深夜0時を過ぎてお酒を出す営業の手続きは、「深夜営業の許可」と呼ばれることが多いのですが、法律上は許可ではなく届出です。一般に「深夜酒類提供飲食店営業開始届」と呼ばれているものがこれに当たります。もっとも、届出は審査を経て「営業してよい」と判断してもらう手続きではありません。このページでは、届出の前に確かめること、届出の対象になる店、届出のあとに続く義務を順に整理します。許可の手続きと比べた全体の流れは、許可・届出の手続きの全体像で整理しています。
この記事の要点
- 手続きは許可ではなく届出です。営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する公安委員会に届出書を提出します(法33条1項)。
- 届出書は、深夜に営業を始めようとする日の10日前までに提出しなければなりません(規則103条3項)。
- 届出書は出せても、その場所では深夜に営業できないことがあります。都道府県は、条例で地域を定めて、深夜に酒類提供飲食店営業を営むことを禁止できます(法33条4項。政令の基準は令27条1号)。どこがその地域かは、都道府県の条例によって異なります。
この記事では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を「法」、同法施行令を「令」、同法施行規則を「規則」、同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令を「内閣府令」と略します。
まず、届出の前に物件を確かめる
届出の書類をそろえるより先に、その物件で深夜に営業できるかを確かめます。
条例で「深夜に営業してはいけない地域」が定められていることがある
都道府県は、政令で定める基準に従って条例で地域を定め、その地域で深夜に酒類提供飲食店営業を営むことを禁止できます(法33条4項)。政令は、この禁止地域の指定を住居集合地域内の地域について行うこととしています(令27条1号)。住居集合地域の意味と、条例の調べ方は営業できない地域の調べ方で扱っています。
実際にどこが禁止地域になっているかは、都道府県の条例で異なります。
この点を先に確かめる理由は、罰則の重さにも表れています。
- 条例で禁止された地域で深夜に営業した場合:1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその併科(法51条1項10号)
- 届出書を提出しなかった場合:50万円以下の罰金(法55条6号)
届出を出さないことよりも、営業できない場所で深夜に営業することのほうに、重い罰則が定められています。
距離の制限と、すでに営業している店の扱い
深夜の酒類提供の禁止地域について、政令(令27条)には、学校などの保全対象施設(いわゆる「保護対象施設」)からの距離の定めは置かれていません。ただ、禁止地域の具体的な範囲は都道府県の条例で定められ、地域によって異なります。条例の定めに候補地が当てはまるかは、所轄の警察署の判断になります。距離の定めがないことだけでは、候補地で深夜に営業できるかは判断できないため、候補地のまわりに学校や病院などがある場合は、その場所が条例の禁止地域に含まれないかもあわせて確認しておく必要があります。距離の考え方は保全対象施設と距離制限の調べ方、要件としての整理は届出の要件にあります。
また、条例の施行や適用の際にすでに届出をして営業している店には、その条例を適用しない定めがありますが(法33条5項)、改装や増築などでこの扱いから外れることがあります(深夜における酒類提供飲食店営業の解説)。
物件を決める前の確認事項
深夜の届出に関わるところで、物件の段階で押さえておくのは次の2点です。
- 所在地が、都道府県の条例で深夜の酒類提供飲食店営業を禁止している地域に含まれていないか(上の節と営業できない地域の調べ方)
- 建築基準法の用途地域や消防の扱いは、警察とは別の窓口の判断になること(物件選びと構造設備の基準)
候補地が禁止地域に含まれるかどうかと、既存の店で予定している工事が法33条5項の扱いに影響するかは、事前に確認しておく必要があります。
契約前に確認してください。契約後に判明すると、物件を変えるしかなくなることがあります。
そもそも自分の店が届出の対象か
主食を出す店は、対象から外れるか
法律の用語は「酒類提供飲食店営業」で(法2条13項4号かっこ書)、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供する店は、この定義から除かれます。もっとも、この除外は届出の対象から外れる方向の定めで、当てはめを誤ったときに問われるのは無届の営業です(法55条6号)。所轄の警察署がより厳しく見ていることもあるので、届出をしないと決める前に、時間帯ごとに実際に何を出しているかを深夜における酒類提供飲食店営業の解説の要件に当てはめて確認しておく必要があります。業態ごとの考え方はバー・居酒屋の深夜営業に必要な届出にあります。
届出で営業できるのは、接待も遊興もしない店
- 接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業は風俗営業(法2条1項1号)に当たり、許可が必要です(法3条1項)。接待の判断は「接待」の定義と判断基準、手続きは風営法の許可(1号営業)の取り方にあります。
- 深夜(午前0時から午前6時まで)にも客に遊興をさせ、かつ、酒類を提供して飲食をさせる営業は特定遊興飲食店営業(法2条11項)に当たり、許可が必要です(法31条の22)。
許可と届出の区分の全体は、風営法の全体像で1枚の表にしています。
これは届出で済む範囲を示したもので、自分の店がその範囲に収まるかどうかは別に確かめる必要があります。範囲を外れている場合は許可が必要で、届出書を提出していても無許可の営業になります(法49条1号/法50条4号)。接客のしかたと、店内で行う催しやカラオケの扱いは、営業を始める前に確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
届出をすると、何が続くか
届出の手続きの主な点を表にまとめました。
| 項目 | 深夜における酒類提供飲食店営業(届出) |
|---|---|
| 手続の種別 | 届出(営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届出書を提出)条文で確定根拠:法33条1項届出書は、営業所の所在地の所轄警察署長を経由して一通を提出します(規則1条1項) |
| 期限 | 深夜に営業を開始しようとする日の10日前までに届出書を提出する条文で確定根拠:規則103条3項日数が条文に明記されています。法33条1項自体には期日の定めがなく、日数は規則に置かれています |
| 必要な図面 | 営業所の平面図。あわせて営業の方法を記載した書類、個人は住民票の写し、法人は定款・登記事項証明書・役員に係る住民票の写し条文で確定根拠:内閣府令24条1号イ・ロ・ハ・ニ(法33条3項の添付書類)/規則103条1項・2項(様式)周囲の略図は内閣府令24条の添付書類に入っていませんが、所轄の警察署が求めることがあります。求積図・照明配置図なども同じです |
| 手数料 | 届出のため、国の法令に手数料の定めはない地域・運用で異なる根拠:法33条1項(手数料の定めなし)国の法令に手数料の定めはありませんが、住民票の写し・登記事項証明書などの取得費や、図面の作成にかかる費用は別にかかります。都道府県の扱いは所轄の警察署で確かめておくと安心です |
| 標準処理期間 | 届出であり申請に対する処分ではないため、標準処理期間の対象にならない地域・運用で異なる根拠:行政手続法6条(申請に対する処分が対象)届出書を提出したときの実務(補正の求め方や控えの扱い)は、所轄の警察署によって異なります |
| 変更の手続 | 営業を廃止したとき、または届出事項(氏名・名称・住所・代表者、営業所の名称、営業所の構造及び設備の概要)に変更があったときは届出。期間は廃止・変更の日から10日以内(法人の名称・住所・代表者は20日以内)条文で確定根拠:法33条2項/規則104条において読み替えて準用する規則42条2項/内閣府令22条(変更の届出を要する営業所の構造・設備の事項。3号=内部を仕切るための設備、4号=照明設備、5号=音響設備又は防音設備)警察庁の解釈運用基準(第29中2)では、照明設備の変更に同性能の電球等の更新は含まず、音響設備の変更に音に影響のない同性能の機器の変更は含まないとされています。当てはまるかは所轄の警察署に確認してください |
| 罰則 | 届出書を提出しない・虚偽の届出=50万円以下の罰金。変更・廃止の届出をしない・虚偽=30万円以下の罰金。条例で禁止された地域で深夜に営業=1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又は併科条文で確定根拠:法55条6号/法56条3号/法51条1項10号 |
法令基準日:2026-09-18/根拠の略号 法=風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、令=同法施行令、規則=同法施行規則、内閣府令=同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令
この表の「地域・運用で異なる」の項目は、都道府県の条例や所轄の警察署の運用によって取扱いが異なります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
詳しくは風営法の全体像のページで解説しています。
届出は、届出書を提出して終わりではありません。深夜に営業している間は、次の義務を守らなければなりません。なお、1から3は、届出をしたかどうか、酒類を出すかどうかにかかわらず、深夜に飲食店営業を営む店(3は飲食店営業を営む店。規則102条の営業を除く)に適用されます。
- 営業所の構造及び設備の維持:深夜において飲食店営業を営む者は、営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければなりません(法32条1項。基準は規則99条)。基準の中身と「維持」の意味は届出の要件にあります。
- 照度と騒音・振動:照度と騒音・振動の規制(法14条・法15条)が、深夜の営業に準用されます(法32条2項)。照度の数値は20ルクスで(規則101条)、「以下としてその深夜における営業を営んではならない」という定め方です。測り方は照度の基準で扱っています。騒音・振動の数値は、政令の範囲内で都道府県の条例が定めます(令26条1項・2項)。
- 18歳未満の者の従業・立入りの制限:午後10時から翌日の午前6時までの時間に、18歳未満の者を客に接する業務に従事させることや、客として立ち入らせることが制限されます(法32条3項において読み替えて準用する法22条1項4号・5号)。詳しくは18歳未満の者の立入り・従業の制限にあります。
- 接客従業者に対する拘束的行為の規制:接客従業者に不相当に高額の債務を負わせることなどを禁じる法18条の2が、酒類提供飲食店営業にも準用されます(法33条6項)。準用から外れるのは、午前6時から午後10時までの時間においてのみ営む営業だけなので、午後10時から翌日の午前6時までの時間にも営業する店は規制の対象になります。
4の「午後10時までの営業」に当たるかどうかは、店の掲げる営業時間ではなく、実際に何時まで営業しているかという実態で判断されます。
開業後に起きる手続き ─ 変更の届出と廃止の届出
届出書を提出した者は、営業を廃止したとき、または届け出た事項(氏名又は名称・住所・法人の代表者の氏名、営業所の名称、営業所の構造及び設備の概要)に変更(軽微な変更を除く)があったときは、届出書を提出しなければなりません(法33条2項。営業所の所在地は含まれません)。
内閣府令22条1号から5号までに挙がる変更は「軽微な変更」に当たらないため、内装、照明(4号)、音響や防音(5号)を変更・改装する場合は、届出が必要になることがあります。期限と罰則は上の表の「変更の手続」「罰則」の行にあります。様式は必要書類と様式の書き方にまとめています。
どの変更が届出の対象になるかは、変更の内容で判断されます。変更する設備の種類と、変更前後の仕様(性能)を記録しておくと、確認がスムーズになります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
届出の流れと期限
届出書は、深夜に営業を始めようとする日の10日前までに提出しなければならないため(規則103条3項)、物件と内装の準備はこの日から逆算して進めることになります。届出から営業開始までの流れは届出の流れと期限で順に説明しています。
必要な書類と様式
届出書の様式は施行規則の別記様式第47号、添付書類は内閣府令24条1号イからニまでに定められています(上の表の「必要な図面」の行)。書類ごとの書き方は必要書類と様式の書き方にあります。
営業所の基準と、営業できない地域
客室の床面積、見通し、照度、18歳未満の者の制限などの要件は、届出の要件(営業所の基準・営業できない地域)にまとめています。
よくある質問
深夜営業の届出に、有効期間や更新はありますか。
届出に有効期間の定めはありません。もっとも、届け出た事項に変更があったときや営業を廃止したときは、改めて届出書を提出する義務があります(法33条2項。上の「開業後に起きる手続き」)。また、届出の前提になる飲食店営業許可には、5年を下らない有効期間などの条件が付けられることがあります(食品衛生法55条3項)。
届出に費用はかかりますか。
届出書の提出そのものについて、国の法令に手数料の定めはありません。手数料の扱いはこのページ前半の比較表(届出の手続き)の「手数料」の行、書類の取得や図面の作成にかかる費用は届出の流れと期限の「費用」にあります。
届出をしないで深夜に営業すると、どうなりますか。
法33条1項に違反して届出書を提出しなかった場合は、50万円以下の罰金です(法55条6号)。営業できない地域での営業には、さらに重い罰則が定められています(上の「まず、届出の前に物件を確かめる」)。期限は届出の流れと期限で解説しています。
届出をすると、許可証のようなものはもらえますか。
許可証は、風俗営業の許可をしたときに公安委員会が交付するもので(法5条2項。特定遊興飲食店営業は法31条の23において準用)、深夜の酒類提供の届出には、法令に許可証の交付の定めはありません。届出書は所轄警察署長を経由して公安委員会に提出します(法33条1項/規則1条1項)。窓口の扱いは届出の流れと期限の「提出先と窓口」にあります。
カラオケを置くと、届出だけでは足りなくなりますか。
カラオケの扱い方によっては「遊興」に当たり、酒類を出す店で深夜にも客に遊興をさせるなら、特定遊興飲食店営業の許可が必要です(法2条11項/法31条の22)。線引きは、店の側が客の歌にどう関わるかで判断されます。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
この記事の根拠
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)── e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(昭和59年政令第319号)── e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(昭和60年国家公安委員会規則第1号)── e-Gov法令検索
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(昭和60年総理府令第1号)── e-Gov法令検索
- 食品衛生法(昭和22年法律第233号)── e-Gov法令検索
- 警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」令和8年7月1日(令和7年10月20日付けの旧通達を廃止したもの)── 警察庁(PDF)