行政書士の記述式が書けない|設問の指示から始める書き方

行政書士試験の記述式が書けない、という悩みは1つではありません。何を書けばよいのか分からないのか、書けるけれども長さが合わないのか、択一なら選べるのに白紙になってしまうのか。この3つは、対策する方法がまったく違います。

そこでこのページでは、まず自分がどれに当たるかを分けます。そのうえで、平成21年度〜令和7年度の51問について、設問の最後の一文が何を書くよう指示しているかを1問ずつ読み、8つの型に分けて表にします。設問が何を求めているかが決まると、答案の1文字目も決まります。

主体・要件・効果という40字程度の型そのものは、どの解説にも書かれています。このページが足すのは、その3つのうちどれを書くよう設問が指示しているかという、本試験の設問文の側からの分類です。

設問の指示は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表している本試験の問題から抜いたものです。字数の扱いは令和7年度の問題冊子と令和8年度行政書士試験のご案内によります(いずれも2026年9月時点)。

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行政書士 記述式の数字と一覧

設問の最後の一文を型に分けた表を含め、記述式の表と数値を1つの資料にまとめたものです。表と数値だけで、解説は入れていません。

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「書けない」を3つに分ける

「書けない」理由のタイプが異なります。次の3つのうち、自分がどれに近いかを決めてから読み進めてみましょう。

A 何を書けばよいか分からない
問題文を読み終えても手が動かないタイプです。設問が何を求めているかを読み取る作業でつまずいています。次の節の表Aと手順が、そのまま対処になります。
B 長さが合わない
書けるけれども枠を越える、あるいは半分で終わってしまうタイプです。何を残して何を削るかが決まっていません。字数の節と、削らない言葉の節で扱います。
C 知識はあるのに言葉が出ない
択一なら選べるのに、白紙になるタイプです。知識の不足とは別の問題が起きています。

Cのタイプで見直す価値があるのは、日々の演習の形です。並んだ選択肢から正しいものを選ぶ作業と、何も見ずに答えを思い浮かべて書く作業は、別の作業です。記述式が求めるのは後者ですから、ふだんの演習がどちらの形に偏っているかを見直してみる価値があります。演習の回し方は、記述式の練習のページで扱っています。


設問の最後の一文が、何を書くよう指示しているか

記述式の設問は、事案の説明が続いたあとに、「何を書きなさい」という一文で書く内容が指定されます。答案に何を並べるかは、そこにそのまま書かれています。平成21年度〜令和7年度の51問について、この一文だけを1問ずつ読んで分類したものが表Aです。


表A 設問が何を書くよう指示しているか
指示の型 問数 科目の内訳 出た年度・問 設問の実例(最初) 設問の実例(直近)
被告 6 行政法6問 平成27年 問44・平成30年 問44・令和2年 問44・令和4年 問44・令和6年 問44・令和7年 問44 平成27年 問44:裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こうした裁決取消訴訟においては、どのような主張が許され、こうした原則を何と呼ぶか 令和7年 問44:主張しようとする瑕疵がどのようなものであり、そのため、Xは、誰を被告としてどのような抗告訴訟を提起すべきか
相手方 5 民法3問/行政法2問 平成26年 問45・平成27年 問46・平成30年 問45・令和3年 問44・令和5年 問44 平成26年 問45:Aのほかの債権者Xは、自己の債権を保全するために、どのような権利に基づき、誰を相手として、どのような対応をとればよいか 令和5年 問44:誰に対してどのような手段をとることが有効適切か(仮の救済手段も含む)
訴訟類型・手段 10 行政法7問/民法3問 平成27年 問46・平成30年 問44・平成30年 問45・令和2年 問44・令和3年 問44・令和4年 問44・令和5年 問44・令和5年 問45・令和6年 問44・令和7年 問44 平成27年 問46:Cが自分の子でないことを確認するため、Aは誰を相手として、いつまでに、どのような手続をとるべきか 令和7年 問44:主張しようとする瑕疵がどのようなものであり、そのため、Xは、誰を被告としてどのような抗告訴訟を提起すべきか
請求の根拠と内容 13 民法13問 平成21年 問45・平成22年 問45・平成23年 問46・平成24年 問46・平成25年 問45・平成26年 問45・平成28年 問45・平成30年 問46・令和4年 問46・令和5年 問46・令和6年 問45・令和6年 問46・令和7年 問46 平成21年 問45:Xは、Yに対して、どのような権利について、どのような契約に基づき、どのような請求をすることができるか 令和7年 問46:どのような法的根拠に基づき消火活動を継続しなければならないか。また、その費用をどのような法的性質のものとしてBに償還請求できるか
名称 7 行政法6問/民法1問 平成22年 問44・平成23年 問44・平成24年 問44・平成26年 問44・平成27年 問44・平成28年 問44・令和元年 問46 平成22年 問44:裁判所による判決は、どのような内容の主文となり、また、このような判決は何と呼ばれるか 令和元年 問46:このようなA・B間の契約を何といい、Cの代金支払請求権が発生するためには誰が誰に対してどのようなことをする必要があるか
要件 14 民法13問/行政法1問 平成23年 問45・平成24年 問45・平成25年 問45・平成25年 問46・平成26年 問46・平成27年 問45・平成28年 問45・平成29年 問46・令和元年 問45・令和元年 問46・令和3年 問45・令和4年 問44・令和5年 問45・令和7年 問45 平成23年 問45:抵当権が消滅する場合を二つ 令和7年 問45:判例は、Cにおいて、どのような場合に上記の類推適用を認めているかについて
効果・結論 15 民法10問/行政法5問 平成21年 問44・平成21年 問46・平成22年 問44・平成22年 問46・平成25年 問44・平成25年 問46・平成28年 問46・平成29年 問44・平成29年 問45・令和元年 問44・令和2年 問45・令和2年 問46・令和3年 問46・令和4年 問45・令和7年 問46 平成21年 問44:行政事件訴訟法によれば、外務大臣は、判決のどのような効力により、どのような対応を義務づけられるか 令和7年 問46:どのような法的根拠に基づき消火活動を継続しなければならないか。また、その費用をどのような法的性質のものとしてBに償還請求できるか
理由 3 民法2問/行政法1問 平成29年 問44・平成30年 問46・令和4年 問45 平成29年 問44:最高裁判所の判例によれば、こうした訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由で、どのような判決がなされるべきこととなるか 令和4年 問45:Aは、Cの履行請求を拒みたいと考えているが、認められるか(その許否につき理由を付して)

型は、被告、相手方、訴訟類型・手段、請求の根拠と内容、名称、要件、効果・結論、理由の8つに分かれました。表Aには型ごとに、問数、科目の内訳、出た年度と問、そして設問の実例が、最初に出た年と直近の年の2つ入っています。実例は問題文からの抜き書きです。

1つの設問が2つ以上の型に該当することがあります。たとえば令和7年度の問44は「誰を被告として」と「どのような抗告訴訟を提起すべきか」の両方を指示していますから、被告と訴訟類型・手段の2つに数えています。表Aの問数を合計しても51にはなりません。

この8つを先に見ておく意味は、次の1点にあります。設問が指示していない要素を長く書くと、その分だけ、指示された要素に使える字数が減るということです。「誰を被告として、どのような訴訟を提起すべきか」と問われている設問に理由を書き込めば、書くべき2つが枠に入りません。逆に「どのような理由で、どのような判決がなされるべきか」と問われていれば、主体だけを書いても答えになりません。

記述式を「判例の理由付けを問うもの」と「条文の知識を問うもの」の2つに分ける整理も、よく見かけます。表Aはその軸とは別に、設問が答案に何を並べさせているかで分けたものです。どちらが正しいということではなく、見る角度が違います。

表Aの実例で気になった問が、どの条文のどの論点だったのかは、記述式の論点別のページの一覧で確かめられます。

平成29年度を境に、指示のされ方が変わっている

表Aを年度の順に読み直すと、行政法の17問に、はっきりした切り替わりがあります。

  • 平成29年度より前は、「何と呼ばれるか」と学術上の名称を書かせる型が6回ありました(平成22年・平成23年・平成24年・平成26年・平成27年・平成28年)。事情判決、即時強制、形式的当事者訴訟、指定管理者、原処分主義、行政上の秩序罰といった語です。
  • 平成29年度以降、この名称型は0回です。代わりに、「誰を被告として(誰に対して)」と「どの訴訟・どの手段か」を組にして書かせる型が7回になりました(平成30年 問44・令和2年 問44・令和3年 問44・令和4年 問44・令和5年 問44・令和6年 問44・令和7年 問44)。

この切り替わりは、行政法の17問に限って数えたものです。民法を含めると、令和元年度に「第三者のためにする契約を何といい」と名称を書かせた問が1問あり、0回という数え方は成り立ちません。科目を分けたうえでの数です。

そして、これは過去の設問を数えた事実です。次の本試験の設問がどちらの型になるかを示すものではありません。読み取れるのは、名称を1語書けば終わる設問が減り、2つ以上の要素を組にして書かせる設問が続いている、というところまでです。

型が決まったあとの手順

指示の型が読み取れれば、書き出すまでの手順はどの問でも同じです。

  1. 設問の最後の一文だけを先に読む(指示はそこにあります)
  2. 指示された要素を、字数を気にせず日本語の箇条書きにする
  3. 事案から、その要素に当たる固有名詞(誰が、どの処分か、どの物か)を書き出す
  4. 書き出した言葉を、条文の文言に置き換える
  5. つなげて、40字程度の枠に収める

3と4を分けているのは、事案の言葉のままつなげると枠に収まらないからです。「Xが所有している甲土地の上に建てられている建物」は、条文の言葉に置き換えれば短くなります。字数を合わせる作業は、この置き換えのあとに来ます。先に字数から入ると、条文の文言のほうが削られてしまいます。


40字程度という枠について、公表されていること

字数について公表されているのは2つです。1つは、令和8年度行政書士試験のご案内の「記述式は、40字程度で記述するものを出題します」という一文。もう1つは、本試験の問題冊子の、記述式が始まる位置に置かれている一文です。

解答は、必ず答案用紙裏面の解答欄(マス目)に記述すること。なお、字数には、句読点も含む。

一般財団法人 行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験問題」問題44〜問題46の冒頭

読点と句点も、マス目を1つずつ使います。「AはBに対し、〜を請求することができる。」という形の答案なら、読点と句点で2字です。枠に収めたつもりが、句読点を入れると越えることがあります。数えるときは最初から句読点ごと数えておきましょう。

一方で、解答欄のマス目が何字分あるのか、何字を超えると採点の対象から外れるのかは、公表されていません。令和8年度行政書士試験のご案内にも、試験概要にも、よくある質問にも、令和7年度行政書士試験合否判定基準にも書かれていません。「おおむね35字から45字」「45字を超えると採点対象外」といった説明を見かけますが、その出どころは公表資料ではありません。公表されているのは、上の2つの一文までです。

枠に入れる要素は、多くの場合3つです。

主体
誰が、誰に対してか。「AはBに対し」の部分です。設問が被告や相手方を指示していれば、ここが答案の中心になります。
要件・理由
どういう場合に、どういう理由でそうなるのか。「〜であるから」「〜を理由として」の部分です。言い換えで短くできる余地がいちばん大きい要素です。
効果
何ができるのか、どうなるのか。「〜を請求することができる」「〜の訴えを提起すべきである」の部分です。ここが無いと、答案が要件の説明で終わります。

この3分割そのものは、どの解説にも出てきます。差がつくのは、設問がこの3つのうちどれを指示しているかを読み分けるところです。表Aの型は、そのまま「3つのうちどれを厚く書くか」の目印になります。


削らない言葉と、削ってよい言葉

枠に収まらないときに、どこを削るかは決まっています。

削らない言葉
条文の文言、制度や訴訟類型の名称、主体(誰が・誰に対して)、期間や数字。置き換えると答案の中身そのものが変わります。
削ってよい言葉
接続詞(そして・したがって)、修飾語(きわめて・特に)、事案の説明の言い換え、「〜という」「〜のような」。

「〜を求める」を「〜を請求する」に置き換えるような短縮は、どの解説にも書かれています。押さえておきたいのは、条文の文言を短縮の対象にしない、という点です。

たとえば、非申請型の義務付けの訴えは、「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があり、かつその損害を避けるため他に適当な方法がないときに限って提起できます(行政事件訴訟法37条の2第1項)。この「重大な損害」を「大きな損害」や「ひどい損害」に言い換えると、条文の要件を書いたことになりません。差止めの訴えの要件にも、同じ文言が使われています(同法37条の4第1項)。

行政手続法4条1項の「固有の資格」も同じです。国の機関や地方公共団体に対する処分が行政手続法の適用から外れるのは、これらの機関や団体が「その固有の資格において」その処分の名あて人となる場合に限られます。この言葉を「特別な立場」と書き換えると、条文が区切っている範囲から外れてしまいます。号ごとの切り分けは、行政手続法の適用除外のページで扱っています。

条文の文言を残すと、字数は必ず足りなくなります。その分は、事案の言葉を短く言い換えて作ります。「Xが所有する甲土地の上に建てられている建物」は、設問がその区別を求めていなければ「建物」で足ります。事案の言葉は削れる、条文の言葉は削れない。この順番だけ決めておけば、削る場所で迷わなくなります。


手が止まったときに、最低限どこまで書くか

本試験では、記述式に使える時間に限りがあります。答えが固まらないまま時間が来たときに何を書くかは、先に決めておきましょう。

  • 主体と効果だけでも書く。要件が抜けても、文としては成り立ちます。
  • 訴訟類型や制度の名称だけでも書く。表Aのとおり、名称そのものを指示している設問もあります。

記述式の採点基準は公表されていません。「この語を書けば何点もらえる」という形の説明は、どこから出ていても推測です。確実に言えるのは、白紙の答案には得点がつきようがないという点に限られます。

記述式を除いた得点で自分がどこにいるのか、そこから記述式で何点が必要になるのかは、記述式の全体像のページで逆算できます。記述式が採点されるのかという疑問も、そちらで扱っています。


よくある質問

行政書士試験の記述式が書けないのは、知識不足のせいですか?

知識が足りていない場合もありますが、それだけではありません。このページでは「書けない」を3つに分けています。何を書けばよいか分からない型、長さが合わない型、択一なら選べるのに言葉が出ない型です。1つめは設問の最後の一文の読み取りで、2つめは削る言葉の決め方で、3つめは演習の形の見直しで手が打てます。知識の面では、令和元年以降の46件でみると、記述式の論点の72パーセントは、その年より前に同じ条文で択一に出ていました。択一の学習と切り離された知識が問われるわけではありません。

行政書士試験の記述式は何文字ですか?

公表されているのは、「記述式は、40字程度で記述するものを出題します」(令和8年度行政書士試験のご案内)と、「字数には、句読点も含む」(本試験の問題冊子)の2つです。解答欄はマス目で、読点も句点も1字として数えます。一方で、マス目が何字分あるのか、何字を超えると採点の対象から外れるのかは公表されていません。

行政書士試験の記述式のコツは何ですか?

設問の最後の一文だけを先に読むことです。事案から読み始めると、何を書くかが決まらないまま字数だけが気になります。最後の一文に「誰を被告として」「どのような理由で」「何と呼ばれるか」のどれが書かれているかを見て、指示された要素を箇条書きにしてから、条文の文言に置き換えていきます。

記述式のキーワードは、どう覚えればよいですか?

条文の文言を、言い換えずにその形で覚えることです。「重大な損害」「固有の資格」のような言葉は、意味の近い日常語に置き換えると、条文が区切っている範囲から外れます。覚えるときに択一の学習と切り離さないことも助けになります。どの条文がいつ択一で問われていたかは、記述式の論点別のページで1問1行にして並べていますので、記述式の論点をそのまま択一の復習の入口にできます。


まとめ

「書けない」は3つに分かれます。何を書くか分からないのか、長さが合わないのか、択一なら選べるのに言葉が出ないのか。最初の型に当たるなら、設問の最後の一文から入るのがいちばん速い道です。

平成21年度〜令和7年度の51問の設問は、被告、相手方、訴訟類型・手段、請求の根拠と内容、名称、要件、効果・結論、理由の8つに分かれました。行政法の17問では、平成29年度を境に名称を書かせる型が止まり、被告と訴訟類型を組にして書かせる型が続いています。いずれも過去を数えた事実で、次の出題を示すものではありません。

字数について公表されているのは、40字程度で記述することと、句読点も字数に含むことまでです。マス目の字数も、採点基準も公表されていません。だからこそ、条文の文言は削らず、事案の言い換えから削るという順番を決めておくことが大切です。

書き方の枠が決まったら、次は演習の回し方です。思い出して書く練習の組み方と、自分の答案を確かめる基準は、記述式の練習のページにまとめています。

記述式の配点と、記述抜き何点で足りるかの逆算は、記述式の全体像のページにあります。

どの年度のどの問が、どの条文のどの論点だったのかは、記述式の論点別のページで確かめられます。