バーや居酒屋で「深夜営業」というと、夜10時や11時までの営業を思い浮かべる人も多いのですが、風営法でいう「深夜」は午前0時から午前6時までの時間です。店の案内でいう「深夜営業」と、法律上の「深夜」がずれたまま手続きを考えると、届出が必要な営業を見落としたり、必要のない心配をしたりすることになります。
この記事の要点
- 午前0時から午前6時までの時間(法13条1項かっこ書)に酒類提供飲食店営業を営む場合は、営業所ごとに届出書を提出しなければなりません(法33条1項)。
- 居酒屋・ラーメン店・定食屋といった業態の名称だけでは届出の要否は決まらず、主食の除外(法2条13項4号かっこ書)に当たるかどうかは営業の実態で判断されます。所轄の警察署が、より厳しく判断していることもあります。
- スポーツ観戦の日に、店側が客に応援を呼び掛けるかどうかで、遊興に当たるかどうかが分かれます(解釈運用基準 第10中2(2)⑥・(3)⑤)。
この記事では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を「法」、同法施行令を「令」、同法施行規則を「規則」と略します。
このページの目次
「深夜営業」の意味を、法律の言葉にそろえる
法13条1項は、深夜を「午前零時から午前六時までの時間」と定めています。夜10時や11時に閉める店は、風営法上は深夜に営業していません。一方、「24時まで」と表示している店でも、日付が変わってから客が飲食を続け、店が酒類を出している時間があれば、その時間は深夜における営業に当たります。
酒類提供飲食店営業に当たるかどうかの判断では、ビール1杯でも、客のキープボトルにグラスと氷を出すだけでも、酒類を提供していることになるとされています(警察庁の解釈運用基準(令和8年7月1日の通達)第11中7(1)・第10中5)。原文と、届出が必要になる条件の組み立ては深夜における酒類提供飲食店営業とは、届出の期限と手順は届出の流れと期限で解説しています。
なお、居酒屋で18歳未満のアルバイトを夜のシフトに入れる場合は、深夜の定義とは別に、午後10時から翌日の午前6時までの時間の制限があり、国家公安委員会規則で定める営業に係る業務は除かれています(法32条3項において読み替えて準用する法22条1項4号)。除かれる営業に当たるかを含め、18歳未満の者の立入り・従業の制限で解説しています。
日付が変わっても客が店にいる曜日や日があるかを、営業の予定として整理しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
主食を出している店(ラーメン店・定食屋・締めのごはんを出す居酒屋)
深夜にビールも出すラーメン店、夜は飲み屋のメニューになる定食屋、締めのごはんものを出す居酒屋で問われるのは、どれも同じ除外に当たるかどうかです。法2条13項4号かっこ書は「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」を酒類提供飲食店営業から除いており、どう読むかの注意点は解釈運用基準の第11中7(2)に示されています。原文と読み方は深夜における酒類提供飲食店営業とはの「主食を常時提供する店の除外」にあります。
とくに、昼は定食を出し、夜は酒とつまみが中心になる店では、1日のうち昼間のみ主食を提供している店は、この除外に当たらないとされているので(第11中7(2)ア)、昼の営業で主食を出していても、夜の時間帯の判断には影響しません。時間帯ごとにメニューを切り替えているかどうかを、整理しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
照明を落とす・席を仕切る場合
深夜における酒類提供飲食店営業の届出をして営業する店が、照明を落としたり、カップルシートや半個室を作ったりして、風俗営業(法2条1項2号・3号)に当たると、許可が必要になるだけでなく、許可を受けた風俗営業は午前0時から午前6時まで営めません(法13条1項本文)。深夜の営業を続けたい店ほど、照明と客席のつくりが営業の区分に直結します。
- 照明:営業所内の照度を10ルクス以下として営むと、法2条1項2号に当たります。測り方は照度の基準で解説しています
- 席の仕切り:他から見通すことが困難で、広さが5平方メートル以下の客席を設けて営むと、同項3号に当たります。見通しと広さは客室の床面積・見通し・区画の基準で解説しています
これとは別に、深夜に営業する店には、規則99条1号から6号までの構造設備の基準(客室の床面積、見通し、写真・広告物・装飾、出入口の施錠、照度、騒音・振動)があり、数値とただし書は届出の要件にまとめています。調光で落とせる明るさの下限と、仕切った席の広さを、具体的な数値で把握しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
深夜に酒類を出せる場所かどうか
候補の店舗で深夜に酒類提供飲食店営業を営めるかどうかは、都道府県の条例で決まります(法33条4項)。条例の調べ方は用途地域と営業できない地域の調べ方で解説しています。候補の店舗の所在地が、条例で深夜における酒類提供飲食店営業を禁止した地域に当たらないかを、確認しておく必要があります。
営業できる地域は都道府県の条例で定められており、地域によって異なります。物件の契約前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課に確認してください。
スポーツ観戦の日に店を盛り上げる場合
深夜にも客に遊興をさせ、かつ、酒類を提供して営む営業は、特定遊興飲食店営業として許可が必要です(法2条11項・法31条の22)。スポーツバーやスポーツ中継を流す居酒屋で問題になりやすいのは、観戦の際の店側の関わり方です。
- スポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為は、客に遊興をさせることに当たるとされています(解釈運用基準 第10中2(2)⑥)
- (2)の行為に当たらない形で、映像を単に不特定の客に見せる行為は、客自身が応援等を行う場合を含めて当たらないとされています(第10中2(3)⑤)
また、解釈運用基準(第10中3(3))は、スポーツ等の映像を見せ、深夜において酒類提供飲食店営業を営むバー等が、平素は客に遊興をさせていないものの、特に関心の高い試合のときに、反復継続の意思を持たずに「たまさか短時間に限って」(たまたま短い時間だけ、という意味)深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められないとしています。ただ、これは反復継続の意思がない場合の整理で、試合のたびに呼び掛けや演出を続ける店が、この第10中3(3)の場合に当たるとは限りません。ダーツの大会やカラオケの盛り上げも、店側の関わり方で遊興に当たるかが分かれます(段階ごとの整理は「接待」の定義と判断基準の「接待・遊興・どちらでもない」)。観戦イベントを開く日と、その日に店側がする呼び掛けや演出の内容を、整理しておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。
よくある質問
バーの開業に、風営法の届出は必要ですか。
午前0時以降も酒類提供飲食店営業として営む場合は、届出が必要です(法33条1項)。このページの「照明を落とす・席を仕切る場合」のように許可が必要になる場合や、接待をする場合(「接待」の定義と判断基準)もあり、区分の全体は業態別に必要な許可・届出で比較しています。
締めにごはんものを出す居酒屋でも、届出は必要ですか。
締めに主食を出していることだけでは、主食の除外に当たるとはいえず、深夜に酒類を提供して営めば届出が必要になる場合があります。このページの「主食を出している店」のとおり、営業時間中にどのように主食を提供しているかという実態で判断されます。
届出をすれば、何時までお酒を出してもよいのですか。
深夜の届出をした店について、風営法に営業時間の上限の規定は置かれていませんが、照度や客席のつくりで風俗営業に当たる場合は、午前0時から午前6時までは営業できません(法13条1項本文)。また、条例で深夜の酒類提供飲食店営業が禁止された地域では営めず(法33条4項)、営業所で20歳未満の者に酒類を提供することは、時間を問わず禁じられています(法32条3項において準用する法22条1項6号)。来店客の年齢の確認方法を決めておく必要があります。
ここで挙げた点は、店舗の実態と所轄の警察署の運用によって判断が分かれます。図面や設備が固まる前に、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課か、風営法を扱う行政書士に確認することをおすすめします。