35条・37条書面と宅建士|記名・説明・交付と相手が業者のとき

「37条書面にも宅建士の説明が要るのか」「記名は誰がするのか」「相手が宅建業者なら何を省けるのか」。35条書面と37条書面は、書く事項だけでなく、誰が・誰に・何をするかでも問われます。このページは宅建試験の受験生向けに、宅地建物取引士(一般には宅建士と呼ばれます)が2つの書面にどう関わるかを、条文の項・号と過去問の問われ方で整理したものです。

まずは結論を確かめておきましょう。37条書面に宅地建物取引士の説明は要りませんが、記名は宅地建物取引士がします(法37条3項)。これに対して35条書面は、宅地建物取引士が説明し、記名し、説明のときは宅地建物取引士証を示します(法35条1項・4項・5項)。そのうえで、相手が宅地建物取引業者なら35条の説明の義務がなくなり、電磁的方法で提供するなら記名が宅地建物取引士の明示に置き換わります。以下では、こうした「誰が・誰に・何を」の組み合わせを、表の行ごとに確かめていきます。

このページは、35条書面と37条書面の違いにある手続きの比較表のうち、交付・説明の相手方、宅地建物取引士の説明・記名・宅地建物取引士証、業者間の特例、電磁的方法の行を掘り下げるものです。

本記事は2026年9月時点で施行されている宅地建物取引業法および同法施行規則にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。


「出題」は、昭和63年〜令和7年の本試験の過去問で、年度と問番号を確かめたものだけを載せています。「直近10年」は平成28年〜令和7年の本試験で、その行の論点が選択肢に出た回数です(令和2年・3年は10月と12月を別に数えます)。「問われ方」は、過去問で誤りの選択肢として出た形です。正しい選択肢としてだけ出たものは「(正しい選択肢として出題)」としています。「条文」の欄の「法」は宅地建物取引業法、「令」は同法施行令、「規則」は同法施行規則です。欄の最後のリンクは、35条書面と37条書面の違いのページの表1の、同じ項目の行へ戻ります。


交付・説明の相手方(誰に渡し、誰に説明するか)

35条書面は、取得し、又は借りようとしている者に向けた書面で、37条書面は、契約の当事者に向けた書面です。この原則は表1の注記のとおりで、ここでは、この違いから結論が分かれる場面に絞って見ていきます。

なお、相手方の承諾や、相手方が内容を知っていることを理由に、35条書面の説明・交付や37条書面の交付を省くことはできません(表1の7行目)。


表1 交付・説明の相手方(取引の態様ごと)
項目 35条書面 37条書面 条文
売買・交換宅地建物取引業者が自ら売主・交換の当事者となるとき出題:令和5年 問33・令和4年 問35 ほか3件直近10年:3回問われ方:媒介を依頼した売主業者は説明の義務を負わない、とする 相手方(買主)に交付して説明する。交換では、相手方が取得する物件についてだけ説明する 契約の相手方に交付する 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
売買・交換宅地建物取引業者が自ら買主となるとき出題:令和6年 問44・令和5年 問33 ほか6件直近10年:6回問われ方:自ら買主の業者に説明の義務がある、とする/自ら買主の業者は売主に37条書面を交付しなくてよい、とする 説明の相手方がいない(売主は取得しようとする者ではない) 売主(契約の相手方)に交付する 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
売買・交換売買・交換の代理をしたとき出題:令和3年10月 問41・平成29年 問38 ほか3件直近10年:2回問われ方:代理の37条書面を相手方にだけ交付すればよい、とする/代理で取得する依頼者への説明を不要とする 契約の相手方と代理を依頼した者のうち、取得しようとする者 契約の相手方と代理を依頼した者の両方 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
売買・交換売買・交換の媒介をしたとき出題:令和5年 問42・令和4年 問28 ほか9件直近10年:5回問われ方:35条書面の相手方に売主を含める/媒介の37条書面を一方の当事者にだけ交付する 各当事者のうち、取得しようとする者(売買は買主、交換は双方) 契約の各当事者(売買なら売主と買主の両方) 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
貸借貸借の代理・媒介をしたとき出題:令和2年10月 問33・平成28年 問42 ほか2件直近10年:2回問われ方:貸借の代理の37条書面を相手方にだけ交付すればよい、とする/媒介業者は貸主に37条書面を交付しなくてよい、とする 借りようとする者(借主)。貸主には説明しない 代理は契約の相手方と代理を依頼した者、媒介は契約の各当事者(貸主と借主) 法35条1項
法37条2項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
共通複数の宅地建物取引業者が関与するとき出題:令和7年 問30・令和4年 問32 ほか11件直近10年:7回問われ方:ほかの業者の宅地建物取引士の記名で、自社の記名を省ける、とする/媒介を依頼した売主業者は説明の義務を負わない、とする 関与する業者のそれぞれが説明の義務を負い、書面にはそれぞれの業者の宅地建物取引士が記名する(説明は一方の業者の宅地建物取引士が代表してできる) 関与する業者のそれぞれが交付の義務を負い、それぞれの業者が自分の宅地建物取引士に記名させる(ほかの業者の記名では足りない) 法35条1項
法35条5項
法37条1項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)
共通相手方の承諾があるとき・内容を知っているとき出題:令和6年 問44・平成26年 問36 ほか3件直近10年:1回問われ方:相手方が内容を知っていれば説明を省ける、とする/相手方の承諾があれば37条書面の交付を省ける、とする 説明も交付も省略できない 交付を省略できない 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP02 交付・説明の相手方)

35条書面の相手方は、取得し、又は借りようとしている者です。37条書面の相手方は、契約の当事者です

自ら買主になるとき・交換のとき

宅地建物取引業者が自ら買主になるときは、35条書面の説明の相手方が存在しません。売主は、取得しようとする者ではないからです。一方で37条書面は、契約の相手方である売主に交付します(表1の2行目)。「自ら買主の業者に説明の義務がある」「自ら買主の業者は売主に37条書面を交付しなくてよい」は、どちらも過去問で誤りの選択肢として出た形です。

交換では、当事者の双方が物件を取得します。そのため、自ら交換の当事者となる業者は、相手方が取得する物件についてだけ説明します(1行目)。交換の媒介をしたときは、双方が35条書面の相手方になります(4行目)。

複数の宅地建物取引業者が関与するとき

売主側と買主側にそれぞれ業者が関与するなど、1つの取引に複数の業者が関与するときは、関与する業者のそれぞれが説明と交付の義務を負います(表1の6行目)。35条の説明は、一方の業者の宅地建物取引士が代表してできますが、書面にはそれぞれの業者の宅地建物取引士が記名します。37条書面も、それぞれの業者が自分の宅地建物取引士に記名させます。ほかの業者の記名では足りません。

代表してできるのは35条の説明で、記名は代表できません。記名まで一方の業者だけで足りる、と広げて読まないようにしましょう。「ほかの業者の宅地建物取引士の記名で、自社の記名を省ける」は、表1の問われ方にある誤りの形です。


宅地建物取引士がすること(説明・記名・宅地建物取引士証)

35条書面は、宅地建物取引業者が宅地建物取引士に交付と説明をさせます(法35条1項)。書面への記名と、説明のときの宅地建物取引士証の提示は、宅地建物取引士自身の義務です(法35条4項・5項)。37条書面では、業者が宅地建物取引士に記名させます(法37条3項)。37条書面で宅地建物取引士が必ず関わるのは、この記名だけです。説明も記名も、専任の宅地建物取引士である必要はありません。


表2 宅地建物取引士がすること(説明・記名・宅地建物取引士証の提示)
項目 35条書面 37条書面 条文
説明説明をする者出題:令和7年 問33・令和4年 問40 ほか13件直近10年:6回問われ方:37条書面にも宅地建物取引士の説明が必要、とする/説明する宅地建物取引士を専任に限る/宅地建物取引士でない代表者でも説明できる、とする 宅地建物取引士(専任の宅地建物取引士でなくてよい) 説明の義務は無い 法35条1項
法35条3項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP04 宅地建物取引士による説明)
説明説明をする場所出題:令和2年10月 問41・平成27年 問29 ほか4件直近10年:1回問われ方:説明の場所を事務所に限る 定めは無い(宅地建物取引業者の事務所でなくてもよい) 交付する場所の定めも無い 法35条1項
法37条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP04 宅地建物取引士による説明)
説明テレビ会議等による説明出題:令和4年 問40・令和3年12月 問35 ほか1件直近10年:3回問われ方:テレビ会議等なら承諾を得て宅地建物取引士証の提示を省ける、とする/音声だけの電話でも対面と同じに扱う 国土交通省が示す要件(映像を見ながら双方向でやりとりできる・記名した書面をあらかじめ交付・説明の前に書面と映像・音声の状況を確認・宅地建物取引士証を画面で確認)を満たせば、対面と同じに扱われる。音声だけの電話では満たさない — 法35条1項35条書面と37条書面の違い(表1のP04 宅地建物取引士による説明)
記名書面に記名する者出題:令和7年 問27・令和6年 問26 ほか18件直近10年:7回問われ方:記名する宅地建物取引士を専任に限る/代表者など宅地建物取引士でない者の記名で代える/公正証書の契約なら37条書面の記名を省ける、とする 宅地建物取引士(専任でなくてよい) 宅地建物取引士(専任でなくてよい) 法35条5項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP05 宅地建物取引士の記名)
記名押印出題:令和5年 問28直近10年:1回問われ方:(正しい選択肢として出題) 不要(令和4年5月から記名だけ) 不要(令和4年5月から記名だけ) 法35条5項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP05 宅地建物取引士の記名)
記名説明する者と記名する者出題:令和元年 問34・平成23年 問34 ほか2件直近10年:1回問われ方:35条書面と37条書面の記名を同じ宅地建物取引士に限る 同じ宅地建物取引士でなくてよい 35条書面に記名した宅地建物取引士と同じでなくてよい 法35条1項
法35条5項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP05 宅地建物取引士の記名)
記名書面の作成と交付出題:令和4年 問44・令和4年 問28 ほか6件直近10年:4回問われ方:35条書面の作成を宅地建物取引士に限る 作成は宅地建物取引士でなくてよい。交付と説明は宅地建物取引士にさせる(相手方が業者のときは、交付も宅地建物取引士でなくてよい=表3) 作成も交付も宅地建物取引士でなくてよい(記名だけは宅地建物取引士) 法35条1項
法35条6項
法35条8項
法37条1項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP05 宅地建物取引士の記名)
記名宅地建物取引士証の交付を受けていない者・有効期間が満了した者出題:平成26年 問35・平成7年 問38直近10年の出題なし問われ方:宅地建物取引士証の有効期間が満了しても記名はできる、とする 説明も記名もできない(宅地建物取引士ではない) 記名できない 法2条4号
法35条1項
法35条5項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP05 宅地建物取引士の記名)
宅地建物取引士証説明のときの提示と、請求があったときの提示出題:令和5年 問42・令和4年 問32 ほか16件直近10年:11回問われ方:説明のときの提示を請求があったときに限る/前に提示していれば説明のときの提示は要らない、とする/37条書面の交付のときは請求されても提示しなくてよい、とする 説明のとき、請求が無くても提示する 37条に提示の定めは無い。取引の関係者から請求があれば提示する 法35条4項
法22条の435条書面と37条書面の違い(表1のP06 宅地建物取引士証の提示)
宅地建物取引士証提示しなかったとき出題:平成25年 問30直近10年の出題なし問われ方:提示しなかったときの制裁を罰金とする(正しくは過料) 宅地建物取引士は10万円以下の過料 — 法35条4項
法86条35条書面と37条書面の違い(表1のP06 宅地建物取引士証の提示)
宅地建物取引士証宅地建物取引士証を亡失したとき出題:令和2年10月 問41・平成22年 問30 ほか2件直近10年:1回問われ方:再交付の申請書の写しで宅地建物取引士証の提示に代えられる、とする 再交付を受けるまで説明できない(再交付の申請書の写しなどでは代えられない) — 法35条4項35条書面と37条書面の違い(表1のP06 宅地建物取引士証の提示)
宅地建物取引士証従業者証明書との使い分け出題:令和4年 問35・平成29年 問37 ほか3件直近10年:2回問われ方:宅地建物取引士証や従業者名簿で従業者証明書の提示に代えられる、とする 宅地建物取引士証と従業者証明書は互いに代えられない(説明のときに従業者証明書を示しても足りず、取引の関係者から従業者証明書を求められて宅地建物取引士証を示しても足りない) — 法35条4項
法48条1項
法48条2項35条書面と37条書面の違い(表1のP06 宅地建物取引士証の提示)

「専任」は、事務所ごとに置く専任の宅地建物取引士のことです

説明(誰が、どこで、どうやって)

35条の説明は、宅地建物取引士でない代表者がすることはできません(表2の1行目)。説明する場所の定めは無く、宅地建物取引業者の事務所でなくても説明できます。37条書面にも、交付する場所の定めはありません(2行目)。

テレビ会議等による説明は、国土交通省が示す考え方の要件を満たせば、対面と同じに扱われます(3行目)。要件は、映像を見ながら双方向でやりとりできる環境であること、宅地建物取引士が記名した重要事項説明書をあらかじめ交付しておくこと(電磁的方法による提供を含みます)、説明の前に、書面と映像・音声の状況を確かめること、宅地建物取引士証を示して画面で見えたことを確かめることです。映像が要件なので、音声だけの電話では要件を満たしません。「テレビ会議等なら承諾を得て宅地建物取引士証の提示を省ける」という形でも問われています。

記名(誰が記名し、押印は要るか)

記名するのは、35条書面も37条書面も宅地建物取引士です(法35条5項・37条3項)。宅地建物取引士でない代表者などの記名で代えることはできません(表2の4行目)。公正証書で契約するときも、37条書面の記名は省けません。押印は、令和4年5月から2つの書面とも不要になり、記名だけになりました(5行目)。

説明した者と記名する者、35条書面と37条書面に記名する者は、それぞれ別の宅地建物取引士でもよく(6行目)、書面の作成も宅地建物取引士でなくてかまいません。2つの書面で扱いが分かれるのは、交付です。37条書面は交付も宅地建物取引士でなくてよいのに対し、35条書面は交付と説明を宅地建物取引士にさせます。ただし、相手が宅地建物取引業者のときは、35条書面の交付も、宅地建物取引士にさせる必要がなくなります(7行目)。

宅地建物取引士証の交付を受けていない者や、有効期間が満了した者は、説明も記名もできません(8行目)。

宅地建物取引士証(35条書面は説明のとき、37条書面の場面では請求があったとき)

9行目は、表2の中でも出題の多い行です。35条書面の説明のときは、相手方から請求が無くても宅地建物取引士証を示さなければなりません(法35条4項)。37条には、宅地建物取引士証の提示の定めがありません。ただし宅地建物取引士には、取引の関係者から請求があったときに宅地建物取引士証を示す義務が別にあります(法22条の4)。37条書面を交付する場面でも、請求されれば示します。

説明のときに示さなかった宅地建物取引士は、10万円以下の過料の対象です(法86条、表2の10行目)。罰金ではありません。宅地建物取引士証を亡失したときは、再交付を受けるまで説明できず、再交付の申請書の写しなどでは代えられません(11行目)。宅地建物取引士証と従業者証明書は互いに代えられません。説明のときに従業者証明書を示しても、従業者証明書を求められて宅地建物取引士証を示しても、提示の義務を果たしたことにはなりません(12行目)。


相手が宅地建物取引業者のとき(業者間の特例)

相手が宅地建物取引業者のときに義務がなくなるのは、35条の説明と、説明のときの宅地建物取引士証の提示です。35条書面の交付も、宅地建物取引士にさせる必要はなくなります(表2の7行目)。一方で、35条書面の交付と記名、37条書面の交付・記名・記載事項は、相手が業者でもそのまま残ります。表3の「例外」と「原則どおり」の印は、この区別を行ごとに示したものです。


表3 相手が宅地建物取引業者のとき(業者間の特例)
項目 35条書面 37条書面 条文
場面特例が働く場面出題:令和2年10月 問44直近10年:1回問われ方:(正しい選択肢として出題) 説明を受ける側(取得し、又は借りようとする者)が宅地建物取引業者のとき。売主・貸主の側だけが業者のときは働かない。信託の受益権の売買(法35条3項)には特例が無い 特例は無い 法35条3項
法35条6項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
例外説明をすること出題:令和5年 問42・令和4年 問35 ほか3件直近10年:4回問われ方:業者が相手でも宅地建物取引士の説明が必要、とする/業者が相手なら35条書面の交付も省ける、とする 不要 もともと説明の義務は無い 法35条6項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
原則どおり書面を交付すること出題:令和7年 問29・令和5年 問42 ほか15件直近10年:9回問われ方:業者が相手なら35条書面・37条書面の交付を省ける、とする/業者の承諾があれば交付を省ける、とする 必要 必要 法35条6項
法37条1項
法37条2項
法78条2項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
原則どおり書面に記名すること出題:令和2年12月 問35・令和2年10月 問33 ほか3件直近10年:3回問われ方:業者が相手なら37条書面の記名を省ける、または宅地建物取引士でない者が記名できる、とする 必要 必要 法35条7項
法37条3項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
例外宅地建物取引士証を示すこと出題:令和2年12月 問38直近10年:1回問われ方:(正しい選択肢として出題) 不要(説明をしないので、説明のときの提示の義務も外れる。取引の関係者から請求があれば提示する) 37条に提示の定めは無い 法35条6項
法22条の435条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
原則どおり記載する事項出題:令和6年 問44・令和5年 問43 ほか8件直近10年:6回問われ方:業者間なら37条書面の記載事項を一部省略できる、とする 業者でない相手のときと同じ(省略できる事項は無い) 業者でない相手のときと同じ(移転登記の申請の時期なども省略できない) 法35条6項
法37条1項
法78条2項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)
原則どおり電磁的方法で提供すること 相手方である業者の承諾を得て、宅地建物取引業者が提供できる 業者でない相手のときと同じ(承諾を得て提供できる) 法35条9項
法37条4項
法37条5項35条書面と37条書面の違い(表1のP07 業者間取引の特例)

「例外」は業者間の特例で変わるもの、「原則どおり」は相手が宅地建物取引業者でも変わらないものです

特例が働くのは、説明を受ける側が業者のとき

特例が働くのは、説明を受ける側、つまり取得し、又は借りようとする者が宅地建物取引業者のときです(表3の1行目)。売主や貸主の側だけが業者で、買主や借主が業者でなければ、特例は働きません。条文は、法35条6項が、相手方等が業者のときに1項の「交付して説明をさせなければ」を「交付しなければ」と読み替え(「宅地建物取引士をして」の語も外れます)、4項(宅地建物取引士証の提示)と5項(記名)を適用しないこととしています。そのうえで、7項で、業者が宅地建物取引士に記名させることを改めて求めています。

もう1つ、信託の受益権の売買(法35条3項)には、業者間の特例がありません(1行目)。

交付・記名・記載事項の義務は、業者間でも残る

業者間でも、35条書面と37条書面の交付は必要です(表3の3行目)。記名も両方に必要で、35条書面の記名は法35条7項が、37条書面の記名は法37条3項が求めています(4行目)。37条には業者間の特例の規定が無く、宅地建物取引業者相互間の取引に適用しない規定を並べた法78条2項にも、37条は入っていません。そのため記載事項も、業者でない相手のときと同じで、移転登記の申請の時期なども省略できません。35条書面の記載事項にも、業者間だから省ける事項はありません(6行目)。

宅地建物取引士証の提示も外れます(法35条6項、5行目)。取引の関係者から請求があれば示す、という法22条の4の義務は残ります。

なお、媒介契約書(法34条の2)の規制が、依頼者が業者のときにどう扱われるかは別の論点です。宅建の媒介契約のページで扱います。

ここまでの宅地建物取引士の関与と業者間の特例は、基本の論点を集めた演習問題(53問)でも確かめられます。


電磁的方法で提供するとき

電磁的方法による提供は、書面の交付の代わりです。相手方の承諾を得て提供すれば、書面を交付したものとみなされます(法35条8項・9項、37条4項・5項)。このとき宅地建物取引士の記名は、書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されることに置き換わります(表4の5行目)。相手が宅地建物取引業者でなければ、35条の説明そのものはなくなりません(6行目)。


表4 電磁的方法で提供するとき
項目 35条書面 37条書面 条文
承諾承諾を得る前に示すこと出題:令和6年 問35直近10年:1回問われ方:承諾の前に示す電磁的方法の種類と内容を、宅地建物取引士に説明させる、とする 宅地建物取引業者が、あらかじめ、用いる電磁的方法の種類と内容(使う方法とファイルへの記録の方式)を示す(宅地建物取引士の説明は求められていない) 宅地建物取引業者が、あらかじめ、用いる電磁的方法の種類と内容(使う方法とファイルへの記録の方式)を示す(宅地建物取引士の説明は求められていない) 令3条の3第1項
令3条の3第3項
令3条の4第1項
令3条の4第3項
規則16条の4の10第1号・2号
規則16条の4の14第1号・2号35条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)
承諾承諾の方法出題:令和5年 問33・令和5年 問26直近10年:2回問われ方:口頭の依頼で承諾に代えられる、とする 書面か電磁的方法で得る(口頭の承諾では足りない) 書面か電磁的方法で得る(口頭の承諾では足りない) 令3条の3第1項
令3条の3第3項
令3条の4第1項
令3条の4第3項
規則16条の4の11第1項
規則16条の4の15第1項35条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)
承諾提供を受けない旨の申出出題:令和6年 問35直近10年:1回問われ方:一度承諾を得れば、受けない旨の申出があっても提供できる、とする 書面等で申出があれば、電磁的方法で提供してはならない(改めて承諾を得れば提供できる) 書面等で申出があれば、電磁的方法で提供してはならない(改めて承諾を得れば提供できる) 令3条の3第2項
令3条の3第3項
令3条の4第2項
令3条の4第3項35条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)
提供提供する方法の基準出題:令和5年 問26直近10年:1回問われ方:(正しい選択肢として出題) 相手方が出力して書面を作成できること、改変されていないか確認できる措置があること 相手方が出力して書面を作成できること、改変されていないか確認できる措置があること 規則16条の4の8第2項1号・2号
規則16条の4の9
規則16条の4の12第2項1号・2号
規則16条の4の1335条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)
提供宅地建物取引士の明示出題:令和6年 問35・令和5年 問26直近10年:2回問われ方:承諾を得るときに宅地建物取引士を知らせれば、提供のときの明示を省ける、とする 書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されること(記名に代わる措置) 書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されること(記名に代わる措置) 法35条8項
法37条4項
規則16条の4の8第2項4号
規則16条の4の9
規則16条の4の12第2項4号
規則16条の4の1335条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)
提供提供したときの扱い出題:令和6年 問35直近10年:1回問われ方:電磁的方法で提供した後に、書面も交付しなければならない、とする 書面を交付したものとみなされる(重ねて書面を交付しなくてよい)。ただし、宅地建物取引士の説明は必要 書面を交付したものとみなされる(重ねて書面を交付しなくてよい) 法35条8項
法35条9項
法37条4項
法37条5項35条書面と37条書面の違い(表1のP08 電磁的方法による提供)

電磁的方法による提供は、令和4年5月に施行された仕組みです

示してから承諾を得て、基準に合う方法で提供する

  1. 示す……宅地建物取引業者が、あらかじめ、用いる電磁的方法の種類と内容を示します。宅地建物取引士の説明は求められていません(表4の1行目)。
  2. 承諾を得る……承諾は書面か電磁的方法で得ます。口頭の承諾では足りません(2行目)。
  3. 基準に合う方法で提供する……相手方が出力して書面を作成できること、改変されていないか確認できる措置があること、書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されることなどが基準です(4行目・5行目)。
  4. 交付したものとみなされる……重ねて書面を交付する必要はありません(6行目)。

承諾を得たあとでも、相手方から書面等で、電磁的方法による提供を受けない旨の申出があれば、電磁的方法で提供してはなりません。改めて承諾を得れば、提供できます(3行目)。相手が宅地建物取引業者のときも、承諾を得て電磁的方法で提供できます(表3の7行目)。

承諾の場面の要件と提供の場面の要件を混同させる形に注意が必要です。「承諾を得るときに宅地建物取引士を知らせれば、提供のときの明示を省ける」は誤りです。明示は、提供する方法の基準の1つです(規則16条の4の8第2項4号・16条の4の12第2項4号)。


35条書面と37条書面の演習

このページで整理した「誰が・誰に・何をするか」を、選択肢の形で確かめてみましょう。

コアセット(35条・37条の基本) 全53問

35条書面と37条書面の基本の論点を集めたセットです。宅地建物取引士の関与と宅地建物取引士証、業者間の特例を問う問題も入っています。登録は不要です。

演習をはじめる


よくある質問

37条書面は、宅地建物取引士の記名押印が必要ですか?

記名は必要で、押印は要りません。37条書面には宅地建物取引士の記名が必要です(法37条3項)。押印は令和4年5月から不要になったので、「記名押印しなければならない」とする肢は誤りです。記名は、宅地建物取引士でない代表者などの記名では代えられず、公正証書で契約するときも省けません。複数の宅地建物取引業者が関与するときは、それぞれの業者が自分の宅地建物取引士に記名させ、ほかの業者の記名では足りません。押印が要らないことと、宅地建物取引士でない者の記名で代えられないことは、35条書面の記名(法35条5項。相手が業者のときは7項)も同じです。

37条書面を交付するときも、宅地建物取引士証を提示しなければなりませんか?

37条には、宅地建物取引士証の提示の定めがありません。35条書面の説明のときは請求が無くても提示しなければなりませんが(法35条4項)、37条書面の交付に同じ義務はありません。ただし、宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは宅地建物取引士証を提示しなければならないので(法22条の4)、37条書面を交付する場面でも、請求されれば提示します。「37条書面の交付のときは請求されても提示しなくてよい」とする肢は誤りです。

宅建業者同士の取引では、37条書面に記載しなくてよい事項がありますか?

ありません。37条には業者間の特例が無く、宅地建物取引業者相互間の取引に適用しない規定を並べた法78条2項にも37条は入っていません。そのため、相手方が宅地建物取引業者でも、記載事項は業者でない相手のときと同じで、移転登記の申請の時期なども省略できません。宅地建物取引士の記名も必要です(法37条3項)。

37条書面を電磁的方法で提供するとき、宅地建物取引士の記名はどうなりますか?

記名に代わって、書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されることが、提供する方法の基準になります(規則16条の4の12第2項4号)。35条書面も同じです(規則16条の4の8第2項4号)。電磁的方法で提供するには、あらかじめ用いる方法の種類と内容を示したうえで、相手方の承諾を書面か電磁的方法で得る必要があり、口頭の承諾では足りません(令3条の4第1項・3項)。承諾を得て提供すれば37条書面を交付したものとみなされ(法37条4項・5項)、重ねて書面を交付する必要はありません。


まとめ

最後に、このページの軸を確かめておきましょう。35条書面は取得し、又は借りようとしている者に、37条書面は契約の当事者に向けた書面です。宅地建物取引士が37条書面でするのは記名だけで、35条書面では説明・記名・宅地建物取引士証の提示までします。業者間で義務がなくなるのは35条の説明と提示で、交付と記名は残ります。電磁的方法では、記名が宅地建物取引士の明示に置き換わります。迷ったときは、その肢が「誰が」「誰に」「何を」のどこを変えているかを見てみてください。

手続きの一覧に戻るときは35条書面と37条書面の違いへ、事項ごとの要否は35条書面の記載事項一覧と37条書面の記載事項一覧へお進みください。賃貸(貸借)で書面の中身がどう変わるかは、35条・37条書面の賃貸(貸借)で整理しています。

宅地建物取引業法の科目の中で、ほかの論点とあわせて見渡したいときは、宅建業法のページからたどれます。