開業後に風営法の手続きが必要になるのは、店舗の構造や役員などを変えるときです。内装の改装、役員や管理者の変更、移転、風俗営業者の死亡、営業の廃止といった出来事ごとに、承認・届出・許可証の返納など、必要となる手続きが定められています。これとは別に、従業員の雇用、閉店時刻の設定、警察の立入りといった日々の営業の場面にも、適用される決まりがあります。出来事によっては、変更の届出だけでは対応できず、新しい許可や承認が必要になります。
この記事の要点
- 店舗の構造や役員などを変えるときの手続きは、出来事と営業の区分ごとに、手続きの種類(承認・届出・許可証の返納)が決まっています。風俗営業では、営業所の構造設備の軽微な変更をしたときにも届出が必要です(法9条3項2号)。
- 店を移すときと、風俗営業者が亡くなったときは、変更の届出だけでは対応できません。移転先の営業所では許可・届出の手続きを改めてとり(法3条1項・法33条1項)、相続では死亡後60日以内に承認の申請をします(法7条1項)。
- 酒類提供飲食店営業では、午前6時から午後10時までの時間帯だけで営むかどうかで、適用される決まりが変わります(法33条6項・法36条・法36条の2・法37条2項6号)。
この記事では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を「法」、同法施行規則を「規則」、同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令を「内閣府令」と略します。
店舗の構造や役員などを変えるとき
- 内装・照明・音響の変更:風俗営業は承認か届出(法9条1項・3項2号)、深夜における酒類提供飲食店営業は変更の届出(法33条2項)です。どの変更が軽微な変更に当たらないかは、内閣府令2条・22条に定められています。
- 風俗営業:風営法の許可(1号営業)の取り方の「許可を受けたあと、変更があるときの手続き」
- 新しい許可が要る工事:風俗営業許可の要件の「営業所の同一性 ─ 新しい許可が要る工事」
- 深夜における酒類提供飲食店営業:深夜営業の届出の全体像の「開業後に起きる手続き ─ 変更の届出と廃止の届出」
- 名称・代表者・役員・管理者の変更:届出の対象になる事項は、区分によって違います。
- 風俗営業:氏名又は名称・住所・法人の代表者の氏名・営業所の名称・管理者の氏名及び住所・法人の役員の氏名及び住所の変更(法9条3項1号。法5条1項各号のうち3号・4号を除いたもの)
- 深夜における酒類提供飲食店営業:氏名又は名称・住所・法人の代表者の氏名・営業所の名称の変更(法33条2項)
- 2025年11月28日の改正と役員の変更の関係:2025年11月施行分の解説の「既存の法人・店舗の確認事項」
- 移転:許可も届出も営業所ごとの手続きなので(法3条1項・法33条1項)、移転先の営業所について改めて許可を受け、または届出書を提出し、元の営業所については許可証の返納・廃止の届出をすることになります(法10条1項1号・法33条2項)。移転先で許可の基準が改めて問われる点は、保全対象施設と距離制限の調べ方の「許可のあとに近くに施設ができたとき」で扱っています。
- 風俗営業者の死亡・法人の合併や分割:風俗営業者の地位を引き継ぐには、公安委員会の承認が必要です。相続では被相続人の死亡後60日以内に申請し(法7条1項)、合併・分割ではあらかじめ承認を受けます(法7条の2第1項・法7条の3第1項)。
- 営業の廃止:許可証の返納(法10条1項1号)か、廃止の届出(法33条2項)です。立入りを受けたあとに廃業する場合は、2025年11月施行分の解説の「立入りのあとの許可証の返納(法4条1項8号ロ・規則6条の4)」で解説しています。
変更の手続きで使う施行規則の様式は、風俗営業については許可申請の必要書類一覧の「様式の番号 ─ 『別記様式第1号』が2つある」に、深夜における酒類提供飲食店営業については必要書類と様式の書き方の「様式の番号と入手先」にまとめています。
工事が軽微な変更に当たるか、営業所の同一性がなくなって新しい許可が必要になるかは、工事の内容と営業所の実態によって判断されます。予定している工事が、届出・承認・新しい許可のどれに当たるかを確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
営業の中で起きる場面と、関わる決まり
- 従業員の雇用・シフト
- 18歳未満の者:18歳未満の者の立入り・従業の制限の「4つの区分で比べる」
- 従業者名簿と、接客従業者の生年月日・国籍などの確認:法36条に挙げる営業を営む者は営業所ごとに従業者名簿を備え、法36条の2に挙げる者(接待飲食等営業を営む風俗営業者など)は、客に接する業務に従事させようとする者の生年月日・国籍などを書類で確認し、記録を作成して保存しなければなりません。対象になる営業の範囲は、法36条と法36条の2とで一部異なります。
- 日本国籍を有しない人(外国籍の人)を雇う場合:法36条の2は在留資格なども確認事項にしていますが(同条1項3号)、その在留資格で働けるかどうかは出入国管理及び難民認定法の扱いで、風営法とは別の判断になります。雇う前に、その在留資格で従事できる業務かを確認しておく必要があります。
- 閉店時刻の設定・延長
- 風俗営業:深夜の営業の制限は、風営法の許可(1号営業)の取り方の「許可を受けると始まる制限と義務」にまとめています。
- 酒類提供飲食店営業:法33条6項は、酒類提供飲食店営業のうち「午前6時から午後10時までの時間においてのみ営むもの」を除いたものを、法18条の2(接客従業者に対する拘束的行為の規制)の準用の対象にしています。従業者名簿(法36条)、接客従業者の生年月日等の確認(法36条の2)、警察職員の立入り(法37条2項6号)も、この営業を対象にしています。この時間帯に収まる営業かどうかは、実際の営業の内容で判断されます。深夜(午前0時から)にも営む場合は、深夜の届出の対象です(深夜営業の届出の全体像)。
- 料金・広告・客引き:風俗営業者には料金の表示(法17条)と広告及び宣伝の規制(法16条)があり、2025年6月28日には、接待飲食営業を営む者の禁止行為が加わりました(法18条の3・法22条の2。2025年風営法改正の全体像)。客引きの禁止は、風俗営業を営む者と飲食店営業を営む者とで適用される範囲が違い(法22条1項1号・2号・法32条3項)、都道府県の条例に別の規制があることもあります(ガールズバーの開業に必要な許可・届出の「『ガールズバー 風営法違反』で調べている人へ」)。
- 警察の立入り・報告の求め:公安委員会は業務に関する報告や資料の提出を求めることができ、警察職員は営業所に立ち入ることができます(法37条1項・2項)。
風俗営業の営業時間は、都道府県の条例で深夜に営める日・地域・時刻が定められることがあり(法13条1項ただし書)、反対に、条例で地域を定めて営業時間をさらに制限していることもあります(法13条2項)。
店の所在地の条例の定めと、実際に営業している時間帯によって、どの決まりが適用されるかを確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
よくある質問
個人で営業している店を法人の経営に切り替える(法人成りする)場合、手続きはどうなりますか。
個人が受けた許可を法人に引き継ぐ定めはないため、法人で営むときは、法人として許可を受けることになります(法3条1項)。風営法の許可(1号営業)の取り方のよくある質問「個人で許可を受けたあと、その許可で法人として営業できますか」で解説しています。
2025年6月に加わった禁止行為は、すでに営業している店にも適用されますか。
6月28日に施行された改正は、これから許可を受ける店だけでなく、すでに許可を受けて営業している店にも関わります。2025年風営法改正の全体像の「すでに接待をする店を営んでいる場合に見直すこと(6月28日施行分)」で、見直す項目を挙げています。