37条書面の記載事項一覧|必要的・任意的を4区分の表で整理

37条書面(契約書面)の記載事項は、全部で15項目あります。丸暗記しようとすると大変ですが、仕組みさえ分かれば無理なく頭に入ります。この記事は宅建試験の対策として、その15項目を宅地か建物か/売買・交換か貸借かの4区分に分けた一覧表にまとめたものです。

37条書面の記載事項は、定めが無くても必ず書くものと、定めがあるときだけ書くものの2種類に分かれます。そのうえで、売買・交換か貸借かで要否が変わります。この2軸さえ表で押さえていただければ、15項目は暗記するまでもありません。まずは表で全体像をご確認いただき、そのあとで解説を読み進めていただくと、理解がよりスムーズになります。書面の役割そのものの違いは35条書面と37条書面の違いに、35条側の説明事項は35条書面の記載事項一覧にまとめています。

本記事は2026年9月時点で施行されている宅地建物取引業法および同法施行規則にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。

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35条・37条書面 記載事項の一覧

ここから先は、この一覧表を印刷して手元に置き、照らし合わせながら読むと、より整理しやすくなります。37条書面の15項目と35条書面の30項目を、4区分の表にまとめています。

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37条書面の記載事項 全15項目(4区分の一覧表)

この一覧表を効率よく使うための4つのポイントをご紹介します。

  • 表の上にある「取引で絞り込む」ボタンを押していただくと、その取引で出番のある行だけが表示されます。たとえば「建物貸借」を押すと、15項目が8項目になります。
  • 記号は●必要/▲定めがあるとき/-不要/×対象外です。
  • 「不要」と「対象外」は違います。対象外=その取引にはそもそもその概念が無い(貸借に「代金」は無い)、不要=概念はあるが記載を要しない。37条ではこの2つの区別がそのまま条文の読み方になるので、あとで詳しく書きます。
  • 各行のT01などの番号は、このサイトの記事で共通に使っている番号です。行のリンクをブックマークしておいていただくと、過去問で迷われたときにその行だけを開くことができます。

表1 37条書面(契約書面)の記載事項と取引の別
説明事項・記載事項 条文根拠 宅地の
売買・交換
建物の
売買・交換
宅地の
貸借
建物の
貸借
T01
当事者の氏名(法人は名称)および住所
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項1号、2項1号 必要 必要 必要 必要
T02
物件を特定するために必要な表示
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項2号、2項1号 必要 必要 必要 必要
T03
既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項2号の2 対象外 必要 対象外 不要
T04
代金・交換差金の額、支払の時期および方法
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項3号 必要 必要 対象外 対象外
T05
引渡しの時期
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項4号、2項1号 必要 必要 必要 必要
T06
移転登記の申請の時期
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条1項5号 必要 必要 不要 不要
T07
代金・交換差金以外の金銭の授受の定め
定めがあるときに記載
法37条1項6号 定めがあるとき 定めがあるとき 対象外 対象外
T08
契約の解除に関する定め
定めがあるときに記載
法37条1項7号、2項1号 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき
T09
損害賠償額の予定または違約金に関する定め
定めがあるときに記載
法37条1項8号、2項1号 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき
T10
金銭の貸借のあっせんが成立しないときの措置
定めがあるときに記載
法37条1項9号 定めがあるとき 定めがあるとき 不要 不要
T11
天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め
定めがあるときに記載
法37条1項10号、2項1号 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき 定めがあるとき
T12
契約不適合責任またはその履行に関して講ずべき措置についての定め
定めがあるときに記載
法37条1項11号 定めがあるとき 定めがあるとき 不要 不要
T13
租税その他の公課の負担に関する定め
定めがあるときに記載
法37条1項12号 定めがあるとき 定めがあるとき 不要 不要
T14
借賃の額、支払の時期および方法
必要的記載事項ひっかけ注意
法37条2項2号 対象外 対象外 必要 必要
T15
借賃以外の金銭の授受の定め
定めがあるときに記載
法37条2項3号 対象外 対象外 定めがあるとき 定めがあるとき

必要
定めがあるとき
一部必要
不要(規定はあるが記載を要しない)
対象外(その取引には規定が及ばない)

この表と35条書面の表をA4にまとめたものを用意しました。35条・37条書面 記載事項の一覧(PDF・A4・2ページ)。印刷して持ち歩く用です。

「必要的記載事項」「任意的記載事項」という呼び方について

先に用語を整理しておきます。宅地建物取引業法に「必要的記載事項」「任意的記載事項」という言葉は出てきません。条文がしているのは、「〜を記載した書面を交付しなければならない」と単に掲げるか、「〜に関する定めがあるときは、その内容」と条件を付けるかの書き分けだけです。

この書き分けを、教材では必要的記載事項/任意的記載事項と呼んだり、絶対的記載事項/相対的記載事項と呼んだりします。呼び方が2通りあるだけで、指しているものは同じです。どちらの言葉で覚えていても構いません。この記事では前者で統一します。

大事なのは呼び名ではなく、条文が「定めがあるときは」と書いているかどうかを、ご自身で確かめられることです。以下、その順に見ていきます。


必ず記載する事項(必要的記載事項)

売買・交換のとき:6つ

法37条1項が「定めがあるときは」という条件を付けずに掲げているのは、次の6つです(うちT03は既存建物のときだけの事項なので、宅地では対象外になります)。

  • T01 当事者の氏名(法人は名称)および住所(法37条1項1号)
  • T02 物件を特定するために必要な表示(法37条1項2号)……宅地なら所在・地番など、建物なら所在・種類・構造などです。
  • T03 既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項(法37条1項2号の2)……既存建物のときだけです。宅地には建物が無いので対象外になります。
  • T04 代金・交換差金の額、支払の時期および方法(法37条1項3号)
  • T05 引渡しの時期(法37条1項4号)
  • T06 移転登記の申請の時期(法37条1項5号)

並べ方を変えると、意味がはっきりします。誰が(T01)、何を(T02・T03)、いくらで(T04)、いつ渡して(T05)、いつ名義を移すか(T06)。契約書として当然に要る骨格そのものです。37条書面は合意した内容の記録なので、骨格が抜けていては書面の用をなしません。だから「定めがあるときは」という条件を付けずに掲げられています。

貸借のとき:4つ

貸借の必要的記載事項は4つです。法37条2項1号が、1項のうち第1号・第2号・第4号・第7号・第8号・第10号だけを引用しているので、必要的記載事項として残るのはT01・T02・T05の3つ。そこに貸借だけの事項が1つ加わります。

  • T01 当事者の氏名および住所(法37条2項1号・1項1号)
  • T02 物件を特定するために必要な表示(法37条2項1号・1項2号)
  • T05 引渡しの時期(法37条2項1号・1項4号)
  • T14 借賃の額、支払の時期および方法(法37条2項2号)

T14 借賃の額は37条書面。35条書面には無い

ここが37条でいちばん間違えやすい論点です。直感とずれるところですので、理屈から丁寧に見ていきます。

35条書面に「借賃の額」の説明事項はありません。法35条1項7号にあるのは「代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的」です。つまり礼金・権利金・敷金といった家賃以外のお金だけを説明し、家賃そのものの額は説明事項になっていません。

「家賃を重要事項説明で言わないわけがない」という直感とずれるため、ここが混同の中心になります。理屈はこうです。借賃の額は、説明して聞かせる情報ではなく、当事者が合意して決める条件そのものです。合意した内容を記録するのは37条書面の役目なので、法37条2項2号が受けています。35条書面の側は35条書面の「借賃以外に授受される金銭」でご確認いただけます。

細かい違いがもう一つあります。法35条1項7号が説明を求めているのは「額」と「授受の目的」の2つだけで、授受の時期は含みません。37条は額・支払の時期・方法まで記載します。借賃まわりで「時期」が出てきたら37条、と覚えておかれると迷いにくくなります。

貸借では書かない2つ:T03とT06

売買・交換では必要的記載事項なのに、貸借では記載しないものが2つあります。

  • T03 既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項(法37条1項2号の2)
  • T06 移転登記の申請の時期(法37条1項5号)

条文上の理由は、さきほどの法37条2項1号の引用に、第2号の2と第5号が入っていないことです。覚えるときは、どちらも物件を買って所有者になる人に関わる事項と考えるとすっきりします。借りる人は所有者にならず、名義を移す登記もしないからです。

とくにT03は、35条書面のS07と対になる最重要のひっかけです。似た言葉なのに結論が逆になります。

  • 35条のS07=35条書面の建物状況調査(法35条1項6号の2イ)。建物状況調査を実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要。建物の貸借でも説明します。
  • 37条のT03(法37条1項2号の2)。構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項。貸借では記載しません。

中身も違います。35条は「調査をしたか、その結果はどうか」という情報の提供で、37条は「その状態について売主と買主が確認し合った内容」という合意の記録です。借りる人は建物の状態に責任を持つ立場にないので、確認し合う場面がありません。だから貸借では記載しません。


定めがあるときだけ記載する事項(任意的記載事項)

ここからは条件付きの事項です。数は多く見えますが、条文の書き方をそのままたどるだけですので、身構えていただく必要はありません。

条文が「〜に関する定めがあるときは、その内容」と書いている事項です。定めが無ければ、書きません。ここが35条書面と決定的に違うところで、35条には「定めが無くても『ありません』と説明する」事項があります(後述)。

売買・交換のとき:7つ

  • T07 代金・交換差金以外の金銭の授受の定め(法37条1項6号)……額・授受の時期・目的まで記載します。
  • T08 契約の解除に関する定め(法37条1項7号)
  • T09 損害賠償額の予定または違約金に関する定め(法37条1項8号)
  • T10 金銭の貸借のあっせんが成立しないときの措置(法37条1項9号)……あっせんの定めがある場合に、不成立のときの措置を記載します。
  • T11 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(法37条1項10号)……いわゆる危険負担です。
  • T12 契約不適合責任またはその履行に関して講ずべき措置についての定め(法37条1項11号)
  • T13 租税その他の公課の負担に関する定め(法37条1項12号)

貸借のとき:4つ

法37条2項1号が引用している第7号・第8号・第10号が残り、そこに貸借だけの事項が1つ加わります。

  • T08 契約の解除に関する定め(法37条2項1号・1項7号)
  • T09 損害賠償額の予定または違約金に関する定め(法37条2項1号・1項8号)
  • T11 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(法37条2項1号・1項10号)
  • T15 借賃以外の金銭の授受の定め(法37条2項3号)……額・授受の時期・目的を記載します。

T04・T07は「なくなる」のではなく「置き換わる」

表で貸借の列を見ると、T04(代金の額)とT07(代金以外の金銭)は「×対象外」になっています。T06の「-不要」とは記号が違います。この違いには意味があります。

  • 置き換わるもの……貸借に「代金」という概念はありません。代わりに借賃があり、T04→T14(法37条2項2号)、T07→T15(法37条2項3号)と、2項が別の号で受け直しています。受け皿があるので「対象外」です。
  • なくなるもの……T06・T10・T12・T13には受け皿がありません。2項1号が引用していないので、そのまま記載不要になります。表では「-不要」です。T03も2項1号に入っていない点は同じですが、宅地には建物が無いので、宅地の貸借では「×対象外」になります(建物の貸借は「-不要」)。

「貸借では代金のことを書かなくてよい」は誤りです。書く場所が3号から2項2号に移っているだけで、借賃の額は必要的記載事項として必ず書きます。「なくなる」と「置き換わる」を区別しておかないと、ここで足をすくわれますので、注意が必要です。

貸借で書かない5つは、1つの考え方で説明がつく

貸借はつまずきやすいところですが、ここも覚える量を増やさずに整理できます。

任意的記載事項のうち貸借で書かないのはT10・T12・T13の3つです。さきに見た必要的記載事項のT03・T06と合わせると、貸借で書かない事項は5つになります。ばらばらに5つ覚える必要はありません。借りる人は、その物件の所有者にならない。この1つの考え方で全部つながります。この理屈と、貸借で必ず書く4つの語呂を組み合わせた覚え方は35条・37条書面の語呂合わせと覚え方にまとめています。

  • T06 移転登記の申請の時期(法37条1項5号)……借主は登記名義人になりません。移す名義がありません。
  • T13 租税その他の公課の負担に関する定め(法37条1項12号)……固定資産税を負担するのは所有者です。借主の負担ではありません。
  • T12 契約不適合責任またはその履行に関して講ずべき措置についての定め(法37条1項11号)……目的物の種類・品質が契約に適合しないことの責任は、物を手に入れる側の話です。
  • T10 金銭の貸借のあっせんが成立しないときの措置(法37条1項9号)……条文が「代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせん」と限定しています。代金を借りて買うための融資の話で、借賃には出てきません。
  • T03 既存建物の当事者双方が確認した事項(法37条1項2号の2)……建物の状態に責任を持つのは、その建物を手に入れる人です。

T13は取りこぼしが多いところですので、念のため繰り返します。租税その他の公課は、貸借では記載しません。「37条だけの事項」と覚えたところで止まってしまうと、貸借でも書くと思い込みやすくなります。「37条にしか書かない事項」であり、かつ「貸借では記載しない事項」でもある——2つの条件を両方確認する必要がある点にご注意ください。

5つとも「所有権が移らないから出番が無い」で説明できます。逆にいえば、貸借で残る事項(当事者・物件・引渡しの時期・借賃・解除・損害賠償額の予定・危険負担・借賃以外の金銭)は、所有権と関係なく、借りて使うだけでも起こりうることばかりです。肢を見たときに「これは所有者の話か」と一度問い直していただければ、大半は判別できます。

35条書面には出てこない事項

37条書面にしか無い事項を、まとめて挙げます。法35条1項の説明事項には見当たらないものです。

  • T04 代金・交換差金の額、支払の時期および方法(法37条1項3号)
  • T05 引渡しの時期(法37条1項4号、2項1号)
  • T06 移転登記の申請の時期(法37条1項5号)
  • T11 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(法37条1項10号、2項1号)
  • T13 租税その他の公課の負担に関する定め(法37条1項12号)
  • T14 借賃の額、支払の時期および方法(法37条2項2号)

「重要事項として説明したから37条書面には書かなくてよい」という肢が繰り返し出ますが、そもそも法35条1項では説明していません。とくに代金の額(T04)・引渡しの時期(T05)・移転登記の申請の時期(T06)で狙われます。

危険負担(T11)を35条書面の説明事項だと思っている人が多いので、はっきり書いておきます。天災その他不可抗力による損害の負担は、法35条1項のどの号にもありません。37条だけの事項です。しかも定めがあるときに記載する任意的記載事項で、貸借でも記載します(法37条2項1号が1項10号を引用しているため)。「37条だけ」「任意的」「貸借でも要る」の3点セットで押さえておきましょう。

必要的記載事項と任意的記載事項の区別は、37条書面の記載事項の演習問題(26問)で確かめられます。各問題の解説から、記載事項一覧の該当する行へ戻れます。


35条書面と同じ事項でも、書くことが違う

両方の書面に出てくる事項があります。ただし、同じ言葉が並んでいても、書く条件や書く中身が違います。37条の側から見ると、次の4つです。


表2 どちらにも書くが、書く条件や中身が違う事項(最頻のひっかけ)
事項 35条書面 37条書面 どこが違うか
契約の解除に関する事項 定めの有無を問わず必要ひっかけ注意法35条1項8号 定めがあるときに記載法37条1項7号、2項1号 35条は定めが無くてもその旨を説明する。37条は定めがあるときだけ記載するS10・T08
損害賠償額の予定・違約金 定めの有無を問わず必要ひっかけ注意法35条1項9号 定めがあるときに記載法37条1項8号、2項1号 S10・T08 とまったく同じ構造。セットで覚えるS11・T09
金銭の貸借(ローン)のあっせん あっせんの内容と、成立しないときの措置法35条1項12号 定めがあるときに記載法37条1項9号 35条はあっせんの内容と不成立のときの措置、37条は不成立のときの措置だけ。書く中身が違うS14・T10
契約不適合責任 措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要法35条1項13号 定めがあるときに記載法37条1項11号 35条は履行に関して講ずる措置だけ。37条は責任そのものの定めも含むS15・T12

いちばん出題されるのはT08(契約の解除)とT09(損害賠償額の予定・違約金)です。37条書面では定めがあるときだけ記載しますが、35条書面では定めの有無を問わず説明します。「特約はありません」も35条では説明の対象になる、ということです。

なぜ35条と37条で、書く条件や中身が違うのでしょうか。35条書面は契約するかどうかを判断するための材料で、37条書面は合意した内容の記録だからです。この目的の違いから、4つとも説明がつきます。判断軸そのものは35条書面と37条書面の違いで扱っています。

残る2つは、書く条件ではなく書く中身が違います。

  • T10 金銭の貸借のあっせん……35条(法35条1項12号)はあっせんの内容と、成立しないときの措置まで説明します。37条(法37条1項9号)に記載するのは成立しないときの措置だけです。
  • T12 契約不適合責任……35条(法35条1項13号)は履行に関して講ずべき措置だけが対象です。37条(法37条1項11号)は責任そのものについての定めも含みます。条文が「その不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき……措置」と両方を掲げているためです。

敷金の精算は37条書面の事項ではない

貸借でよく取り違えられるので、結論だけ書きます。「契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項」は35条書面の説明事項で、37条書面の記載事項ではありません(規則16条の4の3第11号)。37条書面の側にあるのはT15 借賃以外の金銭の授受の定め(法37条2項3号)で、敷金という金銭をいくら・いつ・何のために授受するかの定めです。別の事項で、書く条件も違います。

  • 終了時の精算に関する事項……35条書面(規則16条の4の3第11号)。貸借のみ。定めの有無を問わない
  • 授受の定め(額・時期・目的)……37条書面(法37条2項3号)。貸借のみ。定めがあるとき

「お金の話だから37条」と判断してしまうと、間違いのもとになります。35条側の詳細は35条書面の敷金等の精算に関する事項でご確認いただけます。


37条書面は契約書で代用できるのか

できます。必要な記載事項がすべて記載されていれば、その取引の契約書をもって37条書面とすることができます。

根拠は条文の建て付けです。法37条が定めているのは「次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない」ということだけで、契約書とは別個の書面を作れとは定めていません。求められているのは記載事項が揃っていることであって、書面のタイトルでも枚数でもありません。実務でも、売買契約書が37条書面を兼ねているのが通例です。

誤りの肢は、たいてい次のどちらかの形で出ます。

  • 誤り:「契約書とは別に37条書面を作成しなければならない」
  • 誤り:「37条書面を契約書に添付しなければならない」

どちらも条文にそのような定めはありません。逆に、契約書に記載事項の一部が欠けていれば、その契約書は37条書面としては足りません。兼ねられるかどうかは、15項目のうち必要なものが埋まっているかだけで決まります。


37条書面に説明義務は無い。ただし宅地建物取引士の記名は必要

理由は、37条書面が、当事者どうしがすでに合意した契約内容を記録した書面だからです。自分たちで話し合って決めた約束ごとを、あとから改めて宅地建物取引士に説明してもらう必要はありません。そのため37条書面は、説明ではなく交付するだけでよいルールになっています。条文の書き方にも、この違いがそのまま表れています。

  • 法35条1項……「宅地建物取引士をして、……書面を交付して説明をさせなければならない」
  • 法37条1項・2項……「……事項を記載した書面を交付しなければならない」

37条には「説明」という語がありません。交付すれば足ります。相手方が業者であるかどうかにかかわらず、そもそも説明義務が無いので、説明の省略という論点自体が生じません。

混同しやすいのはここからです。説明が要らないことと、宅地建物取引士が関与しないことは別です。法37条3項は「宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない」と定めています。記名は必要です。押さえるべきは3点です。

  • 説明は不要。交付するだけでよい
  • 宅地建物取引士の記名は必要(法37条3項)。専任の宅地建物取引士である必要はありません
  • 交付そのものは、宅地建物取引士以外の従業者が行ってもかまいません

令和4年5月の改正(押印の廃止と電磁的方法)

なお、令和4年5月の改正で「記名押印」から「記名」に変わり、押印は不要になりました。古い教材や古い過去問の解説が「記名押印」のままになっていることがありますので、その点にご留意ください。また、相手方の承諾を得れば、書面の交付に代えて電磁的方法により提供することもできます(法37条4項・5項)。この場合も書面を交付したものとみなされます。


37条書面の記載事項の演習

一覧表で整理した事項を、今度は問題の形で確かめてみましょう。

37条書面の記載事項 全26問

37条書面の記載事項にかかわる問題を集めています。各問題の解説から、記載事項一覧の該当する行へ戻って確認できます。登録は不要です。

演習をはじめる


よくある質問

37条書面にはどのようなことが記載されていますか?

売買・交換では、当事者の氏名住所(法37条1項1号)、物件を特定する表示(同2号)、既存建物について当事者双方が確認した事項(同2号の2)、代金・交換差金の額と支払の時期・方法(同3号)、引渡しの時期(同4号)、移転登記の申請の時期(同5号)の6つを必ず記載します。これに加えて、代金以外の金銭の授受、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、ローンのあっせん不成立の措置、天災その他不可抗力による損害の負担、契約不適合責任、租税その他の公課の7つを、定めがあるときに記載します。貸借では内容が変わりますので、このページの表の絞り込みでご確認ください。

37条書面に記載しなくてよいものは何ですか?

2通りあります。1つは定めが無い場合で、任意的記載事項(法37条1項6号〜12号など)は定めが無ければ記載しません。もう1つは貸借のときで、既存建物の当事者双方の確認事項(法37条1項2号の2)、移転登記の申請の時期(同5号)、ローンのあっせん不成立の措置(同9号)、契約不適合責任(同11号)、租税その他の公課(同12号)の5つは記載しません。法37条2項1号が、1項のうち第1号・第2号・第4号・第7号・第8号・第10号だけを引用しているためです。

37条書面と契約書の違いは何ですか?

別の書面である必要はありません。法37条は記載すべき事項を定めているだけで、契約書とは別個の書面を作れとは定めていないため、必要な記載事項がすべて記載されていれば、契約書をもって37条書面とすることができます。「別に作成しなければならない」「契約書に添付しなければならない」という肢はいずれも誤りです。逆に、記載事項が欠けている契約書は37条書面としては足りません。

賃貸借契約書は37条書面になりますか?

なります。ただし貸借の記載事項が揃っていることが条件です。貸借の必要的記載事項は、当事者の氏名住所・物件を特定する表示・引渡しの時期(いずれも法37条2項1号)と、借賃の額、支払の時期および方法(同2項2号)の4つです。加えて、契約の解除・損害賠償額の予定・天災その他不可抗力による損害の負担・借賃以外の金銭の授受について定めがあれば、その内容も記載します。また、自ら貸主となる場合は宅地建物取引業に当たらないため、そもそも37条書面の交付義務が生じません。

租税その他の公課の負担は、貸借でも記載しますか?

記載しません。租税その他の公課の負担に関する定めは法37条1項12号にあり、法37条2項1号は12号を引用していないためです。固定資産税などを負担するのは所有者で、借主の負担ではないと考えると、結論を思い出しやすくなります。同じ理由で、移転登記の申請の時期(同5号)や契約不適合責任(同11号)も貸借では記載しません。

37条書面には宅地建物取引士の説明が必要ですか?

必要ありません。法37条1項・2項は「書面を交付しなければならない」と定めるだけで、法35条1項のような「説明をさせなければならない」という文言がありません。ただし宅地建物取引士の記名は必要です(法37条3項)。専任の宅地建物取引士である必要はなく、交付そのものは宅地建物取引士以外の従業者が行ってもかまいません。説明が不要なことと、記名が不要なことは別です。

宅地建物取引業者は37条書面を省略できますか?

できません。法37条には、相手方の承諾や相手方が内容を熟知していることを理由に交付を省略できるとする規定がありません。相手方が宅地建物取引業者であっても、37条書面の交付は必要です。35条書面には業者間取引で説明を省略できる規定(法35条6項)がありますが、あれは説明の省略であって書面の交付の省略ではなく、しかも37条には対応する規定自体がありません。なお、相手方の承諾を得て電磁的方法により提供することはできます(法37条4項・5項)。これは省略ではなく、交付したものとみなされる方法です。


まとめ

最後に、15項目を4つの束で置き直しておきます。

  • 売買・交換の必要的記載事項(6つ)……T01 当事者・T02 物件の表示・T03 既存建物の双方確認・T04 代金の額・T05 引渡しの時期・T06 移転登記の申請の時期
  • 貸借の必要的記載事項(4つ)……T01・T02・T05・T14 借賃の額
  • 任意的記載事項……売買・交換は7つ(T07〜T13)、貸借は4つ(T08・T09・T11・T15)
  • 貸借で書かない5つ……T03・T06・T10・T12・T13。借りる人は所有者にならない、で説明がつく

取りこぼしやすいのは、次の3か所です。①借賃の額(T14)は37条書面。35条書面に借賃の額の説明事項は無い ②T04・T07は貸借で「なくなる」のではなく借賃側に「置き換わる」 ③租税その他の公課(T13)は37条だけの事項で、しかも貸借では記載しない。この3つを押さえておかれると、貸借の問題でも落ち着いて対応できます。

35条書面の側は35条書面の記載事項一覧に、2つの書面の役割の違いは35条書面と37条書面の違いにまとめてあります。並びを丸ごと固定したい方には、語呂合わせと覚え方をおすすめします。