宅建試験の借地借家法で区別がつきにくいのは、借地にも借家にも「普通」と「定期」があり、さらに「一時使用」もあることです。このページでは、宅建試験の受験生に向けて、普通借地権と定期借地権、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の違いを、借地と借家に分けて表で整理しました。普通建物賃貸借・定期建物賃貸借は、一般には普通借家・定期借家と呼ばれます。
まず結論をお伝えすると、借地借家法は、借地(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)と借家(建物の賃貸借)について、民法の賃貸借に特別の定めを置いた法律です。普通借地権・普通建物賃貸借は、更新などの定めで借主を守ります。定期借地権・定期建物賃貸借は、更新がなく、期間の満了などで確実に終わります(借地借家法1条・2条1号・22条〜24条・38条1項)。
このページでは、借地を表1〜表3、借家を表4・表5で整理し、最後に表6で、民法の賃貸借との違いを確かめます。表1(借地)と表4(借家)は、どちらも「普通・定期・一時使用」の同じ並びにしてあるので、見比べると共通点と違いがつかみやすくなります。まずは表1から見ていきましょう。
本記事は、2026年9月時点で施行されている借地借家法・民法にもとづいています。令和9年度(2027年度)試験の法令基準日は2027年4月1日です。
借地権の種類(普通借地権・定期借地権・一時使用目的の借地権)の違い
普通借地権と定期借地権(略して普通借・定借とも呼ばれます)を見分けるときは、普通借地権が借地権者を守る「更新」「建物の再築による存続期間の延長」「建物買取請求」の3つが、ほかの借地権でどう扱われるかに注目してみましょう。一般定期借地権と、存続期間30年以上50年未満の事業用定期借地権は、この3つがない旨を特約で定めます(借地借家法22条1項・23条1項)。存続期間10年以上30年未満の事業用定期借地権には、3つの定めを含む3条〜8条・13条・18条が、はじめから適用されません(同法23条2項)。一時使用目的の借地権にも、3条〜8条・13条などが適用されません(同法25条)。ただし、これは覚えるための整理です。建物譲渡特約付借地権は、この3つがない旨を定める特約ではなく、建物を借地権設定者に譲渡することで借地権が消滅するものです(同法24条1項)。正誤は、表1の条文の列で判断します。
「出題」は、昭和63年〜令和7年の本試験の過去問で、年度と問番号を確かめたものだけを載せています。「直近10年」は平成28年〜令和7年の本試験で、その行の論点が選択肢に出た回数です。「問われ方」は、過去問で誤りの選択肢として出た形です。正しい選択肢としてだけ出たものは「(正しい選択肢として出題)」としています。「注意」は、過去問では確かめていませんが、誤解しやすい点です。
| 項目 | 普通借地権 | 定期借地権(22条〜24条) | 一時使用目的の借地権 | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| どんな借地権か | 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権(借地権)のうち、定期借地権・一時使用目的の借地権に当たらないもの | 22条〜24条の要件を満たして設定した借地権。更新がなく、期間の満了などで確実に終わる | 臨時設備の設置その他一時使用のために設定したことが明らかな借地権。3条〜8条・13条・17条・18条・22条〜24条は適用されない | 借地借家法2条1号 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 借地借家法25条 |
| 存続期間 | 30年。契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間(30年より短い期間を定めても30年になる) | 類型ごとに決まっている。一般定期借地権は50年以上、事業用定期借地権等は10年以上50年未満、建物譲渡特約付借地権は設定後30年以上を経過した日に建物を譲渡する(表2) | 3条は適用されない(当事者が定めた期間による) | 借地借家法3条 借地借家法9条 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 借地借家法25条 |
| 契約の更新 | 存続期間が満了する場合、建物がある場合に限り、更新の請求又は土地の使用の継続により、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす(借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときを除く。異議には正当の事由が必要) | 一般定期借地権と事業用定期借地権(30年以上50年未満)は、更新がない旨を特約で定める。事業用定期借地権(10年以上30年未満)には、更新の規定が適用されない。建物譲渡特約付借地権は、建物の譲渡によって借地権が消滅する | 5条・6条は適用されない(更新の請求・土地の使用の継続による更新はない) | 借地借家法5条1項 借地借家法5条2項 借地借家法6条 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 借地借家法25条 |
| 更新後の期間 | 更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新は20年)。当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間 | 一般定期借地権・事業用定期借地権等には更新がないので、この定めは働かない | 4条は適用されない | 借地借家法4条 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法25条 |
| 建物の再築による期間の延長 | 存続期間の満了前に建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する(築造する旨の通知を受けて2か月以内に異議を述べなければ、承諾があったものとみなす。更新の後の通知を除く)。延長は建物の滅失の後の築造によるもので、増築では延長されない | 一般定期借地権と事業用定期借地権(30年以上50年未満)は、建物の築造による存続期間の延長がない旨を特約で定める。事業用定期借地権(10年以上30年未満)には、7条が適用されない | 7条は適用されない | 借地借家法7条1項 借地借家法7条2項 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法25条 |
| 建物買取請求 | 存続期間が満了し、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他権原により土地に附属させた物を時価で買い取るよう請求できる | 一般定期借地権と事業用定期借地権(30年以上50年未満)は、買取りの請求をしない旨を特約で定める。事業用定期借地権(10年以上30年未満)には、13条が適用されない | 13条は適用されない | 借地借家法13条1項 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法25条 |
| 契約の方式 | 定めはない(書面によらなくても成立する) | 一般定期借地権の特約は、公正証書による等書面(電磁的記録でもよい)。事業用定期借地権等の設定を目的とする契約は、公正証書に限る。建物譲渡特約付借地権の特約には、方式の定めがない。どの類型にも、定期建物賃貸借のような、契約の前に書面を交付して説明する定めはない | 定めはない | 借地借家法22条1項 借地借家法22条2項 借地借家法23条3項 借地借家法24条1項 |
| 対抗力(借地権の登記がないとき) | 土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗できる(表3) | 同じ(定期借地権にも10条が適用される) | 同じ(25条は10条の適用を除いていない) | 借地借家法10条1項 借地借家法25条 |
| 借地権者に不利な特約 | 3条〜8条に反する特約で借地権者に不利なものは、無効(9条)。10条・13条・14条(16条)と17条〜19条(21条)も同じ | 22条・23条1項の特約は、9条・16条にかかわらず定められる。24条の特約は、9条にかかわらず定められる | 存続期間・更新などの規定が適用されないので、期間を短く定めたり、更新がない旨を定めたりできる | 借地借家法9条 借地借家法16条 借地借家法21条 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法24条1項 借地借家法25条 |
「定期借地権」は、一般定期借地権(22条)・事業用定期借地権等(23条)・建物譲渡特約付借地権(24条)の3つをまとめた列です。3つの違いは表2にあります。
まず、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことです(借地借家法2条1号)。借地権と土地の賃借権は別のものではなく、建物の所有を目的とする土地の賃借権が借地権に当たり、同じ目的の地上権も借地権に含まれます。駐車場や資材置場のように、建物の所有を目的としない土地の賃貸借は、借地権ではありません(表6)。地上権と賃借権の違いそのものは民法の論点なので、このページでは扱いません。土地の賃借権である借地権の譲渡・転貸について、裁判所が承諾に代わる許可を与える制度は、表3で扱います。
一方で、表1の3つの借地権のいずれにも共通するのが、対抗力です。借地権の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗できます。定期借地権にも一時使用目的の借地権にも、この10条は適用されます(借地借家法10条1項・25条)。
存続期間と更新
普通借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間です(借地借家法3条)。30年より短い期間を定めても、借地権者に不利な特約として無効になり、存続期間は30年になります(同法9条)。
存続期間が満了するときは、建物がある場合に限り、借地権者が更新を請求するか、土地の使用を継続すれば、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法5条1項・2項)。借地権設定者は、遅滞なく異議を述べれば更新を拒めますが、その異議には正当の事由が必要です(同法5条1項・6条)。更新後の期間は、借地権の設定後の最初の更新が20年、2回目以降が10年で、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間です(同法4条)。
建物の再築と建物買取請求
存続期間の満了前に建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得て、残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権は、承諾があった日か建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続します(借地借家法7条1項。残存期間がこれより長いときなどは、その期間)。借地権者が築造する旨を通知し、借地権設定者が2か月以内に異議を述べなかったときも、承諾があったものとみなされます(同条2項。契約の更新の後の通知を除く)。この延長は、建物が滅失した後の再築によるもので、増築では延長されません。
建物買取請求は、存続期間が満了し、契約の更新がないときに、借地権者が借地権設定者に対し、建物その他権原により土地に附属させた物を時価で買い取るよう請求できる権利です(借地借家法13条1項)。建物の滅失と再築の場面の扱い(当初の存続期間中か、更新の後か)と、買取請求の効果は、表3で扱います。
借地権者に不利な特約
3条〜8条に反する特約で借地権者に不利なものは、無効です(借地借家法9条)。対抗力・建物買取請求などの10条・13条・14条に反する特約(同法16条)や、裁判所の許可の17条〜19条に反する特約(同法21条)も、借地権者に不利なものは無効です。定期借地権の特約は、この例外として条文が認めたもので、22条・23条1項の特約は9条・16条にかかわらず、24条の特約は9条にかかわらず定めることができます(同法22条1項・23条1項・24条1項)。
定期借地権の3つの類型の違い
表2の3つの類型を見分けるには、存続期間(50年以上/10年以上50年未満/設定後30年以上を経過した日に建物を譲渡)と、契約の方式(公正証書による等書面/公正証書に限る/定めがない)を対にして押さえ、建物の用途の制限は事業用定期借地権等だけにあることを意識しておきましょう。
| 項目 | 一般定期借地権(22条) | 事業用定期借地権等(23条) | 建物譲渡特約付借地権(24条) | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 存続期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満(30年以上50年未満は23条1項、10年以上30年未満は23条2項) | 設定後30年以上を経過した日に、建物を借地権設定者に譲渡する旨を定める | 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 |
| 建物の用途 | 制限はない(居住の用に供する建物でもよい) | 専ら事業の用に供する建物に限る(居住の用に供するものを除く。従業員の社宅や賃貸マンション・アパートも、居住の用に供する建物に当たる) | 制限はない | 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 |
| 契約の方式 | 更新などがない旨の特約は、公正証書による等書面でする(公正証書に限らない。電磁的記録でもよい) | 設定を目的とする契約は、公正証書でしなければならない(存続期間の長短を問わない) | 定めはない(書面によらなくてもよい) | 借地借家法22条1項 借地借家法22条2項 借地借家法23条3項 借地借家法24条1項 |
| 定める内容 | 契約の更新がない・建物の築造による存続期間の延長がない・建物買取請求をしない、の3つ | 30年以上50年未満は、一般定期借地権と同じ3つを特約で定める。10年以上30年未満は、3条〜8条・13条・18条が適用されない | 借地権を消滅させるため、建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する | 借地借家法22条1項 借地借家法23条1項 借地借家法23条2項 借地借家法24条1項 |
| 借地権が消滅した後の建物の使用 | — | — | 使用を継続している借地権者又は建物の賃借人が請求をしたときは、期間の定めのない建物の賃貸借がされたものとみなす(借地権者が請求し、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする)。借賃は、当事者の請求により裁判所が定める。定期建物賃貸借の契約をしたときは、その定めに従う | 借地借家法24条2項 借地借家法24条3項 |
| 建物譲渡特約との組合せ | 建物譲渡特約を付けられる | 30年以上50年未満には付けられる。10年以上30年未満には付けられない | 10年以上30年未満の事業用定期借地権を設定する場合を除き、借地権を設定する場合に付けられる | 借地借家法24条1項 |
「事業用定期借地権等」は、存続期間30年以上50年未満のもの(23条1項)と、10年以上30年未満のもの(23条2項)の2つです。
まず、一般定期借地権です。存続期間を50年以上とし、契約の更新がない・建物の築造による存続期間の延長がない・建物買取請求をしない、の3つを特約で定めます(借地借家法22条1項)。この特約は、公正証書による等書面によってしなければなりません。公正証書に限らずほかの書面でもよく、令和4年5月18日からは、電磁的記録でしてもかまいません(同条2項)。建物の用途に制限はなく、居住の用に供する建物のための借地にも設定できます。
次に、事業用定期借地権等です。専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的とし、存続期間が30年以上50年未満のもの(借地借家法23条1項)と、10年以上30年未満のもの(同条2項)の2つがあります。30年以上50年未満のものは、一般定期借地権と同じ3つを特約で定めます。10年以上30年未満のものには、3条〜8条・13条・18条がはじめから適用されません。そして、どちらも、設定を目的とする契約は公正証書でしなければなりません(同条3項)。「事業用なら10年以上50年未満」と1つにまとめて覚えるときは、23条1項と2項で仕組みが違うことに注意しましょう。なお、従業員の社宅や賃貸マンション・アパートも居住の用に供する建物に当たるので、そのための借地に事業用定期借地権等は設定できません(表2の「建物の用途」の行)。
最後に、建物譲渡特約付借地権です。借地権を設定する場合に、借地権を消滅させるため、設定後30年以上を経過した日に借地上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めるもので、特約の方式に定めはありません(借地借家法24条1項)。この特約は、普通借地権・一般定期借地権・30年以上50年未満の事業用定期借地権には付けられますが、10年以上30年未満の事業用定期借地権には付けられません(同項)。
なお、定期借地権には、3つの類型のどれにも、定期建物賃貸借のような、契約の前に書面を交付して説明する定めはありません(表1の「契約の方式」の行)。借家の定期建物賃貸借の手続と混同しないようにしたいところです。
借地権の対抗力と、借地上の建物をめぐる権利
表3で押さえておきたいのは、借地権の登記がなくても、借地権者が登記されている建物を所有していれば第三者に対抗でき、その建物が滅失しても、滅失の日から2年を経過するまでは、土地の上の掲示で対抗力を保てるという流れです(借地借家法10条1項・2項)。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 借地権の対抗力(建物の登記) | 借地権の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗できる。建物の登記は借地権者本人の名義に限る(配偶者・子など家族の名義では対抗できない=判例)。表示の登記でもよい(判例)。借地権者がその建物に住んでいなくてもよい。登記の所在地番・床面積が実際と多少違っても、建物の同一性が認められる程度の軽微な違いなら対抗できる(判例) | 借地借家法10条1項 |
| 対抗力の及ぶ土地の範囲 | 登記した建物がある土地には対抗力が及ぶ(1筆の土地の上に数棟の建物があるときは、1棟に登記があればよい)。建物のない別の筆の土地(庭として使っているだけの土地など)には及ばない(判例) | 借地借家法10条1項 |
| 転借地権者の対抗 | 転借地権者は、自ら対抗力を備えていなくても、借地権者が登記した建物を所有しているときは、借地権者の借地権を援用して、転借地権を第三者に対抗できる(判例) | 借地借家法10条1項 |
| 登記した建物が滅失したとき(土地の上の掲示) | 借地権者が登記されている建物を所有していて、その建物が滅失したときは、建物を特定するために必要な事項、滅失があった日、建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示すれば、なお対抗できる(もともと未登記の建物では、掲示しても対抗できない)。滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物を登記した場合に限る | 借地借家法10条1項 借地借家法10条2項 |
| 建物買取請求の効果と、請求できない場合 | 請求すると、建物の所有権は借地権設定者に移り、借地権者は代金の支払を受けるまで建物(敷地を含む)の引渡しを拒めるが、その間の敷地の地代に相当する額は返す(判例)。地代の不払いなど借地権者の債務不履行によって契約が解除されたときは、建物買取請求はできない(判例) | 借地借家法13条1項 |
| 転借地権者と、建物を取得した第三者の買取請求 | 転借地権者も、借地権設定者に対し直接、建物の買取りを請求できる。借地上の建物を取得した第三者は、借地権設定者が賃借権の譲渡・転貸を承諾しないときは、建物を時価で買い取るよう請求できる(時価は建物の価格で、借地権の価格は含まない=判例) | 借地借家法13条3項 借地借家法14条 |
| 当初の存続期間中の建物の滅失と再築 | 建物が滅失しても、借地権は消滅しない。借地権設定者の承諾がないと、存続期間は延長されない。地上権の放棄・土地の賃貸借の解約の申入れ(借地権者)も、地上権の消滅の請求・土地の賃貸借の解約の申入れ(借地権設定者)も、契約の更新の後に限られる。承諾なく残存期間を超える建物を築造していても、存続期間の満了で買取りを請求でき、裁判所は借地権設定者の請求で代金の支払に期限を許与できる。転借地権者の築造は、借地権者の築造とみなす | 借地借家法7条1項 借地借家法7条3項 借地借家法8条1項 借地借家法8条2項 借地借家法13条2項 |
| 更新の後の建物の滅失 | 借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れができる。借地権者が承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れができる。いずれも申入れなどの日から3か月で借地権が消滅する。やむを得ない事情があるのに借地権設定者が承諾しないときは、借地権者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができる(借地権設定者が消滅の請求・解約の申入れをできない旨を定めた場合を除く) | 借地借家法8条1項 借地借家法8条2項 借地借家法8条3項 借地借家法18条1項 |
| 地代等の増減請求 | 経済事情の変動などで不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって増減を請求できる(定期借地権にも適用される)。一定の期間増額しない特約があれば、その定めに従う(減額しない特約があっても、減額を請求できる)。増額の協議が調わないときは、裁判の確定まで相当と認める額を支払えば足り、確定後の不足額には年1割の利息を付けて支払う | 借地借家法11条1項 借地借家法11条2項 借地借家法11条3項 |
| 借地権設定者の先取特権 | 弁済期の到来した最後の2年分の地代等について、借地権者がその土地に所有する建物の上に先取特権を持つ | 借地借家法12条1項 |
| 借地条件の変更と増改築の許可 | 建物の種類・構造・規模・用途を制限する借地条件の変更は、当事者(借地権者・借地権設定者のどちらでも)の申立てにより、裁判所が変更できる。増改築の承諾に代わる許可は、借地権者の申立てにより、裁判所が与える。裁判所は、利益の衡平を図るため、ほかの借地条件の変更や財産上の給付を命じるなどの処分もできる | 借地借家法17条1項 借地借家法17条2項 借地借家法17条3項 |
| 土地の賃借権の譲渡・転貸の許可 | 借地上の建物を第三者に譲渡しようとするとき、借地権設定者に不利となるおそれがないのに承諾しないときは、借地権者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができる。この申立てがあったときに限り、借地権設定者は、裁判所が定める期間内に、自ら建物と賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる。借地上の建物を賃貸しても、土地の転貸には当たらない(判例) | 借地借家法19条1項 借地借家法19条3項 |
| 建物を競売・公売で取得した第三者 | 借地権設定者が賃借権の譲渡を承諾しないときは、その第三者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができる。申立ては、建物の代金を支払った後2か月以内に限る | 借地借家法20条1項 借地借家法20条3項 |
一時使用目的の借地権に適用されない条(3条〜8条・13条・17条・18条・22条〜24条)は、表1の「どんな借地権か」の行にあります。
対抗力
判例は、建物の登記は借地権者本人の名義でなければならず、配偶者や子など家族の名義で登記した建物では、借地権を対抗できないとしています。一方で、表示の登記でもよく、登記の所在地番や床面積が実際と多少違っても、建物の同一性が認められる程度の軽微な違いなら対抗できる、というのも判例です。借地権者がその建物に住んでいなくてもかまいません(いずれも借地借家法10条1項)。対抗力が及ぶ土地の範囲と、転借地権者の対抗(どちらも判例)は、表3にまとめてあります。
登記した建物が滅失したときは、建物を特定するために必要な事項、滅失があった日、建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示すれば、なお対抗できます(借地借家法10条2項)。ただし、これは登記した建物が滅失したときの定めで、もともと登記のない建物では、掲示しても対抗できません。また、滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物を登記した場合に限って対抗できます(同項)。
建物の滅失と再築
建物の滅失と再築は、当初の存続期間中か、契約の更新の後かで扱いが分かれます。
当初の存続期間中に建物が滅失しても、借地権は消滅しません。借地権設定者の承諾がなければ、再築しても存続期間は延長されませんが、承諾のない再築を理由に、借地権設定者が地上権の消滅の請求や土地の賃貸借の解約の申入れをすることはできません。借地権者の側の地上権の放棄や解約の申入れも含めて、これらができるのは契約の更新の後に限られます(借地借家法7条1項・8条1項・2項)。
これに対して、契約の更新の後に建物が滅失したときは、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れができます。借地権者が承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者が、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れができます。どちらも、申入れなどがあった日から3か月で借地権が消滅します(借地借家法8条1項・2項・3項)。やむを得ない事情があるのに借地権設定者が築造を承諾しないとき、裁判所が借地権者の申立てにより承諾に代わる許可を与えることができるのも、この更新の後の場面です(同法18条1項。借地権設定者が地上権の消滅の請求などをできない旨を定めた場合を除く)。
建物買取請求
建物買取請求をすると、建物の所有権は借地権設定者に移ります。判例は、借地権者は代金の支払を受けるまで建物(敷地を含む)の引渡しを拒めるが、その間の敷地の地代に相当する額は返さなければならないとしています。また、地代の不払いなど借地権者の債務不履行によって契約が解除されたときは、建物買取請求はできないとしています(いずれも借地借家法13条1項についての判例)。
地代と、裁判所の許可
地代等が経済事情の変動などで不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって増減を請求できます(借地借家法11条1項)。一定の期間増額しない特約があればその定めに従いますが、減額しない特約があっても、減額は請求できます。11条は、定期借地権にも適用されます。借家の定期建物賃貸借では、借賃の改定に係る特約があれば32条が適用されないので(同法38条9項。表4)、この点で、借地と借家の扱いが異なります。
裁判所の許可は、誰が申し立てるかを取り違えないようにしましょう。建物の種類・構造などを制限する借地条件の変更は、当事者(借地権者・借地権設定者のどちらでも)の申立てにより、裁判所が変更できます(借地借家法17条1項)。増改築の承諾に代わる許可は、借地権者の申立てによります(同条2項)。借地上の建物を第三者に譲渡しようとするときの、土地の賃借権の譲渡・転貸の承諾に代わる許可も、借地権者が申し立てます(同法19条1項)。この申立てがあったときに限り、借地権設定者は、裁判所が定める期間内に、自ら建物と賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができます(同条3項)。これに対して、建物を競売・公売で取得した第三者の場合は、その第三者が、建物の代金を支払った後2か月以内に申し立てます(同法20条1項・3項)。なお、判例は、借地上の建物を賃貸しても、土地の転貸には当たらないとしています。
建物の賃貸借(普通建物賃貸借・定期建物賃貸借・一時使用)の違い
表4の中心は、期間を定め、契約の更新がない旨を定めた建物の賃貸借(定期建物賃貸借)が、期間の満了で確実に終わるために踏む3つの手続です。1つ目は、公正証書による等書面(電磁的記録を含む)で契約することです。2つ目は、契約の前に、更新がなく期間の満了で終了することを、書面を交付して説明することです。3つ目は、期間が1年以上なら、期間満了の1年前から6か月前までに終了の通知をすることです(借地借家法38条1項・3項・6項)。1つ目か2つ目のどちらかが欠けると、更新がない旨の定めは効力を持たず、3つ目が欠けると、終了を賃借人に対抗できません(同条1項・5項・6項)。
| 項目 | 普通建物賃貸借 | 定期建物賃貸借(38条) | 一時使用目的の建物賃貸借(40条) | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| どんな賃貸借か | 建物の賃貸借のうち、定期建物賃貸借・一時使用目的のものに当たらないもの | 期間の定めがある建物の賃貸借で、契約の更新がない旨を定めたもの(居住の用に供する建物でもよい。賃貸人の転勤など、賃貸人の事情による限定はない) | 一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかなもの | 借地借家法38条1項 借地借家法40条 |
| 存続期間 | 上限はない(民法604条は適用されない)。1年未満の期間を定めたときは、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす | 1年未満の期間を定めてもよい(29条1項は適用されない) | 民法による(50年を超えることができない) | 借地借家法29条1項 借地借家法29条2項 借地借家法38条1項 借地借家法40条 民法604条1項 |
| 契約の方式 | 定めはない(書面によらなくても成立する) | 公正証書による等書面によって契約をするときに限る(公正証書に限らない。電磁的記録でもよい) | 定めはない | 借地借家法38条1項 借地借家法38条2項 |
| 契約の前の説明 | — | 賃貸人は、あらかじめ、更新がなく期間の満了で終了することを、その旨を記載した書面(契約書とは別の書面=判例)を交付して説明する(賃借人の承諾を得て、電磁的方法で提供してもよい)。説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効 | — | 借地借家法38条3項 借地借家法38条4項 借地借家法38条5項 |
| 契約の更新 | 期間の定めがあるときは、期間満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知(賃貸人からは正当の事由が必要)をしないと、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす。更新後は期間の定めがないものとなる | 更新はない | 26条は適用されない | 借地借家法26条1項 借地借家法28条 借地借家法38条1項 借地借家法40条 |
| 期間の満了による終了の通知 | — | 期間が1年以上のときは、賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までに終了の通知をしなければ、終了を賃借人に対抗できない(その期間の後に通知したときは、通知の日から6か月を経過した後は対抗できる)。この定めに反する特約で賃借人に不利なものは無効 | — | 借地借家法38条6項 借地借家法38条8項 |
| 期間の途中の解約 | 期間の定めがないときは、賃貸人の解約の申入れは6か月の経過で終了する(正当の事由が必要)。賃借人の解約の申入れは3か月の経過で終了する(民法617条)。期間の定めがあるときは表6 | 居住の用に供する建物で床面積200㎡未満のものは、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき、賃借人から解約を申し入れることができ、1か月の経過で終了する(賃借人に不利な特約は無効)。賃貸人からの解約の申入れを認める定めはない | 民法による(期間の定めがあるときは、解約をする権利を留保していなければ、期間の途中で解約できない) | 借地借家法27条1項 借地借家法28条 借地借家法38条7項 借地借家法38条8項 借地借家法40条 民法617条1項2号 民法618条 |
| 借賃の増減請求 | 不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって増減を請求できる(現行の借賃が定められた時から一定の期間を経過していなくてもよい=判例)。一定の期間増額しない特約は有効。減額しない特約があっても、減額を請求できる | 借賃の改定に係る特約があるときは、32条は適用されない(減額しない特約にも従う) | 32条は適用されない | 借地借家法32条1項 借地借家法38条9項 借地借家法40条 |
| 造作買取請求 | 賃貸人の同意を得て付加した造作(賃貸人から買い受けた造作を含む)は、終了の時に時価で買い取るよう請求できる。特約で排除できる | 同じ(特約で排除できる) | 33条は適用されない | 借地借家法33条1項 借地借家法37条 借地借家法40条 |
| 対抗力(賃借権の登記がないとき) | 建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、効力を生ずる。賃借権の登記をしなければ対抗できないとする特約は無効 | 同じ | 31条は適用されない(民法により、賃借権の登記をすれば対抗できる) | 借地借家法31条 借地借家法37条 借地借家法40条 民法605条 |
一時使用目的の建物賃貸借には、借地借家法の第3章(26条〜40条)が適用されず、民法の賃貸借の規定によります。
契約の方式は、「公正証書による等書面」です。公正証書に限らず、ほかの書面でもよく、令和4年5月18日からは、電磁的記録による契約も書面による契約とみなされます(借地借家法38条1項・2項)。契約の前の説明は、賃貸人が、あらかじめ、更新がなく期間の満了で終了することを、その旨を記載した書面を交付して行います(同条3項)。判例は、この書面は契約書とは別の書面でなければならないとしています。賃借人の承諾を得て、書面の交付に代えて電磁的方法で提供することもできます(同条4項)。説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効です(同条5項)。
期間が1年以上のときは、賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で賃貸借が終了する旨を賃借人に通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません(借地借家法38条6項)。その期間を過ぎてから通知したときは、通知の日から6か月を経過した後は、終了を対抗できます。この定めに反する特約で賃借人に不利なものは、無効です(同条8項)。なお、令和4年5月18日の改正で38条に項が加わったため、終了の通知の定めは4項から6項に、期間の途中の解約の定めは5項から7項に移っており、古い解説の項番号とは異なることがあります。
次に、普通建物賃貸借です。存続期間に上限はなく、1年未満の期間を定めたときは、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項・2項)。定期建物賃貸借には、この1年未満の定めが適用されないので、1年未満の期間を定めてもかまいません(同法38条1項)。期間の定めがある普通建物賃貸借は、期間満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知(条件を変更しなければ更新をしない旨の通知を含む)をしないと、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされ、更新後は期間の定めがないものとなります(同法26条1項)。賃貸人からの通知には、正当の事由が必要です(同法28条)。
期間の定めがないときは、賃貸人の解約の申入れは6か月の経過で終了し、正当の事由が必要です(借地借家法27条1項・28条)。賃借人の解約の申入れは、民法のとおり3か月の経過で終了します(民法617条1項2号)。定期建物賃貸借では、居住の用に供する建物で床面積200㎡未満のものに限り、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人から解約を申し入れることができます。申入れの日から1か月の経過で終了します(借地借家法38条7項)。賃貸人から解約を申し入れる定めはありません。
そのほか、普通と定期で扱いが同じもの、違うものがあります。造作買取請求は、どちらでも特約で排除できます。賃借人に不利な特約を無効とする37条が、造作買取請求の33条を挙げていないためです(借地借家法33条1項・37条)。建物の引渡しがあれば、その後にその建物について物権を取得した者に対し、建物の賃貸借の効力が生ずる点も、普通と定期で共通です(同法31条)。一方、借賃の増減の請求は、普通建物賃貸借では減額しない特約があっても減額を請求できますが、定期建物賃貸借では、借賃の改定に係る特約があれば32条が適用されず、その特約に従います(同法32条1項・38条9項)。
最後に、一時使用目的の建物賃貸借です。一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかなときは、借地借家法の第3章(26条〜40条)が適用されず、民法の賃貸借の規定によります(借地借家法40条)。引渡しによる対抗力の31条も適用されないので、民法により、賃借権の登記をすれば対抗できます(民法605条)。借地の一時使用目的の借地権には対抗力の10条が適用される(表1)のと、扱いが異なる点に注意しましょう。
建物の賃貸借の更新・終了と、借家人の権利
表5で意識しておきたいのは、普通建物賃貸借を賃貸人の側から終わらせるには、正当の事由と期間・通知の手続が必要で、期間の満了や解約の申入れの後に賃借人が使用を継続するときは、遅滞なく異議を述べることも必要になるという点です。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 正当の事由の判断 | 賃貸人と賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、従前の経過、建物の利用状況・現況、財産上の給付(立退料)の申出を考慮する。立退料の申出だけで正当の事由があるとはされない。解約の申入れの正当の事由は、申入れの時から6か月を経過するまで存続する必要がある(判例) | 借地借家法28条 |
| 期間満了の後の使用の継続 | 更新をしない旨の通知をした場合でも、期間の満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなす。解約の申入れで終了した場合も同じ。転借人の使用の継続は、賃借人の使用の継続とみなす | 借地借家法26条2項 借地借家法26条3項 借地借家法27条2項 |
| 造作買取請求ができる場面 | 期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに限る(賃料の不払いなどによる解除で終了したときは請求できない)。転借人も、賃貸人に請求できる | 借地借家法33条1項 借地借家法33条2項 |
| 借賃の増減の協議が調わないとき | 増額の請求を受けた賃借人は、裁判の確定まで相当と認める額を支払えば足り、確定後の不足額には年1割の利息を付けて支払う。減額の請求を受けた賃貸人は、相当と認める額の支払を請求でき、確定後の超過額には年1割の利息を付けて返す。増減の効果は、裁判の確定の時ではなく、請求が相手方に到達した時に生ずる(判例) | 借地借家法32条2項 借地借家法32条3項 |
| 転借人がいるときの終了 | 賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、賃貸人は、転借人にその旨を通知しなければ、終了を転借人に対抗できない。通知の日から6か月で転貸借は終了する。賃貸借を合意によって解除しても、転借人に対抗できない(解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を持っていたときを除く=民法613条3項)。賃借人の債務不履行で解除するときは、転借人に通知して賃料を支払う機会を与えなくてもよく、解除を転借人に対抗できる(判例) | 借地借家法34条1項 借地借家法34条2項 民法613条3項 |
| 借地上の建物の賃借人の保護 | 借地権の存続期間の満了で建物の賃借人が土地を明け渡すべきとき、満了を1年前までに知らなかったときは、裁判所は、賃借人の請求により、知った日から1年を超えない範囲で明渡しの期限を許与できる | 借地借家法35条1項 |
| 居住用の建物の賃貸借の承継 | 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡したとき、事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者が、賃借人の権利義務を承継する(相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に反対の意思を表示したときを除く)。承継しない旨の特約は有効(37条に36条は入っていない) | 借地借家法36条1項 借地借家法37条 |
| 取壊し予定の建物の賃貸借 | 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかなときは、取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定められる。取り壊すべき事由を記載した書面(電磁的記録でもよい。公正証書に限らない)でする | 借地借家法39条1項 借地借家法39条2項 借地借家法39条3項 |
正当の事由は、賃貸人と賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況・現況、財産上の給付の申出(一般には立退料と呼ばれます)を考慮して判断します(借地借家法28条)。立退料の申出は考慮する事情の1つで、申出だけで正当の事由があるとはされません。また、判例は、解約の申入れの正当の事由は、申入れの時から6か月を経過するまで存続する必要があるとしています。
更新をしない旨の通知をしても、期間の満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなされます。解約の申入れで終了した場合も同じです。転借人がいるときは、転借人の使用の継続が、賃借人の使用の継続とみなされます(借地借家法26条2項・3項・27条2項)。
賃貸人の承諾を得た転借人がいるときの終わり方は、終了の原因で分かれます。賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、賃貸人は、転借人にその旨を通知しなければ、終了を転借人に対抗できず、転貸借は通知の日から6か月で終了します(借地借家法34条1項・2項)。賃貸借を合意によって解除しても、転借人に対抗できません。ただし、解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を持っていたときは別です(民法613条3項)。そして、判例は、賃借人の債務不履行で解除するときは、転借人に通知して賃料を支払う機会を与えなくてもよく、解除を転借人に対抗できるとしています。
造作買取請求ができるのは、賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに限られ、賃料の不払いなどによる解除で終了したときは請求できません。転借人も、賃貸人に請求できます(借地借家法33条1項・2項)。
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡したときは、事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者が、賃借人の権利義務を承継します(借地借家法36条1項)。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に反対の意思を表示したときは、承継しません。承継しない旨の特約は、37条に36条が挙がっていないので有効です。
法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかなときは、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができます(借地借家法39条1項)。この特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければなりません。公正証書に限らずほかの書面でもよく、令和4年5月18日からは電磁的記録でもかまいません(同条2項・3項)。
民法の賃貸借と借地借家法の違い
表6の前提になるのは、借地借家法は民法の特別法で、借地借家法に定めがあることは借地借家法が優先し、定めがないことは民法によるという点です(表6の注記)。そのため、借地借家法が適用されない賃貸借、たとえば駐車場・資材置場など、建物の所有を主な目的としない土地の賃貸借は、民法だけで決まります(民法601条、借地借家法1条・2条1号)。
| 項目 | 民法の賃貸借 | 借地(借地借家法) | 借家(借地借家法) | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 適用される賃貸借 | 賃貸借すべて。借地借家法が適用されない賃貸借(駐車場・資材置場・ゴルフ場など、建物の所有を主な目的としない土地の賃貸借など)は、民法だけで決まる | 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権 | 建物の賃貸借 | 民法601条 借地借家法1条 借地借家法2条1号 |
| 存続期間 | 50年を超えることができない(長い期間を定めても50年) | 普通借地権は30年以上(表1)。定期借地権は類型ごとに決まっている(表2) | 上限はない。1年未満の期間は、期間の定めがないものとみなす(定期建物賃貸借を除く) | 民法604条1項 借地借家法3条 借地借家法29条1項 借地借家法29条2項 |
| 期間の定めがないときの解約の申入れ | 各当事者がいつでも申し入れることができる。土地は1年、建物は3か月の経過で終了する | 期間を定めないときは存続期間が30年になる | 賃貸人の申入れは6か月の経過で終了し、正当の事由が必要。賃借人の申入れは民法どおり3か月 | 民法617条1項1号 民法617条1項2号 借地借家法3条 借地借家法27条1項 借地借家法28条 |
| 期間の定めがあるときの途中の解約 | 期間の途中で解約をする権利を留保していなければ、期間の途中で解約できない | 民法どおり | 民法どおり。定期建物賃貸借のうち居住の用に供する床面積200㎡未満の建物は、やむを得ない事情により自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき、賃借人から解約を申し入れることができる(表4) | 民法618条 借地借家法38条7項 |
| 第三者への対抗 | 賃借権の登記をしたとき | 賃借権の登記のほか、借地権者が登記されている建物を所有するとき | 賃借権の登記のほか、建物の引渡しがあったとき | 民法605条 借地借家法10条1項 借地借家法31条 |
| 期間満了の後の更新 | 賃借人が使用を継続し、賃貸人が知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で更新したものと推定する(その後は、各当事者が617条により解約の申入れをすることができる) | 建物がある場合に限り、更新の請求・土地の使用の継続で更新したものとみなす(異議には正当の事由が必要) | 期間満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知(条件を変更しなければ更新をしない旨の通知を含む)をしないと、更新したものとみなす(賃貸人の通知には正当の事由が必要) | 民法619条1項 借地借家法5条1項 借地借家法5条2項 借地借家法6条 借地借家法26条1項 借地借家法28条 |
| 賃借権の譲渡・転貸 | 賃貸人の承諾が必要。承諾を得ないで第三者に使用・収益をさせたときは、賃貸人は解除できる | 借地上の建物を譲渡するとき、借地権設定者が承諾しなければ、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができる(表3) | 民法どおり(承諾に代わる裁判所の許可の制度はない) | 民法612条1項 民法612条2項 借地借家法19条1項 |
| 規定と異なる特約 | 公の秩序に関しない規定と異なる特約は有効 | 9条・16条・21条が挙げる規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効 | 30条・37条が挙げる規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効。造作買取請求の排除・居住用の建物の承継の排除・一定期間増額しない特約は有効 | 民法91条 借地借家法9条 借地借家法16条 借地借家法21条 借地借家法30条 借地借家法37条 |
借地借家法は民法の特別法で、借地借家法に定めがあることは借地借家法が優先し、定めがないことは民法によります。
まず、期間です。民法の賃貸借の存続期間は50年を超えることができませんが(民法604条1項)、普通借地権は30年以上(定期借地権は表2)、借家は上限がありません(借地借家法3条・29条2項)。期間の定めがないときの解約の申入れも、民法では土地は1年、建物は3か月の経過で終了するのに対し(民法617条1項1号・2号)、借地では期間を定めないと存続期間が30年になり、借家では、賃貸人からの解約の申入れに正当の事由が必要で、申入れの日から6か月の経過で終了します(借地借家法3条・27条1項・28条)。期間の定めがあるときの途中の解約は、表6と表4の行で確かめましょう。
次に、第三者への対抗と更新です。民法では、賃借権の登記をしたときに対抗できます(民法605条)。借地借家法は、これに加えて、借地なら借地権者が登記されている建物を所有するとき、借家なら建物の引渡しがあったときにも、対抗できるとしています(借地借家法10条1項・31条)。更新も、民法では、期間の満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で更新したものと「推定」するだけですが(民法619条1項)、借地借家法では、借地・借家とも、一定の場合に更新したものと「みなす」形になっています(借地借家法5条1項・2項・26条1項)。
最後に、賃借権の譲渡・転貸と特約です。民法では、賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要で、承諾を得ずに第三者に使用・収益をさせたときは、賃貸人は解除できます(民法612条1項・2項)。借地では、借地権が土地の賃借権であるとき、借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に、借地権設定者に不利となるおそれがないのに借地権設定者が承諾しなければ、借地権者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法19条1項)。借家には、この許可の制度がありません。特約は、民法では公の秩序に関しない規定と異なる特約が有効ですが(民法91条)、借地借家法では、9条・16条・21条・30条・37条が挙げる規定に反する特約で、借地権者・建物の賃借人に不利なものが無効になります。ただし、借家の造作買取請求の排除、居住用の建物の承継の排除、一定の期間借賃を増額しない特約は有効です(表6)。
表6に並べたのは、借地借家法が民法の賃貸借を修正しているところだけです。敷金・修繕・原状回復など、民法の賃貸借の規定だけで決まる論点は、このページでは扱っていません。
借地借家法の選択肢で迷ったときは、まず借地か借家か、次に普通・定期・一時使用のどれかを決めてから、表1か表4の行に戻ってみましょう。定期借地権の類型なら表2、対抗力や裁判所の許可なら表3、借家の更新・終了なら表5の行で確かめられます。
よくある質問
借地借家法の「普通」と「定期」は、何を手がかりに見分ければよいですか?
借地では、普通借地権が借地権者を守る「更新」「建物の再築による存続期間の延長」「建物買取請求」の3つがあるかを手がかりにする方法があります。一般定期借地権と存続期間30年以上50年未満の事業用定期借地権は、この3つがない旨を特約で定め、10年以上30年未満の事業用定期借地権には、3つの定めがはじめから適用されません(借地借家法22条1項・23条1項・2項)。借家では、期間の定めがあり、契約の更新がない旨を定めた建物の賃貸借で、公正証書による等書面(電磁的記録を含む)による契約、契約の前の書面による説明、期間が1年以上のときの終了の通知という手続を踏んでいるかを見ます(同法38条1項・3項・6項)。これは見分けるための整理で、建物譲渡特約付借地権のように、建物の譲渡で借地権が消滅するものもあります(同法24条1項)。正誤は、このページの表1・表2・表4の条文の列で確かめます。
定期建物賃貸借の契約は、公正証書でしなければなりませんか?
公正証書に限りません。借地借家法38条1項は「公正証書による等書面によって契約をするときに限り」としており、公正証書以外の書面でもよく、令和4年5月18日からは電磁的記録による契約も書面による契約とみなされます(同条2項)。ただし、賃貸人は、契約の前に、更新がなく期間の満了で終了することを記載した書面を交付して説明しなければなりません(同条3項。賃借人の承諾を得て電磁的方法で提供することもできます。同条4項)。判例は、この書面は契約書とは別の書面でなければならないとしています。説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効です(同条5項)。
定期建物賃貸借で、期間満了の前に終了の通知をしないと、どうなりますか?
期間が1年以上の定期建物賃貸借では、賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で賃貸借が終了する旨を通知しなければ、その終了を賃借人に対抗できません(借地借家法38条6項)。ただし、その期間を過ぎてから通知したときは、通知の日から6か月を経過した後は、終了を対抗できます。通知をしなかったからといって、更新したものとみなされるわけではありません。この定めに反する特約で賃借人に不利なものは、無効です(同条8項)。
借地借家法と民法では、どちらが優先されますか?
借地借家法は、民法の特別法です(借地借家法1条)。借地借家法に定めがあることは借地借家法が優先し、定めがないことは民法によります。たとえば、期間の定めがない建物の賃貸借で賃貸人が解約を申し入れたときは、民法の3か月ではなく、借地借家法により6か月の経過で終了し、正当の事由が必要です(借地借家法27条1項・28条、民法617条1項2号)。一方、駐車場など建物の所有を目的としない土地の賃貸借のように、借地借家法が適用されないものは、民法だけで決まります(借地借家法2条1号)。
関連するページ
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