深夜営業の届出には、深夜に営業を始めようとする日の10日前までという期限があります。もっとも、この「10日前」だけを見て日程を組むと、手続きの順番を取り違えるおそれがあります。届出書を出す前に、物件が深夜に営業できる場所か、内装が基準に合うか、飲食店営業許可を受けられるかを確かめておく必要があるからです。このページでは、開業までの流れを時系列に並べ、期限の意味、提出先、費用を整理します。
この記事では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を「法」、同法施行規則を「規則」、同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令を「内閣府令」と略します。
この記事の要点
- 期限は、開店日ではなく、深夜において営業を開始しようとする日から数えて10日前までです(規則103条3項)。
- 届出書は、営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する公安委員会あてに作り、所轄警察署長を経由して提出します(法33条1項/規則1条1項)。
- 深夜に酒類を提供する営業を始める時点で、飲食店営業許可(食品衛生法55条1項)を受けている必要があります。物件が深夜に営業できる地域かどうかは、契約の前に確かめておくべき点です。
開業までの流れ ─ 届出書の提出は後半の手続きです
深夜に酒類を提供する店を開くまでの手続きを、時間の早い順に並べると次のとおりです。括弧の中は、その段階の中身がどこで決まるかを示しています。
- 物件を決める前:深夜に営業できる地域かを確かめる(都道府県の条例)。候補地が、条例で深夜の酒類提供飲食店営業を禁止している地域(法33条4項)に含まれていないかを確認します。調べ方は営業できない地域の調べ方で解説しています。用途地域による建物の用途の制限は建築基準法の扱いで、警察とは窓口が違います。
- 内装・図面を決める前:営業所の構造及び設備の基準を確かめる(規則)。客室の床面積、見通し、出入口の施錠、照度などの基準が、規則99条1号から6号までに定められています。各基準の詳しい解説は、次のページにあります。
- 基準の一覧:届出の要件
- 客室の基準:客室の床面積・見通し・区画の基準
- 照度の基準:照度の基準
- 面積の測り方:求積図と面積の計算
- 飲食店営業許可を受ける(食品衛生法。審査の日程は自治体によって異なります)。飲食店営業許可は、営業の施設が条例の基準に適合しているかどうかで判断されるため(食品衛生法55条2項)、内装工事の日程と重なります。風営法の「飲食店営業」がこの許可を受けて営むものとされていること(法2条13項4号かっこ書)は、深夜における酒類提供飲食店営業の解説で扱っています。
- 所轄の警察署に相談する(所轄の運用)。届出の前の相談を求めるかどうかや、届出前の図面の確認にどこまで応じるかは、警察署によって対応が異なります。
- 届出書を提出する(規則)。期限の数え方は、このページの「『10日前』の意味」で説明します。書類は必要書類と様式の書き方にまとめています。
- 深夜の営業を始める。営業中に守らなければならない基準と義務は届出の要件にあります。
- 開業後:変更や廃止があれば届け出る(法・規則)。届け出た事項の変更(軽微な変更などを除く)と営業の廃止には、届出書の提出が必要です(法33条2項)。このページの「届出をしたあとに続く手続き」で扱います。
1と2は、届出書の提出より前、さらに物件の契約や内装の発注よりも前に済ませる段階です。3の飲食店営業許可については、届出書を出す時点で許可が下りている必要があるか、許可証の写しの提示を求められるかも、あらかじめ確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
「10日前」の意味
期限を定めているのは規則です。法33条1項は届出書を提出する義務を定めていますが、日数は書いていません。規則103条3項は次のとおりです。
第一項の届出書は、深夜において当該酒類提供飲食店営業を開始しようとする日の十日前までに提出しなければならない。
数える起点は、深夜において営業を開始しようとする日です。夕方からの営業を先に始め、あとから午前0時以降の営業を加える店では、午前0時以降の営業を始める日から10日前を数えることになります。
書類の不備と期限
行政手続法37条は、届出書の記載事項に不備がなく、必要な書類が添付されているなど、法令に定められた形式上の要件に適合している届出について、提出先の機関の事務所に到達したときに届出の義務が履行されたものとしています。記載漏れや添付漏れがあって補正を求められた場合に、その届出と期限との関係をどう取り扱うかは、所轄の警察署の運用によって異なります。
日数の数え方(提出した日を日数に含めるか、土日祝日や年末年始をどう扱うか)も、風営法と施行規則には定められていません。補正が生じた場合でも深夜の営業を始める日に影響が出ないよう、余裕を持ったスケジュールで提出する必要があります。
標準処理期間がないことの意味
行政手続法6条の標準処理期間は、申請に対する処分についての定めです。深夜営業の届出は、行政手続法でいう申請ではなく届出なので(行政手続法2条3号・7号)、標準処理期間の対象になりません。
これを「審査がないから、10日たてば営業できる」と読むことはできません。これから深夜の営業を始める場合、条例で禁止された地域では届出をしても深夜に営業できず(法33条4項)、営業所の構造及び設備を基準に適合するように維持する義務(法32条1項)も、届出とは別に守らなければなりません。
届出書を出さなかった場合の罰則
法33条1項に違反して届出書を提出しなかった場合と、虚偽の記載のある届出書・添付書類を提出した場合は、50万円以下の罰金です(法55条6号)。営業できない地域で深夜に営業した場合には、これより重い罰則があります(法51条1項10号)。2つの罰則の関係は深夜営業の届出の全体像で整理しています。
書類の補正を求めるかどうかや、届出書の控えを渡すかどうかといった受付の実務は警察署によって異なるため、提出の日程とあわせて確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
提出先と窓口
届出書の提出先は、営業所ごとに、その営業所の所在地を管轄する公安委員会です(法33条1項)。提出は、営業所の所在地の所轄警察署長を経由して、1通の届出書で行わなければなりません(規則1条1項)。
営業所ごとの届出なので、店を2つ出す場合は、届出書も2通必要です。同じ公安委員会の管轄区域内ですでに届出をして営業している者が、別の店の届出をするときは、添付書類の一部を省ける定めがありますが(内閣府令24条1号かっこ書)、実際の取扱いは提出先によって異なることがあります。どの書類の添付を省略できるか、そのときの注意点は必要書類と様式の書き方で説明しています。
担当の部署、受付の曜日や時間、予約の要否は、提出する前に確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
費用
届出書の提出そのものについて、法33条をはじめ国の法令に手数料の定めはありません。ただし、届出を出すまでに、次のような費用が生じます。
- 住民票の写しや登記事項証明書の交付手数料(市区町村・法務局)
- 営業所の平面図を外部に作ってもらう場合の作成費
前提となる飲食店営業許可は食品衛生法に基づく別の手続きのため、その費用は深夜営業の届出とは分けて見積もることになります。この2つのほかに提出先で生じる費用があるかどうかも、事前に確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
自分で出すか、専門家に頼むか
届出書は、届出をする本人が作って提出できます。自分で進める場合に手間がかかりやすいのは、次の2つです。
- 営業所の平面図(内閣府令24条1号ロ):客室の範囲や床面積、什器の配置をどう図面に示すかで手間がかかります。図面の全体像は風営法の申請図面の作り方にあります。
- その場所で深夜に営業できるかの確認:条例で定められた地域と物件の位置を照らし合わせる作業です。
書類の作成や提出を専門家に頼む場合の相談先は、風営法を扱う行政書士です。どちらにするかは、準備にかけられる時間と、図面を自分で作れるかどうかで決めることになります。
届出をしたあとに続く手続き
届出書を提出した者は、営業を廃止したときは廃止届出書を、届け出た事項に変更(軽微な変更などを除く)があったときは変更届出書を、そのつど提出しなければなりません(法33条2項)。期限は、廃止・変更の日から10日以内、法人の名称・住所・代表者の氏名の変更は20日以内です(規則104条において読み替えて準用する規則42条2項)。様式は必要書類と様式の書き方、どの内装工事が変更の届出の対象になるかと罰則は深夜営業の届出の全体像の「開業後に起きる手続き」にまとめています。
法33条2項は、変更の届出の対象になる事項のうち、営業所については名称だけを挙げていて、所在地を外しています。店を移転する場合は変更の届出では足りないため、移転先の届出と元の営業所の扱いをどの順で進めるかは、移転の計画の段階で整理しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
よくある質問
営業開始の10日前に間に合わないときは、どうすればよいですか。
規則103条3項の期限は守らなければならない義務なので、深夜の営業を始める日を遅らせて期限に合わせます。期限を過ぎてからの提出は、規則103条3項の期限を守らなかったことになり、遅れて提出すれば足りるというものではありません。
届出書を出した翌日から、深夜に営業できますか。
できません。提出の翌日に深夜の営業を始める日程は、10日前までという期限(規則103条3項)に反します。
飲食店営業許可の手続きは、どこで行いますか。
許可をするのは都道府県知事で、保健所を設置する市・特別区では市長・区長です(食品衛生法55条1項・76条)。深夜営業の届出との順番は、このページの「開業までの流れ」の手順3で説明しているとおりです。申請の窓口と審査の日程は、深夜営業の届出とは別に確認しておく必要があります。
警察署への事前相談は、しなければなりませんか。
風営法・施行令・施行規則に、届出の前の相談を義務づける定めはありません。もっとも、所轄の警察署によっては、届出の前に図面を持って相談に来るよう案内していることがあります。相談をせずに届出書を出し、あとで図面の書き直しや補正を求められると、深夜の営業を始める予定日が遅れるおそれがあります。
開業後に、午前0時までに閉める営業に切り替えたら、届出は必要ですか。
深夜における酒類提供飲食店営業をやめることになるので、法33条2項の営業の廃止の届出の対象になるかどうかを、切り替えの前に確認しておく必要があります。将来、再び午前0時以降の営業を始めるときの手続きも、あわせて整理しておくと安心です。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。