宅建試験の不動産登記法で区別がつきにくいのは、登記の種類ごとに違う、申請の義務の有無、申請する人、登記官の職権の扱いです。このページでは、宅建試験の受験生に向けて、表示に関する登記と権利に関する登記の違いを軸に、申請の義務と期間、共同申請と単独申請、仮登記、分筆・合筆、区分建物の登記、申請の手続を表で整理しました。
最初に押さえておきたいのは、不動産の登記は、土地・建物の物理的な状況を登記記録の表題部に記録する「表示に関する登記」と、所有権・抵当権などの権利を権利部(甲区・乙区)に記録する「権利に関する登記」に分かれることです(不動産登記法2条7号・8号、不動産登記規則4条4項)。宅建試験の不動産登記法では、この2つの間で、申請の義務や申請する人、職権の扱いがどう違うかを軸に問われます。
また、権利に関する登記には原則として申請の義務がありませんが、令和3年の改正(令和3年法律第24号)で、次の2つの登記に申請の義務が設けられました。2024年4月1日からは、相続による所有権の移転の登記(一般には相続登記と呼ばれます)を、相続による所有権の取得を知った日などから3年以内に申請しなければなりません。2026年4月1日からは、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記(一般には住所等の変更の登記と呼ばれます)を、変更があった日から2年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項・76条の5)。過去問には、これらの義務がなかったころに出題されたものもあるので、表2の行にある「それまでは申請の義務はなかった」とあわせて読んでみましょう。
本記事は、2026年9月時点で施行されている不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。
表示に関する登記と権利に関する登記の違い
表1を読むときの軸は、表示に関する登記は「不動産そのもの」の登記なので、申請の義務があり、登記官が職権でもできるのに対し、権利に関する登記は「権利者どうし」の登記なので、原則として申請の義務はなく、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁・公署の嘱託がなければ、登記をすることができないという対比です(不動産登記法36条・47条1項・28条・16条1項)。
ただし、これは覚えるための整理で、この対比に当てはまらない行もあります。権利に関する登記でも、相続による所有権の移転の登記と、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記には申請の義務があります(表2)。反対に、表示に関する登記でも、表題部所有者の氏名・住所の変更の登記と、分筆・合筆の登記・建物の合併の登記には申請の義務の定めがありません(表2・表5)。また、申請情報と併せて登記原因を証する情報(登記原因証明情報)を提供するという不動産登記法61条の定めは、権利に関する登記についての定めです。正誤は、表1の条文の列で判断します。
「出題」は、昭和63年〜令和7年の本試験の過去問で、年度と問番号を確かめたものだけを載せています。「直近10年」は平成28年〜令和7年の本試験で、その行の論点が選択肢に出た回数です。「問われ方」は、過去問で誤りの選択肢として出た形です。正しい選択肢としてだけ出たものは「(正しい選択肢として出題)」としています。「注意」は、過去問では確かめていませんが、誤解しやすい点です。「条文」の列の法令は、いま(2026年9月)の不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則の条・項・号です。平成16年までの本試験は、2005年3月7日に施行された不動産登記法の全部改正(平成16年法律第123号)の前の法で出題されているので、いまは無い制度(登記所への出頭・登記済証の添付・保証書・予告登記など)を前提にした選択肢は「出題」に載せていません。「出題」には、2023年4月1日から2026年4月1日までに施行された改正(令和3年法律第24号)の前に出題された選択肢も含みます(改正前の定めは、行の中に書いています)。
| 項目 | 表示に関する登記 | 権利に関する登記 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 登記記録のどこに記録するか | 表題部に記録する(表題部に最初にされる登記が表題登記)。所有権の登記がない不動産は、所有者(表題部所有者)の氏名・住所も表題部に記録する | 権利部に記録する。権利部は甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する登記、乙区には所有権以外の権利(抵当権・賃借権・地役権など)に関する登記を記録する | 不動産登記法2条7号・8号・10号・20号 不動産登記法27条3号 不動産登記規則4条4項 |
| 何を登記するか(登記事項) | 不動産の表示。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積など(建物の名称があるときは名称も)。建物の種類は、主な用途により居宅・店舗・事務所などに区分して定める。建物として登記できるのは、屋根と周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物で、目的とする用途に供し得る状態にあるもの | 所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・配偶者居住権・採石権の保存・設定・移転・変更・処分の制限・消滅。登記の目的、登記原因とその日付、権利者の氏名・住所などのほか、権利ごとの事項(地上権の存続期間の定め、賃借権の敷金・事業用定期借地権の定めなど)も登記事項になる。承役地に地役権の設定の登記をするには、要役地に所有権の登記がなければならない | 不動産登記法3条 不動産登記法34条1項 不動産登記法44条1項 不動産登記規則111条 不動産登記規則113条1項 不動産登記法59条 不動産登記法78条3号 不動産登記法80条3項 不動産登記法81条4号・8号 |
| 申請の義務 | 表題登記・地目や地積の変更の登記・滅失の登記などは、1か月以内に申請しなければならない(表2) | 原則として申請の義務はない。相続による所有権の移転の登記(3年以内)と、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記(2年以内)は申請しなければならない(表2) | 不動産登記法36条 不動産登記法47条1項 不動産登記法76条の2第1項 不動産登記法76条の5 |
| 登記官の職権による登記 | 登記官が職権ですることができる(分筆・合筆の登記を職権でする場合は、39条2項・3項に定めがある=表5)。登記官は、申請があったときや職権で登記しようとするときに、必要があれば不動産の表示に関する事項を調査できる | 法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁・公署の嘱託がなければ、することができない | 不動産登記法16条1項 不動産登記法28条 不動産登記法29条1項 不動産登記法39条2項 不動産登記法39条3項 |
| 登記原因を証する情報(登記原因証明情報) | 法61条の登記原因証明情報の提供の定めは、権利に関する登記についての定めで、表示に関する登記には無い(表示に関する登記の添付情報は、登記ごとに政令で定める) | 法令に別段の定めがある場合を除き、申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない | 不動産登記法61条 不動産登記令7条1項5号 不動産登記令7条1項6号 |
| 申請人に相続などがあったとき | 表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合に、相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人がその登記を申請できる | 登記権利者・登記義務者・登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合に、相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人がその登記を申請できる(売主が移転の登記の前に死亡したときは、相続人が売主に代わり、相続人への相続の登記をしないで、買主と共同して売主から買主への移転の登記を申請できる) | 不動産登記法30条 不動産登記法62条 |
| 変更の登記・更正の登記 | 登記事項に変更があったときは変更の登記、登記事項に錯誤又は遺漏があったときは更正の登記をする。表題部所有者やその持分の変更は、所有権の保存の登記をした後に所有権の移転の登記の手続をするのでなければ登記できない。不動産の所有者と表題部所有者が異なるときの表題部所有者の更正の登記は、不動産の所有者が、表題部所有者の承諾を得て申請する | 変更の登記・更正の登記の意味は表示に関する登記と同じ。権利の変更の登記・更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合と、その第三者がない場合に限り、付記登記ですることができる。付記登記は、既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要がある登記で、その順位は主登記の順位による。登記名義人の氏名・住所の変更の登記、所有権以外の権利の移転の登記、買戻しの特約の登記も付記登記でする | 不動産登記法2条15号・16号 不動産登記法32条 不動産登記法33条1項 不動産登記法33条2項 不動産登記法66条 不動産登記法4条2項 不動産登記規則3条1号・6号・10号 |
申請の義務と期間は表2、権利に関する登記を誰が申請するか(共同申請と単独申請)は表3にあります。
まず、登記記録のどこに記録するかを見ておきましょう。表示に関する登記は表題部に記録し、所有権の登記がない不動産は、所有者(表題部所有者)の氏名・住所も表題部に記録します(不動産登記法2条7号・10号・27条3号)。権利部は甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する登記を、乙区には所有権以外の権利に関する登記を記録します(不動産登記規則4条4項)。そのため、賃借権の設定の仮登記や、根抵当権の登記名義人の表示の変更の登記は、所有権以外の権利に関する登記として乙区に記録します。
次に、登記事項です。建物として登記できるのは、屋根と周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物で、目的とする用途に供し得る状態にあるものです(不動産登記規則111条)。権利に関する登記ができる権利には、所有権・抵当権・賃借権のほか、配偶者居住権も含まれます(不動産登記法3条)。賃借権の設定の登記では敷金も登記事項になり、承役地に地役権の設定の登記をするには、要役地に所有権の登記がなければなりません(同法81条4号・80条3項)。
そして、職権の扱いです。登記官は、表示に関する登記を職権ででき、必要があれば不動産の表示に関する事項を調査できます(不動産登記法28条・29条1項)。これに対して、権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁・公署の嘱託がなければ、登記をすることができません(同法16条1項)。
最後に、変更の登記と更正の登記です。登記事項に変更があったときは変更の登記、登記事項に錯誤又は遺漏があったときは更正の登記をします(不動産登記法2条15号・16号)。権利の変更の登記・更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合と、その第三者がない場合に限り、付記登記ですることができます(同法66条)。付記登記は、既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要がある登記で、その順位は主登記の順位によります(同法4条2項)。登記名義人の氏名・住所の変更の登記、所有権以外の権利の移転の登記、買戻しの特約の登記も付記登記で行います(不動産登記規則3条1号・6号・10号)。なお、表題部所有者やその持分の変更は、所有権の保存の登記をした後に所有権の移転の登記の手続をするのでなければ登記できません(不動産登記法32条)。
申請の義務と期間(相続登記・住所等の変更の登記を含む)
表2を読むときの軸は、次の2点です。1つ目は、1か月以内の申請の義務があるのは、表示に関する登記のうち、表題登記・地目や地積の変更・建物の表題部の変更・滅失・合体の登記だという点です。2つ目は、権利に関する登記には原則として申請の義務はなく、例外は、相続による所有権の移転の登記(3年以内)と、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記(2年以内)だという点です(不動産登記法36条・37条1項・42条・47条1項・49条1項・51条1項・57条・76条の2第1項・76条の5)。
| 項目 | 申請の義務と期間 | 申請する人 | 怠ったとき | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 土地の表題登記 | 所有権を取得した日から1か月以内 | 新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者 | 10万円以下の過料 | 不動産登記法36条 不動産登記法164条1項 |
| 建物の表題登記 | 所有権を取得した日から1か月以内 | 建物を新築して所有権を取得した者、又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者(表題登記がない区分建物を、建築した者から取得した者には、この義務はない=表6) | 10万円以下の過料 | 不動産登記法47条1項 不動産登記法164条1項 |
| 地目・地積の変更の登記 | 変更があった日から1か月以内 | 表題部所有者又は所有権の登記名義人 | 10万円以下の過料 | 不動産登記法37条1項 不動産登記法164条1項 |
| 建物の表題部の変更の登記(種類・構造・床面積など) | 変更があった日から1か月以内 | 表題部所有者又は所有権の登記名義人 | 10万円以下の過料 | 不動産登記法51条1項 不動産登記法164条1項 |
| 滅失の登記(土地・建物) | 滅失の日から1か月以内 | 表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記がある建物は、所有者) | 10万円以下の過料 | 不動産登記法42条 不動産登記法57条 不動産登記法164条1項 |
| 合体による登記等 | 合体の日から1か月以内(表題登記がない建物と、表題登記がある建物や所有権の登記がある建物とが合体したときも申請する) | 合体前の建物の所有者・表題部所有者・所有権の登記名義人 | 10万円以下の過料 | 不動産登記法49条1項 不動産登記法164条1項 |
| 表題部所有者の氏名・住所の変更の登記 | 申請の義務はない(2年以内の申請の義務があるのは、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記だけ) | 表題部所有者だけが申請できる | 過料の定めはない | 不動産登記法31条 不動産登記法76条の5 |
| 所有権の保存の登記 | 申請の義務はない(建物を新築したときに1か月以内に申請しなければならないのは、表題登記) | 表題部所有者などに限る(表3) | 過料の定めはない | 不動産登記法74条1項 不動産登記法47条1項 |
| 売買・贈与などによる所有権の移転の登記 | 申請の義務はない(申請の期間の定めもない) | 登記権利者と登記義務者が共同して申請する(表3) | 過料の定めはない | 不動産登記法60条 |
| 相続による所有権の移転の登記(相続人に対する遺贈を含む) | 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内。法定相続分(民法900条・901条の相続分)に応じた登記の後に、遺産の分割で相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から3年以内。2024年4月1日からの定めで、それまでは申請の義務はなかった | 相続(相続人に対する遺贈)により所有権を取得した者。3年の期間内に、登記官に、相続が開始した旨と自らが相続人である旨を申し出れば(相続人である旨の申出)、申請の義務を履行したものとみなされる(申出の前にされた遺産の分割による所有権の取得の分を除く) | 10万円以下の過料 | 不動産登記法76条の2第1項 不動産登記法76条の2第2項 不動産登記法76条の3第1項 不動産登記法76条の3第2項 不動産登記法164条1項 |
| 所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記 | 変更があった日から2年以内。2026年4月1日からの定めで、それまでは申請の義務はなかった | 所有権の登記名義人(単独で申請できる=表3)。法務省令で定める場合には、登記官が職権で変更の登記をすることもできる(所有権の登記名義人が自然人のときは、本人の申出があるときに限る) | 5万円以下の過料 | 不動産登記法76条の5 不動産登記法76条の6 不動産登記法64条1項 不動産登記法164条2項 |
「過料」は、申請をすべき義務がある者が、正当な理由がないのに申請を怠ったときのものです。相続による所有権の移転の登記と、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記の申請の義務は、令和3年の改正(令和3年法律第24号)でできたものです。
表2で迷いやすいのは、建物を新築したときに、どの登記に申請の義務があるかです。建物を新築して所有権を取得した者が1か月以内に申請しなければならないのは、建物の表題登記です。所有権の保存の登記には、申請の義務がありません(不動産登記法47条1項・74条1項)。同じく、表題部所有者の氏名・住所の変更の登記にも申請の義務はなく、2年以内の申請の義務があるのは、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記だけです(同法31条・76条の5)。
相続による所有権の移転の登記は、所有権の登記名義人について相続が開始したときに、相続(相続人に対する遺贈を含む)により所有権を取得した者が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。法定相続分に応じた登記の後に、遺産の分割で相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から3年以内です(不動産登記法76条の2第1項・2項)。3年の期間内に、登記官に、相続が開始した旨と自らが相続人である旨を申し出れば(相続人である旨の申出)、76条の2第1項の申請の義務を履行したものとみなされます。ただし、申出の前にされた遺産の分割で取得した分は除かれます(同法76条の3第1項・2項)。2024年4月1日より前に開始した相続も対象で、そのときの3年は、知った日と2024年4月1日のいずれか遅い日から数えます(令和3年法律第24号の附則5条6項)。
所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記は、変更があった日から2年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の5)。2026年4月1日より前にあった変更も対象で、そのときの2年は、変更があった日と2026年4月1日のいずれか遅い日から数えます(令和3年法律第24号の附則5条7項)。法務省令で定める場合には、登記官が職権で変更の登記をすることもできますが、所有権の登記名義人が自然人のときは、本人の申出があるときに限られます(不動産登記法76条の6)。
過料は、申請をすべき義務がある者が、正当な理由がないのに申請を怠ったときのものです。申請の義務がある表示に関する登記と相続による所有権の移転の登記は10万円以下、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更の登記は5万円以下の過料です(不動産登記法164条1項・2項)。
改正の前に出題された選択肢は、表2の行の「それまでは申請の義務はなかった」と照らして読みます。「相続による移転の登記は1年以内に」「所有権の登記名義人の住所の変更の登記は1か月以内に」とする選択肢は、出題時は申請の義務そのものがなかったので誤りで、いまは期間が違うので誤りです。反対に、「権利に関する登記には申請の期間の定めがない」という説明は、いまは相続による所有権の移転に3年、所有権の登記名義人の氏名・住所の変更に2年の期間があるので、現行の規定には当てはまりません。
共同申請の原則と単独で申請できる場合
表3を読むときの軸は、権利に関する登記は、登記で直接に不利益を受ける登記名義人(登記義務者)が加わる共同申請が原則で、単独で申請できるのは、相続・合併のように登記義務者がいないとき、登記義務者が登記手続をすべきことが裁判で確定したとき(判決)、登記名義人が自分の氏名・住所の変更・更正の登記をするときという整理です(不動産登記法60条・63条1項・2項・64条1項)。
ただし、表3には、この3つに当てはまらない例外も含まれています。収用による所有権の移転(同法118条1項)、相続人に対する遺贈(同法63条3項)、所有権の移転の登記がないときの所有権の登記の抹消(同法77条)、人の死亡・法人の解散で消滅する旨が登記された権利の登記の抹消と、契約の日から10年を経過したときの買戻しの特約の登記の抹消(同法69条・69条の2)、信託の登記(同法98条2項)は、条文の結論として1行ずつ押さえましょう。反対に、共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記は、その権利の共有者であるすべての登記名義人が共同して申請します(同法65条)。
| 場面 | 原則・例外 | 条文 |
|---|---|---|
| 権利に関する登記の申請 | ||
| 共同申請 | 原則登記権利者(登記で直接に利益を受ける者)と登記義務者(登記で直接に不利益を受ける登記名義人)が共同して申請する。抵当権の設定の登記なら、抵当権者が登記権利者、抵当権を設定する不動産の所有権の登記名義人が登記義務者 | 不動産登記法60条 不動産登記法2条12号・13号 |
| 判決による登記 | 例外共同して申請しなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、他方が単独で申請できる(所有権があることを確認するだけの判決は、登記手続を命ずる判決ではない) | 不動産登記法63条1項 |
| 相続・法人の合併 | 例外相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できる | 不動産登記法63条2項 |
| 遺贈 | 例外相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できる(2023年4月1日から)。相続人でない者に対する遺贈による移転の登記は、原則どおり共同申請 | 不動産登記法63条3項 |
| 登記名義人の氏名・住所の変更 | 例外登記名義人の氏名・名称・住所についての変更の登記・更正の登記は、登記名義人が単独で申請できる | 不動産登記法64条1項 |
| 収用 | 例外不動産の収用による所有権の移転の登記は、起業者が単独で申請できる | 不動産登記法118条1項 |
| 所有権の登記の抹消 | 例外所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請できる(所有権の移転の登記があるときは、単独では申請できない) | 不動産登記法77条 |
| 死亡・解散で消滅する権利と買戻しの特約の抹消 | 例外権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されていて、その死亡・解散で権利が消滅したときの登記の抹消と、買戻しの特約の登記がされていて契約の日から10年を経過したときの登記の抹消(2023年4月1日から)は、登記権利者が単独で申請できる | 不動産登記法69条 不動産登記法69条の2 |
| 信託の登記 | 例外受託者が単独で申請できる。信託に係る権利の保存・設定・移転・変更の登記の申請と同時に申請しなければならない。受益者又は委託者は、受託者に代わって申請できる | 不動産登記法98条1項 不動産登記法98条2項 不動産登記法99条 |
| 共有物分割禁止の定め | 例外共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記は、その権利の共有者であるすべての登記名義人が共同して申請しなければならない | 不動産登記法65条 |
| 所有権の保存の登記 | ||
| 保存の登記を申請できる者 | 原則申請できるのは、①表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人 ②所有権を有することが確定判決によって確認された者 ③収用によって所有権を取得した者だけ。表題部所有者から所有権を取得した者は、区分建物を除き、自分を名義人とする保存の登記を申請できない | 不動産登記法74条1項 |
| 区分建物 | 例外区分建物は、表題部所有者から所有権を取得した者も、自分を名義人とする保存の登記を申請できる。敷地権付き区分建物のときは、敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない | 不動産登記法74条2項 |
原則の行(色の付いた行)の下に、その例外を並べています。仮登記を単独で申請できる場合は、表4にあります。
まず、原則の共同申請です。登記権利者は登記で直接に利益を受ける者、登記義務者は登記で直接に不利益を受ける登記名義人です(不動産登記法2条12号・13号・60条)。抵当権の設定の登記なら、抵当権者が登記権利者、抵当権を設定する不動産の所有権の登記名義人が登記義務者で、債務者が登記義務者になるのではありません。
次に、判決による登記です。共同して申請しなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、その他方が単独で申請できます。所有権があることを確認するだけの判決では足りません(不動産登記法63条1項)。
相続や法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できます(不動産登記法63条2項)。遺贈は、受遺者が相続人かどうかで扱いが分かれます。相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は、2023年4月1日から、登記権利者が単独で申請できます。相続人でない者に対する遺贈による移転の登記は、原則どおり共同申請です(同条3項・同法60条)。2023年3月31日までは、相続人に対する遺贈でも共同申請だったので、そのころの「遺贈による移転の登記は共同申請」という説明は、いまは相続人でない者に対する遺贈にだけ当てはまります。
また、所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請できます(不動産登記法77条)。買戻しの特約の登記は、契約の日から10年を経過したときに、登記権利者が単独で抹消を申請できるようになりました(2023年4月1日から。同法69条の2)。
表3の後半は、所有権の保存の登記です。74条1項により保存の登記を申請できるのは、表題部所有者(又はその相続人その他の一般承継人)、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者だけです(不動産登記法74条1項。区分建物の例外は同条2項)。表題部所有者から所有権を買い受けた者は、区分建物を除き、自分を名義人とする保存の登記を申請できません。区分建物に限っては、表題部所有者から所有権を取得した者も、自分を名義人とする保存の登記を申請でき、敷地権付き区分建物のときは、敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(同条2項)。
仮登記
表4を読むときの軸は、仮登記は、本登記の順位をあらかじめ確保しておく登記で、仮登記に基づいて本登記をしたときの順位は、仮登記の順位によることです(不動産登記法106条)。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 仮登記ができる場合 | ①権利の保存・設定・移転などがすでに生じているが、申請に必要な登記識別情報や第三者の許可・同意・承諾を証する情報を提供できないとき(1号)②権利の設定・移転・変更・消滅の請求権(始期付き・停止条件付きなど、将来確定することが見込まれるものを含む)を保全しようとするとき(2号) | 不動産登記法105条1号・2号 不動産登記規則178条 |
| 仮登記の申請 | 原則は、仮登記の登記権利者と登記義務者が共同して申請する。仮登記の登記義務者の承諾があるとき、又は裁判所が仮登記の登記権利者の申立てにより仮登記を命ずる処分をしたとき(その決定書の正本を提供する)は、仮登記の登記権利者が単独で申請できる。共同して申請するときも、登記義務者の登記識別情報の提供は要らない | 不動産登記法107条1項 不動産登記法107条2項 不動産登記法108条1項 不動産登記令7条1項5号 |
| 仮登記に基づく本登記の順位 | 本登記の順位は、仮登記の順位による。登記官は、仮登記をしたとき、その次に同じ順位番号で本登記をすることができる余白を設け、本登記はその順位番号でする。仮登記の後も、同じ不動産について第三者への所有権の移転の登記などをすることができる(その第三者は、本登記をするときの登記上の利害関係を有する第三者になる=次の行) | 不動産登記法106条 不動産登記規則179条1項 不動産登記規則179条2項 不動産登記法109条1項 |
| 所有権に関する仮登記に基づく本登記 | 登記上の利害関係を有する第三者(仮登記の後に所有権の移転の登記を受けた者など)がある場合は、その第三者の承諾があるときに限り申請できる。本登記をするときは、登記官が職権でその第三者の権利に関する登記を抹消する | 不動産登記法109条1項 不動産登記法109条2項 |
| 所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記 | 第三者の承諾を要件とする109条1項は、所有権に関する仮登記に基づく本登記についての定めで、抵当権の設定の仮登記に基づく本登記など、所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記には及ばない | 不動産登記法109条1項 |
| 仮登記の抹消 | 仮登記の登記名義人が単独で申請できる(その仮登記の登記名義人の登記識別情報を提供する)。仮登記の登記名義人の承諾があるときは、その仮登記の登記上の利害関係人も単独で申請できる | 不動産登記法110条 不動産登記令8条1項9号 |
所有権に関する仮登記に基づく本登記と、所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記とで、利害関係を有する第三者の承諾の扱いが違います。
仮登記ができるのは、2つの場合です。1つ目は、権利の保存・設定・移転などがすでに生じているが、申請に必要な登記識別情報や第三者の許可・同意・承諾を証する情報を提供できないときです(不動産登記法105条1号、不動産登記規則178条)。2つ目は、権利の設定・移転・変更・消滅の請求権(始期付き・停止条件付きなど、将来確定することが見込まれるものを含む)を保全しようとするときです(不動産登記法105条2号)。
仮登記は、原則として仮登記の登記権利者と登記義務者が共同して申請します。ただし、仮登記の登記義務者の承諾があるとき、又は裁判所が仮登記を命ずる処分をしたときは、仮登記の登記権利者が単独で申請できます(不動産登記法107条1項・108条1項)。共同して申請するときも、登記義務者の登記識別情報を提供する必要はありません(同法107条2項)。仮登記をした後も、同じ不動産について第三者への所有権の移転の登記などをすることができます(不動産登記法106条・109条1項。表4の「仮登記に基づく本登記の順位」の行)。
表4で押さえておきたいのは、本登記のときの第三者の承諾の扱いです。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(仮登記の後に所有権の移転の登記を受けた者など)がある場合には、その第三者の承諾があるときに限り申請でき、本登記をするときは、登記官が職権でその第三者の権利に関する登記を抹消します(不動産登記法109条1項・2項)。この承諾の定めが当てはまるのは、所有権に関する仮登記に基づく本登記に限られ、抵当権の設定の仮登記に基づく本登記など、所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記には及びません。
仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請できます(その仮登記の登記名義人の登記識別情報を提供します)。仮登記の登記名義人の承諾があるときは、その仮登記の登記上の利害関係人も単独で申請できます(不動産登記法110条、不動産登記令8条1項9号)。
分筆・合筆の登記と建物の合併の登記
表5を読むときの軸は、分筆・合筆の登記と建物の合併の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人だけが申請でき、申請の義務の定めはないという点です(不動産登記法39条1項・54条1項)。地上権者なども、分筆の登記は申請できません。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 申請できる者 | 分筆・合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請できない(地上権者などは申請できない)。建物の分割・区分・合併の登記も同じ | 不動産登記法39条1項 不動産登記法54条1項 |
| 登記官の職権による分筆・合筆 | 一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域を異にするに至ったときは、申請がなくても、登記官が職権で分筆の登記をしなければならない。地図を作成するため必要があると認めるときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆・合筆の登記ができる | 不動産登記法39条2項 不動産登記法39条3項 |
| 合筆の登記ができない土地 | ①相互に接続していない土地 ②地目又は地番区域が相互に異なる土地 ③表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地 ④表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地 ⑤所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地 ⑥所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地。ただし、⑥のうち、承役地についてする地役権の登記や、登記の目的・申請の受付の年月日と受付番号・登記原因とその日付が同一の担保権の登記などがある土地は、合筆の登記ができる | 不動産登記法41条1号・2号・3号・4号・5号・6号 不動産登記規則105条1号・2号 |
| 所有権以外の権利の登記がある土地の分筆 | 抵当権・地役権などの登記がある土地も分筆の登記ができ、申請するのは表題部所有者又は所有権の登記名義人(上の行)。分筆後の土地にも権利に関する登記が転写され(転写するのは現に効力を有する登記だけ)、担保権は登記官が共同担保目録を作成する(地役権は、分筆後の土地に存続することとなる場合に転写)。抵当権者などの承諾を証する情報を提供するのは、分筆後のいずれかの土地についてその権利が消滅した旨の登記をするとき。承役地の分筆で地役権設定の範囲が分筆後の土地の一部のときは、その範囲を証する地役権者が作成した情報と地役権図面を提供する | 不動産登記法40条 不動産登記規則5条1項 不動産登記規則102条1項 不動産登記規則104条1項 不動産登記令7条1項6号 |
| 合筆・建物の合併と登記識別情報 | 所有権の登記がある土地の合筆の登記は、合筆に係る土地のうちいずれか一筆の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足りる。所有権の登記がある建物の合併の登記も、いずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報で足りる | 不動産登記法22条 不動産登記令8条1項1号・3号 不動産登記令8条2項1号・3号 |
| 建物の合併の登記ができない建物 | ①共用部分である旨・団地共用部分である旨の登記がある建物 ②表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物 ③表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする建物 ④所有権の登記がない建物と所有権の登記がある建物 ⑤所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物。ただし、⑤のうち、登記の目的・申請の受付の年月日と受付番号・登記原因とその日付が同一の担保権の登記などがある建物は、合併の登記ができる | 不動産登記法56条1号・2号・3号・4号・5号 不動産登記規則131条1号 |
分筆・合筆の登記と建物の合併の登記には、申請の義務の定めがありません(申請の義務がある登記は表2)。
ただし、登記官が職権で分筆の登記をしなければならない場合があります。一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域を異にするに至ったときです(不動産登記法39条2項)。また、地図を作成するため必要があると認めるときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆・合筆の登記ができます(同条3項)。
合筆の登記ができない土地は、相互に接続していない土地、地目又は地番区域が相互に異なる土地、表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地や持分を異にする土地、所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地です(不動産登記法41条1号〜6号)。ただし、最後のものでも、承役地についてする地役権の登記や、登記の目的・申請の受付の年月日と受付番号・登記原因とその日付が同一の担保権の登記などがある土地は、合筆の登記ができます(不動産登記規則105条1号・2号)。建物の合併の登記にも、似た制限があります。ただし、接続や地目の制限はなく、共用部分である旨・団地共用部分である旨の登記がある建物の制限があります(不動産登記法56条1号〜5号、不動産登記規則131条1号)。
反対に、抵当権や地役権などの登記がある土地も、分筆の登記はできます。分筆後の土地には、現に効力を有する権利に関する登記が転写され(地役権は、分筆後の土地に存続することとなる場合)、担保権は登記官が共同担保目録を作成します(不動産登記規則5条1項・102条1項)。抵当権者などの承諾を証する情報を提供するのは、分筆後のいずれかの土地についてその権利が消滅した旨の登記をするときです(不動産登記法40条、不動産登記規則104条1項)。所有権の登記がある土地の合筆の登記は、合筆に係る土地のうちいずれか一筆の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足ります(不動産登記法22条、不動産登記令8条1項1号・2項1号)。
区分建物の登記
表6を読むときの軸は、一棟の建物が新築されたときなどの区分建物の表題登記は、その一棟の建物に属するほかの区分建物の表題登記と一括して申請し、敷地権は、区分建物の表題部と、土地の登記記録の権利部(敷地権である旨の登記)の両方に記録されることです(不動産登記法48条1項・44条1項9号・46条)。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 区分建物の表題登記の申請 | 区分建物が属する一棟の建物が新築されたときの区分建物の表題登記は、その一棟の建物に属する他の区分建物の表題登記と併せて(一括して)申請しなければならない。区分建物の所有者は、他の区分建物の所有者に代わって、その表題登記を申請できる | 不動産登記法48条1項 不動産登記法48条2項 |
| 表題登記の申請の義務と一般承継人 | 建物を新築して所有権を取得した者には、1か月以内に表題登記を申請する義務がある(表2)が、表題登記がない区分建物を、建築した者から取得した者には、この義務はない。区分建物を新築した後、その所有者に相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする表題登記を申請できる | 不動産登記法47条1項 不動産登記法47条2項 |
| 区分建物の床面積 | 壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による(区分建物以外の建物は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による) | 不動産登記規則115条 |
| 敷地権と敷地権である旨の登記 | 専有部分と分離して処分することができない登記された敷地利用権(敷地権)は、区分建物の表題部に登記する。登記官は、敷地権について表題部に最初に登記をするとき、職権で、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に、所有権・地上権などが敷地権である旨の登記をする | 不動産登記法44条1項9号 不動産登記法46条 不動産登記規則119条1項 |
| 敷地権付き区分建物についての登記 | 敷地権付き区分建物についての所有権・担保権の登記は、原則として、敷地権についてされた登記としての効力を有する(敷地権の登記をする前に登記されたものなど、73条1項ただし書の各号の登記を除く)。敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記や、敷地権を目的とする担保権の登記はできない。ただし、その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じた質権・抵当権の登記(一般の先取特権は含まない)などは、することができる | 不動産登記法73条1項 不動産登記法73条2項 |
| 共用部分である旨の登記(規約共用部分) | 建物の表示に関する登記の登記事項で、その建物の登記記録の表題部にする。申請できるのは、その建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人だけ。この登記をするときは、登記官が職権で、表題部所有者の登記や権利に関する登記を抹消する | 不動産登記法44条1項6号 不動産登記法58条2項 不動産登記法58条4項 |
| 構造上の共用部分 | 区分建物は、区分所有権の目的となる専有部分(規約で共用部分とされたものを含む)。数個の専有部分に通ずる廊下・階段室など、構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないので、区分建物として登記することはできない | 不動産登記法2条22号 区分所有法4条1項 |
区分建物の所有権の保存の登記を申請できる者は、表3にあります。
区分建物の所有者は、ほかの区分建物の所有者に代わって、その表題登記を申請できます(不動産登記法48条2項)。表題登記の申請の義務があるのは、建物を新築して所有権を取得した者で、表題登記がない区分建物を、建築した者から取得した者には、この義務はありません(同法47条1項)。区分建物を新築した後、その所有者に相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする表題登記を申請できます(同条2項)。
床面積の測り方も、区分建物とそれ以外の建物で異なります。区分建物は壁その他の区画の内側線で囲まれた部分、区分建物以外の建物は壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によります(不動産登記規則115条)。
敷地権である旨の登記は、敷地権の目的である土地の登記記録の、表題部ではなく権利部の相当区に、登記官が職権でします(不動産登記法46条、不動産登記規則119条1項)。敷地権付き区分建物についての所有権や担保権の登記は、原則として、敷地権についてされた登記としての効力を有します(敷地権の登記をする前に登記されたものなど、不動産登記法73条1項ただし書の各号の登記を除く)。そして、敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記や、敷地権を目的とする担保権の登記はできません。ただし、その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じた質権・抵当権の登記(一般の先取特権は含まない)などは、することができます(同条2項)。
規約で共用部分とした建物は、共用部分である旨の登記を、その建物の登記記録の表題部にします。この登記を申請できるのは、その建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人だけで、登記をするときは、登記官が職権で表題部所有者の登記や権利に関する登記を抹消します(不動産登記法44条1項6号・58条2項・4項)。なお、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)では、数個の専有部分に通ずる廊下や階段室のように、構造上共用に供される建物の部分は、区分所有権の目的となりません(区分所有法4条1項)。そのため、区分建物として登記することはできません(不動産登記法2条22号)。
共用部分の変更や規約の設定、集会の決議といった区分所有法の中身は、このページでは扱っていません。集会の決議要件と2026年4月1日の改正は、宅建の区分所有法のページで整理しています。
登記の申請の手続と登記事項証明書
表7を読むときの軸は、申請はオンラインか書面の提出(送付でもよい)で、登記所に出頭する必要はなく、登記記録の内容は登記事項証明書で何人も確かめられるが、申請書などの附属書類の閲覧は、正当な理由があるときに、正当な理由があると認められる部分に限られる(登記を申請した者は、自己を申請人とする登記記録の附属書類を閲覧できる)ことです(不動産登記法18条1号・2号・119条1項・121条3項・4項、不動産登記規則53条1項)。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 申請の方法 | 電子情報処理組織を使用する方法(オンライン)か、申請情報を記載した書面を提出する方法のどちらか。書面は送付(書留郵便など)で提出することもでき、登記所に出頭しなくてよい | 不動産登記法18条1号・2号 不動産登記規則53条1項 |
| 委任による代理人の権限 | 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡、本人である法人の合併による消滅、法定代理人の死亡などによっては消滅しない | 不動産登記法17条1号・2号・4号 |
| 一の申請情報による申請 | 申請情報は、登記の目的と登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供するのが原則。同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的と、登記原因及びその日付が同一であるときなどは、一の申請情報で申請できる(「など」は、同一の債権を担保する担保権の登記で登記の目的が同一のときなど、法務省令で定めるとき) | 不動産登記令4条 不動産登記規則35条10号 |
| 第三者の許可を証する情報と印鑑に関する証明書 | 登記原因について第三者の許可・同意・承諾を要するときは、それを証する情報を申請情報と併せて提供する。書面で申請するときに添付する印鑑に関する証明書は、作成後3か月以内のものでなければならない | 不動産登記令7条1項5号 不動産登記令16条3項 |
| 登記の抹消と登記上の利害関係を有する第三者 | 権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合は、その第三者の承諾があるときに限り申請できる。申請情報と併せて、その第三者の承諾を証する第三者が作成した情報、又はその第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供する(所有権に関する仮登記に基づく本登記の承諾も、同じ形の情報を提供する) | 不動産登記法68条 不動産登記令7条1項6号 |
| 登記識別情報の通知と登記完了証 | 登記をすることで申請人自らが登記名義人となる場合に、その登記を完了したとき、登記官がその申請人に通知する。申請人があらかじめ通知を希望しない旨の申出をしたときなどは通知しない。債権者が債務者に代位して申請した登記では、登記名義人になるのは債務者なので、申請した債権者には通知されない。登記官は、申請に基づいて登記を完了したときは、申請人に登記完了証を交付する(送付の方法による交付を求めるときは、その旨と送付先の住所を申請情報の内容とする) | 不動産登記法21条 不動産登記規則64条1項1号 不動産登記規則181条1項 不動産登記規則182条2項 |
| 登記識別情報の提供 | 登記権利者と登記義務者が共同して申請する権利に関する登記と、政令で定める登記では、登記義務者(政令で定める登記は登記名義人)の登記識別情報を提供する。政令で定める登記は、所有権の登記がある土地の合筆・建物の合体・建物の合併、共有物分割禁止の定めに係る権利の変更、所有権の移転の登記がない場合の所有権の登記の抹消、質権・抵当権の順位の変更、仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消など(確定判決による登記を除く)。相続・法人の合併による移転の登記は、共同申請でも政令で定める登記でもないので、提供しない。登記識別情報が通知されなかった場合その他、提供できないことに正当な理由があるときは提供しなくてよく、そのときは登記官が登記義務者に事前通知をする。資格者代理人から本人確認のための情報の提供を受け、登記官がその内容を相当と認めたときは、この事前通知をしない(資格者代理人による申請であることで、提供が要らなくなるのではない) | 不動産登記法22条 不動産登記令8条1項 不動産登記法23条1項 不動産登記法23条4項1号 |
| 申請の却下と補正 | 申請に係る不動産の所在地が申請を受けた登記所の管轄に属しないとき、申請情報と併せて提供しなければならない情報が提供されないときなど、25条の各号に当たるときは、登記官は理由を付した決定で申請を却下しなければならない。ただし、補正できる不備を、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは却下しない。管轄に属しない不動産について権利に関する登記がされたことを後で発見したときは、登記官が異議の手続を経て職権で抹消する(権利に関する登記についての定め) | 不動産登記法25条 不動産登記法25条1号 不動産登記法25条9号 不動産登記法71条1項 不動産登記法71条4項 |
| 二以上の登記所の管轄区域にまたがる不動産 | 法務大臣又は法務局・地方法務局の長が、その不動産の登記の事務をつかさどる登記所を指定する。指定がされるまでの間は、どちらか一の登記所に申請できる | 不動産登記法6条2項 不動産登記法6条3項 |
| 登記事項証明書 | 何人も、手数料を納付して交付を請求できる(利害関係を明らかにする必要はない)。登記事項証明書は、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面で、現に効力を有するものだけを記載した証明書(現在事項証明書)も請求できる。送付の方法でも請求でき、電子情報処理組織を使用して請求情報を提供する方法で請求することもできる(電子情報処理組織を使用して請求したときは、送付で受け取ることも、その旨を請求情報の内容として登記所で受け取ることもできる)。不動産を管轄する登記所以外の登記所にも請求できる | 不動産登記法119条1項 不動産登記法119条5項 不動産登記規則196条1項1号・2号 不動産登記規則193条1項7号 不動産登記規則194条3項 |
| 登記簿の附属書類の閲覧 | 土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図は、何人も写しの交付と閲覧を請求できる。それ以外の附属書類(申請書など)は、正当な理由があるときに、正当な理由があると認められる部分に限り閲覧を請求できる(登記を申請した者は、自己を申請人とする登記記録の附属書類を閲覧できる)。2023年3月31日までは、図面以外の附属書類の閲覧は「請求人が利害関係を有する部分に限る」定めだった | 不動産登記法121条1項 不動産登記法121条2項 不動産登記法121条3項 不動産登記法121条4項 不動産登記令21条1項 |
| 地図と筆界特定書の写し | 地図は、一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示する。地図・建物所在図・地図に準ずる図面の写しは、何人も交付を請求できる。筆界特定書等の写しも、何人も交付を請求できる(筆界特定手続記録のうち筆界特定書等以外のものの閲覧は、利害関係を有する部分に限る) | 不動産登記法14条2項 不動産登記法120条1項 不動産登記法149条1項 不動産登記法149条2項 |
登記識別情報は、登記名義人が自ら登記を申請していることを確かめるための符号その他の情報です。
まず、申請の手続です。登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡、本人である法人の合併による消滅、法定代理人の死亡などによっては消滅しません(不動産登記法17条1号・2号・4号)。申請情報は、一の不動産ごとに作成して提供するのが原則ですが、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について、登記の目的と、登記原因及びその日付が同一であるときなどは、一の申請情報で申請できます(不動産登記令4条、不動産登記規則35条10号)。書面で申請するときに添付する印鑑に関する証明書は、作成後3か月以内のものでなければなりません(不動産登記令16条3項)。
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合は、その第三者の承諾があるときに限り申請できます。このときは、その第三者の承諾を証する情報か、その第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供します(不動産登記法68条、不動産登記令7条1項6号)。
次に、登記識別情報です。登記官は、申請人自らが登記名義人となる登記を完了したときに、その申請人に登記識別情報を通知します。債権者が債務者に代位して申請した登記では、登記名義人になるのは債務者なので、申請した債権者には通知されません(不動産登記法21条)。登記識別情報を提供するのは、共同して申請する権利に関する登記と、政令で定める登記で、相続や法人の合併による移転の登記では提供しません(同法22条、不動産登記令8条1項)。提供できないことに正当な理由があるときは、登記官が登記義務者に事前通知をします。資格者代理人から本人確認のための情報の提供を受け、登記官がその内容を相当と認めたときは、この事前通知をしません(不動産登記法23条1項・4項1号)。資格者代理人による申請であっても、登記識別情報の提供が不要になるわけではない点に注意しましょう。
申請に係る不動産の所在地が申請を受けた登記所の管轄に属しないときや、申請情報と併せて提供しなければならない情報が提供されないときなどは、登記官は理由を付した決定で申請を却下しなければなりません。ただし、補正できる不備を、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは却下しません(不動産登記法25条)。
最後に、登記事項証明書と附属書類です。登記事項証明書は、何人も、手数料を納付して交付を請求でき、利害関係を明らかにする必要はありません。不動産を管轄する登記所以外の登記所にも請求できます(不動産登記法119条1項・5項)。土地所在図・地積測量図などの図面も、何人も写しの交付と閲覧を請求できます。これに対して、申請書などそれ以外の附属書類は、正当な理由があるときに、正当な理由があると認められる部分に限り閲覧を請求できます(同法121条1項〜3項)。ただし、登記を申請した者は、自己を申請人とする登記記録の附属書類を閲覧できます(同条4項)。2023年3月31日までは「請求人が利害関係を有する部分に限る」という定めだったので、その定めのままの説明には注意しましょう。
不動産登記法の選択肢で迷ったときは、まず表示に関する登記か権利に関する登記かを決めてから、申請の義務については表2、誰が申請するかについては表3の行に戻って見直してみましょう。仮登記・分筆や合筆・区分建物・申請の手続については、それぞれ表4〜表7の行で確かめられます。
よくある質問
相続による所有権の移転の登記(相続登記)は、いつまでに申請しなければなりませんか?
不動産登記法76条の2第1項の定めでは、相続(相続人に対する遺贈を含む)により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。2024年4月1日からの定めで、それより前に開始した相続も対象です(そのときの3年は、知った日と2024年4月1日のいずれか遅い日から。令和3年法律第24号の附則5条6項)。期間内に相続人である旨の申出をすれば、申請の義務を履行したものとみなされます(申出の前にされた遺産の分割で取得した分を除く。不動産登記法76条の3第1項・2項)。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます(同法164条1項)。
住所が変わったときの登記は、しなければなりませんか?
所有権の登記名義人は、氏名・住所に変更があった日から2年以内に、その変更の登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の5)。2026年4月1日からの定めで、それより前にあった変更も対象です(そのときの2年は、変更があった日と2026年4月1日のいずれか遅い日から。令和3年法律第24号の附則5条7項)。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処されます(不動産登記法164条2項)。一方、表題部所有者の氏名・住所の変更の登記には、申請の義務がありません(同法31条)。このページの表2で、登記の種類ごとに確かめられます。
建物を新築したら、所有権の保存の登記も申請しなければなりませんか?
所有権の保存の登記には、申請の義務がありません(不動産登記法74条1項)。建物を新築して所有権を取得した者が、所有権を取得した日から1か月以内に申請しなければならないのは、建物の表題登記です(同法47条1項)。正当な理由がないのに表題登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます(同法164条1項)。
仮登記に基づく本登記で、第三者の承諾が要るのはどんなときですか?
所有権に関する仮登記に基づく本登記で、登記上の利害関係を有する第三者(仮登記の後に所有権の移転の登記を受けた者など)がいるときです。この本登記は、その第三者の承諾があるときに限り申請でき、本登記をするときは、登記官が職権でその第三者の権利に関する登記を抹消します(不動産登記法109条1項・2項)。抵当権の設定の仮登記に基づく本登記など、所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記には、この承諾の定めは及びません。
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