が及ばない)

この表と37条書面の表をA4にまとめたものを用意しました。35条・37条書面 記載事項の一覧(PDF・A4・2ページ)。印刷して持ち歩く用です。

表の読み方:「定めの有無を問わず必要」とは何か

表には、事項名の下に「定めの有無を問わず必要」と添えてある事項があります。これは特約が付いていなくても、「付いていません」と説明するという意味です。

35条書面は契約前の判断材料なので、「無い」という情報にも価値があります。ここが37条書面との最大の違いで、37条書面は「定めがあるときだけ」書きます。同じ事項なのに書く条件が違うものは、35条と37条で書く条件・中身が違う事項の比較表にまとめてあります。試験でいちばん狙われるところです。


どの取引でも必要な事項

4区分すべてが●の事項です。まずここを固めていただくと、残りが「例外」として見えてきます。遠回りのようでいて、いちばん早い順序だと考えています。

登記された権利・法令に基づく制限・インフラ(S01・S02・S04)

  • S01 登記された権利の種類・内容、登記名義人(法35条1項1号)……引渡しまでに抹消される予定でも、貸主から告げられなかったとしても、説明を省略できません。なお登記されていない権利は1号の対象外です。
  • S02 法令に基づく制限の概要(法35条1項2号)……「区域内にある」だけでは足りず、制限の概要まで説明します。中身は施行令3条が契約内容の別ごとに定めているので、宅地の貸借と建物の貸借でも対象の法令が違います。「貸借だから法令上の制限は要らない」は誤りです。貸借で変わるのは対象になる法令(中身)で、説明事項であることは変わりません。
  • S04 飲用水・電気・ガスの供給、排水施設の整備状況(法35条1項4号)……未整備なら、整備の見通しと特別の負担まで説明します。売買でも貸借でも必要です。

金銭と契約条件(S09・S10・S11・S13)

  • S09 代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と目的(法35条1項7号)……説明するのは額と目的だけで、授受の時期は含みません。時期は37条書面のほうの記載事項です。保管方法も説明事項ではありません。
  • S10 契約の解除に関する事項(法35条1項8号)……定めの有無を問わず必要。
  • S11 損害賠償額の予定または違約金に関する事項(法35条1項9号)……これも定めの有無を問わず必要。S10とまったく同じ構造ですので、セットで覚えておくと安心です。この2つが35条で最も出題される「ひっかけ」です。
  • S13 支払金・預り金を受領する場合の保全措置(法35条1項11号、規則16条の3)……措置を講ずるかどうかを説明し、講ずるなら概要まで。講じないときも「講じない」と説明します。貸借でも必要です(理由は後述)。

災害リスク(S16〜S19)

造成宅地防災区域(規則16条の4の3第1号)、土砂災害警戒区域(同2号)、津波災害警戒区域(同3号)、水害ハザードマップにおける物件の所在地(同3号の2)。この4つは、宅地でも建物でも、売買でも貸借でも必要です。

「貸借だから不要になるはずだ」と考えさせる肢が繰り返し出ていますが、貸借でも必要です。貸借で説明しなくてよくなるのは、私道に関する負担(建物の貸借だけ)・書類の保存の状況・住宅性能評価などのほうです。また、水害ハザードマップは令和2年8月に新設された比較的新しい事項で、市町村に照会し、物件の位置を含むものが作成・配布・掲載されていないことが確認されたときは、その旨を説明すれば足ります。業者が自ら浸水を調査する義務はありませんが、照会をしないまま「無いから説明不要」とすることはできません。


建物のときだけ必要な事項

既存建物(S07・S08)――「調査」は貸借でも必要、「書類」は貸借では不要

既存建物(中古の建物)に関する2つの事項は、言葉が似ているうえに結論が逆になるため、とても間違えやすいところです。まず結論の違いを押さえましょう。

  • S07 建物状況調査の実施の有無と結果の概要(法35条1項6号の2イ、規則16条の2の2)……建物の貸借でも必要です。「実施しているかどうか」は常に説明します。建物の状態は、借りて住む人にとっても大切な情報だからです。対象になるのは、調査から1年(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年)を経過していないものです。
  • S08 設計図書・点検記録等の書類の保存の状況(法35条1項6号の2ロ、規則16条の2の3)……建物の貸借では不要です。規則16条の2の3が「売買又は交換の契約に係る住宅に関する書類」と定めているとおり、建物を買う人のための事項だからです。

どちらも宅地には建物が無いので対象外です。同じ既存建物の話でも、「調査(S07)は貸借でも説明する、書類(S08)は貸借では説明しない」――ここが最大のひっかけです。条文では、どちらも法35条1項6号の2のイとロとして並んでいます。

石綿・耐震診断(S20・S21)――調査の義務はない

  • S20 石綿の使用の有無の調査結果(規則16条の4の3第4号)……記録されているときに、その内容を説明します。
  • S21 耐震診断の内容(同5号)……診断を受けたものであるときに、その内容を説明します。昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものは除かれます。

どちらも、宅地建物取引業者が自ら石綿の調査や耐震診断を実施する義務はありません。調査の実施義務があるかのような肢が繰り返し出ています。そして建物の貸借でも説明が必要です。宅地には建物が無いので、宅地の売買でも宅地の貸借でも説明しません(表では「-」)。

住宅性能評価(S22)――建物の売買・交換だけ

住宅性能評価を受けた新築住宅である旨(規則16条の4の3第6号)は、建物の売買・交換だけの事項です。建物の貸借では不要です。説明するのは「評価を受けた新築住宅である旨」だけで、評価の内容までは説明しません。宅地には建物が無いので、こちらも説明しません(表では「-」)。

区分所有建物(S06)――建物の貸借は「2つだけ」

S06(法35条1項6号、規則16条の2)は、表では建物の貸借だけ「◐一部必要」になっています。全部が要るわけでも、全部が要らないわけでもないからです。

規則16条の2の柱書はこう書いています。建物の貸借以外の契約では第1号から第10号まで、建物の貸借の契約では第3号と第8号だけ。号ごとに並べると、こうなります。

表2 区分所有建物で説明する事項(法35条1項6号・規則16条の2)の号別一覧
説明する事項 条文・説明の条件 建物の貸借
以外
建物の貸借
1号一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容 規則16条の2第1号無条件 必要 不要
2号共用部分に関する規約の定め 規則16条の2第2号定めがあるとき 必要 不要
3号専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め 規則16条の2第3号定めがあるとき 必要 必要ひっかけ注意
4号一棟の建物またはその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定め 規則16条の2第4号定めがあるとき 必要 不要
5号維持修繕の費用・通常の管理費用その他の費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定め 規則16条の2第5号定めがあるとき 必要 不要
6号計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めの内容および既に積み立てられている額 規則16条の2第6号定めがあるとき 必要 不要
7号当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額 規則16条の2第7号無条件 必要 不要
8号一棟の建物およびその敷地の管理が委託されているときの委託を受けている者の氏名および住所 規則16条の2第8号委託されているとき 必要 必要ひっかけ注意
9号管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合はその旨 規則16条の2第9号該当するとき 必要 不要
10号一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときはその内容 規則16条の2第10号記録されているとき 必要 不要

★の2つ(第3号・第8号)だけが、建物の貸借でも説明する事項です。それ以外の8つは建物の貸借では落ちます。

建物を借りる人にとって意味があるのは、「その部屋をどう使ってよいか」(3号・専有部分の用途その他の利用の制限)と「管理を誰がしているか」(8号・管理の委託先)の2つだけ、という整理です。敷地の権利も、修繕積立金の額も、借りる人には関係がありません。10のうち2つ、と数で覚えるより、この理屈で覚えるほうが忘れにくく、問われ方が変わっても迷いません。


貸借のときだけ必要な事項(S23〜S29)

貸借は、35条でつまずきやすいところの一つです。ただ、ここは丸暗記でなくても大丈夫です。並びに意味がありますので、順に見ていきましょう。

住む人の不安が、そのまま条文になっている

貸借では、売買には無い説明事項が加わります。根拠はすべて規則16条の4の3です。ばらばらに7つ覚えていただく必要はありません。借りて住む人が不安に思うことが、そのまま並んでいます。この並べ方と、35条書面のほかの群に当てた語呂は35条・37条書面の語呂合わせと覚え方にまとめています。

  • いつまで住めるか……S24 契約期間および契約の更新に関する事項(規則16条の4の3第8号)/S25 定期借地権・定期建物賃貸借等を設定しようとするときはその旨(同9号)
  • どう使えるか……S26 用途その他の利用に係る制限(同10号。区分所有建物のときは、規則16条の2第3号の事項を除く)/S23 台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況(同7号)
  • 出るときいくら返るか……S27 敷金その他契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項(同11号)
  • 困ったら誰に言うか……S28 管理が委託されているときの委託先の氏名・住所(同12号。区分所有建物は除かれます)
  • 更地に戻すのは誰か……S29 契約終了時における宅地の上の建物の取壊しに関する事項(同13号)

S27 敷金の精算は35条書面。しかも定めの有無を問わず必要

ここが35条でいちばん間違えやすい論点です。

「敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」は、規則16条の4の3第11号にあります。つまり35条書面の説明事項です。37条書面ではありません。

しかも、定めの有無を問わず説明します。宅地の貸借でも建物の貸借でも必要です。「お金の話だから37条書面」と判断してしまうと、間違いのもとになります。押さえていただきたい点は3つです。

  • 35条書面である(規則16条の4の3第11号)
  • 貸借のときだけ(宅地・建物とも必要)
  • 定めの有無を問わない(「精算の定めはありません」も説明する)

あわせて押さえておきたい点が、もう1つあります。条文は「敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず」と書いているので、対象は敷金に限りません。保証金でも預り金でも、契約終了時に精算することになっている金銭ならこの号に入ります。なお、金銭の保管方法は説明事項ではありません。

混同しやすい点も1つ。敷金という金銭の「授受の定め」(額・授受の時期・目的)は、貸借の37条書面のほうで、定めがあるときに記載します(法37条2項3号)。規則16条の4の3第11号が求めているのは「契約が終わるときにどう精算するか」で、別の事項です(法35条1項11号=支払金・預り金の保全措置とは別の号なので、番号を書くときは規則の号だと分かるようにしてください)。「終了時の精算=35条」「授受の定め=37条」と分けて覚えておかれると、取り違えを防げます。37条側は37条書面の記載事項一覧でご確認いただけます。

区分所有建物(分譲マンションなど)を貸すときのS26・S28

S26とS28には「区分所有建物を除く」という限定が付いていますが、「区分所有建物なら説明しなくてよい」という意味ではありません。区分所有建物のときは、別の規定(規則16条の2)で説明するという意味です。結論は次のとおりです。

S28(管理の委託先の氏名・住所)は、区分所有建物の貸借でも、それ以外の建物の貸借でも説明が必要です。区分所有建物は規則16条の2第8号、それ以外は規則16条の4の3第12号が根拠で、どちらの場合も説明事項です。「区分所有建物だから説明不要」という肢は誤りです。

S26(利用の制限)も、区分所有建物の貸借で説明が必要です。ただし、書く条件に1つ違いがあります。ペットの飼育禁止や事務所としての利用禁止など、規約で決められた専有部分の用途・利用の制限は「規約の定めがあるとき」に説明します(規則16条の2第3号)。規約以外による利用の制限は、区分所有建物でも定めの有無を問わず説明します(規則16条の4の3第10号)。区分所有建物だから規約の話だけ、というわけではない点にご注意ください。

S23は建物の貸借だけ、S29は宅地の貸借だけ

貸借の7つのうち、2つだけは宅地と建物で分かれます。

  • S23 台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況(規則16条の4の3第7号)は建物の貸借だけ。設備は建物の話で、更地には台所も浴室もありません。居住用か事業用かは問いません。
  • S29 契約終了時における宅地の上の建物の取壊しに関する事項(同13号)は宅地の貸借だけ。土地を借りて建物を建てた人が、出ていくときにその建物をどうするかという話なので、建物を借りる契約には出てきません。「定めようとするとき」に必要な条件付きの号です。

じつは、号の範囲は条文に書いてある

ここまでの区分は、暗記しなくても規則16条の4の3の柱書を読めば確定します。柱書は、契約内容の別ごとに、どの号を説明するかを列挙しています。

  • 宅地の売買・交換……第1号から第3号の2まで
  • 建物の売買・交換……第1号から第6号まで
  • 宅地の貸借……第1号から第3号の2まで、および第8号から第13号まで
  • 建物の貸借……第1号から第5号まで、および第7号から第12号まで

これを見ると、これまでの説明が全部つながります。建物の貸借に6号(住宅性能評価)が入っていないから説明しない。宅地の貸借に7号(設備の整備状況)が入っていないから説明しない。建物の貸借に13号(建物の取壊し)が入っていないから説明しない。逆に、4号(石綿)と5号(耐震診断)は建物の貸借の範囲に入っているので必要になります。

号の番号と範囲を1行覚えるだけで、規則側の7項目が全部決まります。個別の暗記に入る前に、柱書を一度読んでおかれることをおすすめします。

ここまでの事項は、35条書面の記載事項の演習問題(60問)で確かめられます。各問題の解説から、記載事項一覧の該当する行へ戻れます。


貸借では説明しない事項

「貸借だから説明しない」とまとめて覚えてしまうと、かえって取りこぼしが増えます。何を、なぜ説明しなくてよいのかを条文で分けておくと、迷いにくくなります。

建物の貸借だけ説明しない:私道に関する負担(S03)

法35条1項3号は「当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは」と明記しています。つまり説明しないのは建物の貸借だけで、宅地の貸借では必要です。

「貸借だから説明しない」と覚えてしまうと、宅地の貸借で取りこぼしてしまいます。私道の負担は、宅地の売買・建物の売買・宅地の貸借の3つで必要です。この事項は35条書面だけのもので、契約直前に気づいたとしても、37条書面への記載で代えることはできません。

売買・交換にしか出てこない:手付金等の保全措置(S12)・ローンのあっせん(S14)

  • S12 手付金等の保全措置の概要(法35条1項10号)……10号は法41条1項に規定する手付金等を受領しようとする場合の話で、法41条・41条の2は「自ら売主となる売買」に限られます。貸借ではそもそも条件が成立しません。
  • S14 金銭の貸借のあっせん(法35条1項12号)……条文が「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせん」と限定しています。貸借に代金はないので、これも条件が成立しません。

この2つは「貸借では説明しなくてよい」と覚えるより、「条文の条件に当てはまらないから出番がない」と理解しておくほうが安全です。

S13(支払金・預り金の保全措置)は貸借でも必要――S12と取り違えない

S12とS13の取り違えが、35条で最も多い事故です。名前が似ていて、結論が逆になります。

  • S12 手付金等の保全措置(法35条1項10号)=売買・交換だけ
  • S13 支払金・預り金の保全措置(法35条1項11号、規則16条の3)=貸借でも必要

S13が貸借でも必要な理由は、規則16条の3が対象を「代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず」と書いているからです。借賃と敷金が明記されている以上、貸借で説明が要らなくなることはありません。なお、規則16条の3のただし書で①受領する額が50万円未満のもの ②法41条・41条の2により保全措置が講じられている手付金等 ③売主または交換の当事者である宅地建物取引業者が登記以後に受領するもの ④報酬の4つが除かれます。

S15(契約不適合責任の履行に関する措置)の貸借は「不要(推定)」

S15(法35条1項13号)は、契約不適合責任の履行について保証保険契約の締結その他の措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要を説明する事項です。売買・交換では必要で、措置を講じない場合も「講じない」と説明します。

貸借については、このページの表では「不要(推定)」としています。法にも規則にも貸借を除外する明文はなく、根拠が国土交通省の貸借用の様式例にこの欄が無いことにとどまるため、断定はしていません。

試験対策として、ここを深追いする必要はありません。昭和63年度から令和7年度までの40回分で、貸借の文脈でこの号を問うた肢は1つもありません。出題されている売買・交換での扱い(措置を講ずるかどうかを、定めの有無を問わず説明する)を確実に固めておきましょう。なお、37条書面のほう(法37条1項11号)は責任そのものについての定めも含み、こちらは貸借では記載しません。35条と37条で中身が違う点も、あわせて押さえておくと安心です。


割賦販売のときだけ上乗せされる事項(S30)

30項目のうち最後の1つ、S30は少し性格が違います。法35条2項にあり、割賦販売のときだけ、1項各号に上乗せして説明する事項です。

割賦販売とは、代金の全部または一部について引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ2回以上に分割して受領することを条件として販売することをいいます(法35条2項かっこ書)。上乗せされるのは次の3つです。

  • 現金販売価格(引渡しまでに代金の全額を受領する場合の価格)
  • 割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格)
  • 引渡しまでに支払う金銭の額と賦払金の額、その支払の時期および方法

押さえる点は2つです。①これは「上乗せ」であって「置き換え」ではありません。1項各号の説明も当然に必要です。②手数料の利率は説明事項ではありません。また、割賦「販売」なので貸借には出てきません(表では貸借の2列が「×対象外」です)。


35条書面の記載事項ではないが、契約前に説明するもの

供託所等に関する説明(法35条の2)です。営業保証金を供託した供託所とその所在地、保証協会の社員であればその旨と弁済業務保証金の供託所などを、契約が成立するまでの間に説明します。

混同しやすいところですので、3つ並べて確認しておきましょう。

  • 35条書面の記載事項ではありません。37条書面の記載事項でもありません。
  • 書面の交付は不要です。
  • 宅地建物取引士による説明である必要もありません。

説明する時期が35条と同じ「契約が成立するまでの間」であるため、35条書面に含まれると思わせる肢が出ます。時期は同じ、根拠条文と手続は別と整理しておきましょう。なお、相手方が宅地建物取引業者であるときは、この説明そのものが不要です。


35条書面の記載事項の演習

一覧表で整理した事項を、今度は問題の形で確かめてみましょう。

35条書面の記載事項 全60問

35条書面の説明事項にかかわる問題を集めています。各問題の解説から、記載事項一覧の該当する行へ戻って確認できます。登録は不要です。

演習をはじめる


よくある質問

35条書面の必須項目は何ですか?

取引の種類によって変わります。4区分すべてで必要なのは、登記された権利(法35条1項1号)、法令に基づく制限(同2号)、飲用水等の整備状況(同4号)、未完成物件の完了時の形状・構造(同5号)、代金・借賃以外に授受される金銭(同7号)、契約の解除(同8号)、損害賠償額の予定・違約金(同9号)、支払金・預り金の保全措置(同11号)、災害関係の4事項(規則16条の4の3第1号〜3号の2)です。取引ごとの要否は、このページの表の絞り込みで確認できます。

35条書面は誰が作成するのですか?

条文は作成義務者を定めていません。定めているのは、交付して説明させる義務を負うのは宅地建物取引業者であること(法35条1項)、説明するのは宅地建物取引士であること、書面に記名するのは宅地建物取引士であること(法35条5項)です。説明する宅地建物取引士と記名する宅地建物取引士が同一である必要はなく、専任の宅地建物取引士である必要もありません。

35条書面は必須ですか? 省略できる場合はありますか?

省略できるのは相手方が宅地建物取引業者であるときの「説明」だけです(法35条6項)。このときも書面の交付は必要で、宅地建物取引士の記名も必要です(同7項)。相手方が内容を熟知している、相手方から説明は要らないと申し出があった、といった事情では省略できません。なお、自ら貸主となる契約は宅地建物取引業に当たらないため、そもそも35条書面も37条書面も要りません。

賃貸(貸借)の35条書面では何が変わりますか?

増えるものと、説明しなくてよくなるものの両方があります。増えるのは規則16条の4の3の7号〜13号(設備の整備状況、契約期間と更新、定期借地・定期借家、利用の制限、敷金等の精算、管理の委託先、建物の取壊し)です。ただし7号(設備の整備状況)は建物の貸借だけ、13号(建物の取壊し)は宅地の貸借だけで、残りの5つは宅地・建物のどちらの貸借でも必要です。説明しなくてよくなるのは手付金等の保全措置(法35条1項10号)と金銭の貸借のあっせん(同12号)、建物の貸借では私道に関する負担(同3号)、書類の保存の状況(同6号の2ロ)、住宅性能評価(規則16条の4の3第6号)です。

石綿の調査は宅地建物取引業者がしなければなりませんか?

いいえ。規則16条の4の3第4号は「調査の結果が記録されているときは、その内容」と定めているだけで、業者が自ら調査を実施する義務はありません。耐震診断(同5号)も同じで、診断を受けたものであるときにその内容を説明します。「調査を実施しなければならない」という肢は誤りです。

建物状況調査の結果は、賃貸でも説明が必要ですか?

必要です。法35条1項6号の2イ(建物状況調査を実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要)は建物の貸借でも説明事項です。一方、同号ロ(設計図書・点検記録等の書類の保存の状況)は建物の貸借では不要です。規則16条の2の3が「売買又は交換の契約に係る住宅に関する書類」と定めているためです。イとロで結論が分かれるのがこの論点の核心です。

35条書面と37条書面で、同じ事項でも書くことが違うのはなぜですか?

書面の目的が違うからです。35条書面は契約するかどうかを判断するための情報なので、「特約はありません」という情報にも価値があり、定めの有無を問わず説明します。37条書面は合意した内容の記録なので、合意していないことは書きようがなく、定めがあるときだけ記載します。このように書く条件が違う事項は、35条と37条で書く条件・中身が違う事項の比較表にまとめてあります。


まとめ

最後に、30項目を5つの群で置き直しておきます。

  • どの取引でも必要……S01・S02・S04・S05・S09・S10・S11・S13・S16〜S19
  • 建物のときだけ……S06(貸借は3号・8号の2つだけ)・S07・S08(貸借は不要)・S20・S21・S22(貸借は不要)
  • 貸借のときだけ……S23(建物のみ)・S24・S25・S26・S27 敷金等の精算・S28・S29(宅地のみ)
  • 貸借では説明しない……S03(建物の貸借のみ)・S12・S14・S15(不要と推定)
  • 割賦販売のときだけ上乗せ……S30(法35条2項。売買・交換のみ)

取りこぼしやすいのは、次の3か所です。①S10・S11は定めの有無を問わず必要 ②S12(売買のみ)とS13(貸借でも必要)を取り違えない ③S27 敷金の精算は35条書面で、定めの有無を問わない。ここだけでも押さえておかれると、失点がぐっと減ります。

37条書面の側は37条書面の記載事項一覧に、2つの書面の役割の違いは35条書面と37条書面の違いにまとめてあります。並びを丸ごと固定したい方には、語呂合わせと覚え方をおすすめします。