深夜に酒類を出す営業の届出そのものには、許可のような審査はありません(法33条1項は届出書の提出を求めているだけです)。しかし、深夜に営業する店が守らなければならない基準は法令に定められています。このページでは、その場所で深夜に営業できるか(営業できない地域)と、その内装で基準を満たすか(営業所の構造及び設備)の2つを、条文に沿って整理します。
この記事の要点
- 条例で定められた地域では、深夜に酒類提供飲食店営業を営めません(法33条4項。政令の基準は令27条1号の住居集合地域内の地域)。どこがその地域かは、都道府県の条例によって異なります。
- 深夜において飲食店営業を営む者は、営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければなりません(法32条1項。基準は規則99条1号から6号まで)。
- 届出をして深夜に酒類を提供する店では、午後10時から翌日の午前6時までの時間に、18歳未満の者を客に接する業務に従事させることも、客として立ち入らせること(保護者が同伴する場合を除く)もできません(法32条3項において読み替えて準用する法22条1項4号・5号)。
この記事では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を「法」、同法施行令を「令」、同法施行規則を「規則」と略します。
営業できない地域
営業できる地域の決まり方は、許可・届出の種類ごとに仕組みが違います。深夜における酒類提供飲食店営業を、風俗営業・特定遊興飲食店営業と並べると次のとおりです。
| 許可・届出の種別 | 営業できない地域 | 保全対象施設との距離 |
|---|---|---|
| 風俗営業1号(接待飲食営業) | 条例で定める営業制限地域内にあるときは許可されない(不許可事由)。条例の基準は、住居集合地域、または保全対象施設の周辺の地域条文で確定根拠:法4条2項2号/令6条1号イ・ロ | 保全対象施設の敷地の周囲おおむね100メートルの区域を限度として、条例で制限地域を指定できる条文で確定根拠:令6条1号ロ・2号 |
| 深夜における酒類提供飲食店営業(届出) | 都道府県は条例で地域を定めて、深夜に酒類提供飲食店営業を営むことを禁止できる。条例の基準は住居集合地域内の地域条文で確定根拠:法33条4項/令27条1号 | 保全対象施設からの距離の規定はない(禁止地域の基準は住居集合地域のみ)地域・運用で異なる根拠:令27条1号 |
| 特定遊興飲食店営業(許可) | 他の区分とは逆に、条例で定める「営業所の設置が許容される地域」の中になければ許可されない。基準は、風俗営業等密集地域または深夜の人口がおおむね100人/km²以下の地域であり、かつ住居集合地域等でないこと条文で確定根拠:法31条の23において読み替えて準用する法4条2項2号/令22条1号イ・ロ | 保全対象施設の敷地の周囲おおむね100メートルを限度とする区域内の地域は、条例で営業所設置許容地域に指定できない条文で確定根拠:令22条1号ロ(4) |
法令基準日:2026-09-18/根拠の略号 法=風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、令=同法施行令、規則=同法施行規則、内閣府令=同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令
この表の「地域・運用で異なる」の項目は、都道府県の条例や所轄の警察署の運用によって取扱いが異なります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
詳しくは用途地域と営業できない地域の調べ方のページで解説しています。
深夜における酒類提供飲食店営業(届出)の場合
根拠は法33条4項で、政令の基準は令27条です。住居集合地域の定義と、条例の探し方は営業できない地域の調べ方にあります。条例に違反して深夜に営業したときは、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその併科です(法51条1項10号)。
表のとおり、特定遊興飲食店営業だけは他の区分と反対に、条例で定める「営業所の設置が許容される地域」の中でなければ許可されない仕組みです。
保全対象施設からの距離と、営業を始めたあとに禁止地域の条例ができたとき
表の距離の欄で、深夜における酒類提供飲食店営業だけが「地域・運用で異なる」になっているのは、国の政令が距離を定めていない一方で、実際の禁止地域の線引きが都道府県の条例に委ねられ、条例の当てはめが所轄の警察署の判断になるからです。学校などの保全対象施設(いわゆる「保護対象施設」)が近くにある物件の場合は、その条例の禁止地域の範囲を、距離とは別に確かめることになります。距離の考え方は保全対象施設と距離制限の調べ方にあります。
営業できる地域は都道府県の条例で定められており、地域によって異なります。物件の契約前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課に確認してください。
既存の店では、営業所の新築、移築、増築等をすると、条例を適用しない扱い(法33条5項)がなくなるとされています(警察庁の解釈運用基準(令和8年7月1日の通達)第29中3(2))。改装を考えている店は、工事の内容がこれに当たるかが論点になります(どんな工事が当たるかは深夜における酒類提供飲食店営業の解説で整理しています)。工事の範囲が決まる前に、法33条5項の扱いが続くかを確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
営業所の構造及び設備の技術上の基準(法32条1項・規則99条)
法32条1項は「維持しなければならない」と定めているので、開業のときに基準を満たせば足りるものではなく、営業を続けるあいだ保ち続ける義務です。この義務は、届出の有無や酒類を出すかどうかにかかわらず、深夜において飲食店営業を営む者に適用されます。基準は規則99条に1号から6号まで定められています。
- 客室の床面積(1号)
- 見通しを妨げる設備(2号)
- 写真・広告物・装飾その他の設備(3号)
- 客室の出入口の施錠の設備(4号)
- 照度を維持するための構造・設備(5号)
- 騒音・振動を抑えるための構造・設備(6号)
1号から5号まで、それに18歳未満の者の制限を、深夜における酒類提供飲食店営業の側から表にしました。6号は下の「騒音・振動」で扱います。
| 項目 | 深夜における酒類提供飲食店営業(届出) |
|---|---|
| 客室の床面積 | 客室は1室9.5㎡以上。ただし客室の数が1室のみの場合を除く条文で確定根拠:法32条1項/規則99条1号規則99条1号は、風俗営業のように和風とその他の客室を分けていません。基準を満たすかは、図面と現物で判断されます |
| 見通しを妨げる設備 | 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと地域・運用で異なる根拠:法32条1項/規則99条2号警察庁の解釈運用基準(第12中8(1))では、「見通しを妨げる設備」とは、仕切り、ついたて、カーテン、背の高い椅子(高さがおおむね1メートル以上のもの)等をいうとされ、見通しを確保する必要があるのは客室の内部であるとされています(この整理は風俗営業の基準(規則7条)についてのもので、規則99条2号も同じ文言です)。解釈運用基準は全国共通の最低限の取扱いを示したもので、所轄の警察署がより厳しい運用をしていることがあり、高さ・配置が基準を満たすかは現物で判断されます |
| 写真・広告物・装飾 | 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと地域・運用で異なる根拠:法32条1項/規則99条3号規則99条3号のかっこ書(少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある設備を含む)は、規則102条に規定する営業に係る営業所についての定めで、届出をして深夜に酒類を提供する店には及びません。何が該当するかは現物で判断されます。所轄の警察署によって取扱いが異なることがあります |
| 照度 | 規則100条の方法で測定した営業所内の照度を20ルクス以下として営業してはならない。構造設備としても20ルクス以下とならないように維持できる構造・設備が必要条文で確定根拠:法32条2項において準用する法14条/規則101条(20ルクス)/規則100条(測定方法)/規則99条5号条文は「20ルクス以下としてその深夜における営業を営んではならない」という定め方です(法32条2項による読替え)。実際の測定は所轄の警察署が現物で行います |
| 区画(区画席) | 「区画」の基準規定はない。客室の出入口に施錠の設備を設けないこと(営業所外に直接通ずる出入口を除く)地域・運用で異なる根拠:規則99条4号/内閣府令22条3号(変更の届出を要する事項としての「営業所の内部を仕切るための設備」)/法2条1項3号他から見通すことが困難で、かつ、広さが5平方メートル以下の客席を設けて営むと、法2条1項3号の営業(風俗営業)に当たり、届出ではなく許可が必要になります。風俗営業は、許可を受けても、条例に特別の定めがある地域を除き、深夜(午前0時から午前6時まで)には営業できません(法13条1項)。警察庁の解釈運用基準(第29中2(1))では、「営業所の内部を仕切るための設備」とは、壁、ふすまのほか、カーテン、ついたて等をいうとされています。ただし、仕切る設備が「見通しを妨げる設備」に該当するかどうかは別に判断されます。所轄の警察署がより厳しい運用をしていることがあり、現物で判断されます |
| 18歳未満の立入り | 午後10時から翌日の午前6時までは、18歳未満の者を客として立ち入らせてはならない(保護者が同伴する場合を除く)条文で確定根拠:法32条3項において準用する法22条1項5号(読替あり)届出の対象になる酒類提供飲食店営業は、規則102条1号・2号のいずれにも当たらないため、制限の対象になります。なお法18条の表示義務は準用されていませんが、条例や所轄の指導で表示を求められることがあります |
| 18歳未満の従業 | 午後10時から翌日の午前6時までは18歳未満の者を客に接する業務に従事させてはならない条文で確定根拠:法32条3項において準用する法22条1項4号接待をさせることの禁止(法22条1項3号)は準用されていません(接待をする営業は、そもそも風俗営業の許可が必要な区分です) |
法令基準日:2026-09-18/根拠の略号 法=風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、令=同法施行令、規則=同法施行規則、内閣府令=同法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令
この表の「地域・運用で異なる」の項目は、都道府県の条例や所轄の警察署の運用によって取扱いが異なります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
詳しくは風営法の全体像のページで解説しています。
客室の床面積 ─ 9.5平方メートル
規則99条1号は、「客室の床面積は、一室の床面積を九・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。」と定めています。
ただし書によって基準が適用されなくなるのは床面積の基準だけで、客室が1室でも、見通し・照度・出入口の施錠など他の号の基準は同様に適用されます。どこまでを1つの客室として数えるかは図面と現物で判断され、和室か洋室かを問わない点も含めて、所轄の警察署がより厳しい運用をしていることがあります。
客室の基準の全体は客室の床面積・見通し・区画の基準、面積の測り方(客室は内法で確かめておくと手戻りがありません)は求積図と面積の計算にあります。
見通しを妨げる設備
表の補足に載せた解釈運用基準の整理は風俗営業の基準についてのもので、深夜の飲食店営業の基準である規則99条2号を直接説明した記述は、解釈運用基準にはありません。仕切り・棚・椅子の高さや配置が基準に合うかは、什器を決める段階の図面で確かめておくべき点です。詳しくは客室の床面積・見通し・区画の基準にあります。
区画席や個室は置けるか
客室の出入口には、営業所外に直接通ずるものを除いて施錠の設備を設けられません(規則99条4号)。そのうえで、仕切りで囲んだ席は見通し(2号)の問題になります。さらに、囲い方と広さによっては、許可が必要な区分(法2条1項3号)に当たることがあります。その線引きは、このページ前半の比較表の「区画(区画席)」の行と客室の床面積・見通し・区画の基準で確認できます。「個室にできるか」は、仕切りの高さ・素材・配置と、席の広さで判断されます。
写真・広告物・装飾(規則99条3号)
規則99条3号は、善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないことを求めています。表の補足にあるかっこ書の扱いとあわせて、区分ごとの違いを見ると、特定遊興飲食店営業の基準(規則75条3号)は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのあるものまでを対象にしていて、風俗営業(法2条1項1号に掲げる営業)・深夜における酒類提供飲食店営業・特定遊興飲食店営業の3つの中で最も広く定められています。
照度 ─ 20ルクス
構造設備の基準として、規則100条の方法で計った営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有することが求められています(規則99条5号)。営業中の規制(20ルクス以下としてその深夜における営業を営んではならない)と、測る場所・測り方は照度の基準で扱っています。
騒音・振動
騒音・振動の規制(法15条)は、深夜において飲食店営業を営む者に準用されます(法32条2項)。数値は都道府県の条例で定められ、政令はその上限の枠を定めています。騒音は令11条1項の表の地域ごとの深夜に係る数値を超えない範囲内(令26条1項)、振動は55デシベルを超えない範囲内(令26条2項)です。規則99条6号は、この条例の数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を求めています。
解釈運用基準の第28中2では、騒音及び振動の規制の趣旨は第17中4と同趣旨であるとされています。測定の方法は規則32条1項(騒音)・2項(振動)に定められています。実際の数値は、所在地の条例で確かめます。床面積の数え方、仕切り、照明、防音が基準に合うかは、図面の段階で確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
18歳未満の者の立入り・従業の制限
法22条1項(3号を除く)は、読み替えたうえで飲食店営業を営む者に準用されています(法32条3項)。この制限には規則102条1号・2号の営業を除く定めがありますが、届出をして深夜に営む酒類提供飲食店営業は、どちらにも当たりません。1号の営業(営業の常態として主食を提供する飲食店営業)は法2条13項4号かっこ書で酒類提供飲食店営業から除かれている営業で、2号は「酒類を提供して営むものを除く」とされているためです。したがって、深夜の届出をする店も、18歳未満の者の制限の対象になります。
違反すると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその併科です(法51条1項4号)。18歳未満の者を客に接する業務に従事させた場合は、年齢を知らなかったことを理由に処罰を免れることはできません(過失のないときを除く。法51条2項)。
読み替えの中身と、除外の考え方は18歳未満の者の立入り・従業の制限にあります。18歳未満の者を雇う予定や、午後10時以降に18歳未満の客を受け入れる予定がある場合は、その前に確かめておくべき論点です。
立入禁止の表示は義務か
表の補足のとおり、年少者の立入禁止の表示を義務づける法18条は、深夜の酒類提供の届出をした店には準用されていません。表示は国の法令上の義務ではありませんが、条例や所轄の指導で求められることがあり、所轄の警察署がより厳しい運用をしていることもあります。入口に表示しておけば、あとで求められても手戻りはありません。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
管理者の選任は必要か
風俗営業(法24条1項)と特定遊興飲食店営業(法31条の23において準用する法24条)には、営業所ごとに管理者を選任する義務があります。深夜の酒類提供の届出には、この法24条が準用されていません(法32条・法33条)。ここが風俗営業・特定遊興飲食店営業との大きな違いですが、法令上の義務がないことと、所轄の警察署が連絡の責任者を求めないこととは別の問題です(風俗営業の管理者は風俗営業許可の要件で扱っています)。届出の前に、連絡の責任者を置くよう求められるかを確認しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
迷ったときの動き方
構造や設備が基準を満たすかどうかは、図面だけでは決まらず、現物で判断されます。所轄の警察署に確かめるときは、次の資料や情報を用意しておくと、確認をスムーズに進められます。
- 営業所の平面図
- 什器の高さと配置(仕切り・棚・椅子)
- 客室の数と、それぞれの床面積
- 照明の種類と配置(調光するかどうか)
- メニューと、時間帯ごとの提供内容
内装工事は、着工してから基準に合わないと分かると、やり直しの費用と時間が直接かかります。
契約前に確認してください。契約後に判明すると、物件を変えるしかなくなることがあります。