宅建の抵当権と根抵当権|試験で出る範囲と出ない範囲

抵当権と根抵当権は、宅地建物取引士資格試験(宅建試験)と行政書士試験の両方で出題される論点です。名前は1字しか違いませんが、担保する債権の決め方から優先弁済の範囲まで、中身はかなり違います。

抵当権と根抵当権については、不動産の売却や借入れの手続を説明したページが数多くあります。このページは、そうした実務の手続ではなく受験生向けに、条文と過去問の出題実績だけで整理したものです。抵当権と根抵当権の違いを確認したい方は、先に表1をご覧ください。

このページは、3つの表を軸に構成しています。まず表1で2つの担保物権を項目ごとに並べ、次に表2で、この論点が宅建試験と行政書士試験それぞれでどこまで問われているのかを示します。最後に表3で、論点ごとに、どちらの試験でいつ問われたのかを並べました。宅建試験で根抵当権が出るのかどうかを確認したい方は、表2と、その次の「宅建試験で、根抵当権はどこまで出ているか」をご覧ください。

本記事は、2026年9月時点の民法・不動産登記法にもとづき、令和8年度の宅地建物取引士資格試験および令和8年度の行政書士試験の制度に合わせて書いています。


抵当権と根抵当権は、どこが違うか

抵当権と根抵当権(元本の確定前)の違いがいちばんはっきり表れるのは、付従性(ふじゅうせい)と随伴性(ずいはんせい)という性質です。ここでは、債権が消えたとき(付従性のうち消滅の面)と、債権が譲渡されたとき(随伴性)の2つの場面に絞って、担保と債権の結びつき方を性格にたとえて見てみましょう。

抵当権

一途な純愛タイプ

相手は、設定のときに決めた特定の債権です。その債権とは運命共同体で、債権が弁済などで消えれば、抵当権も一緒に消えます(付従性)。債権が譲渡されて別の債権者に移れば、抵当権も新しい債権者のもとへついていきます(随伴性)。

根抵当権(元本の確定前)

恋多き自由人タイプ

特定の相手は決めず、決めておくのは2つの枠です。どの相手と付き合えるかを決める被担保債権の範囲(種類を限定して定めます。民法398条の2第2項・3項)と、いくらまで付き合えるか(金額の上限)を決める極度額(同条1項)です。枠の中の債権が弁済されて消えても、根抵当権は消えずに次の債権を待ちます(付従性がない)。枠の中の債権が譲渡されて出ていっても追いかけず、その場に残ります(随伴性がない。民法398条の7第1項)。

根抵当権が自由人タイプでいられる(付従性・随伴性をもたない)のは、元本が確定するまでです。確定すると担保される元本が決まり、普通の抵当権と同じように付従性・随伴性をもつようになります(随伴性については民法398条の7第1項。表1の注記)。

特定の債権と添い遂げるのが抵当権、元本が確定するまでは枠の中で相手が入れ替わっていくのが根抵当権、と考えると整理しやすくなります。たとえは理解と記憶のための補助であり、正誤を判断するときの根拠は、表1の条文の列です。

このたとえの元にあるのは、担保する債権が特定されているか、それとも被担保債権の範囲と極度額という枠だけが決まっているかという、2つを見分ける軸です。付従性・随伴性の違いは、この軸から生じる結果です。同じ軸から、優先弁済の範囲や権利の動かし方まで、表1の各項目の違いを説明できます。


「出題」は、宅建は昭和63年〜令和7年の本試験(令和2年・令和3年は10月と12月の2回)、行政書士は平成21年〜令和7年の本試験の過去問で、年度と問番号を確認できたものだけを掲載しています。「直近10年」は、宅建は平成28年〜令和7年の12回、行政書士は平成28年〜令和7年の10回で、その行の論点が問われた回数です。3つ以上あるときは新しい年度の2件を載せ、残りは件数で示しています。「問われ方」は、過去問で誤りの選択肢として出題された形です。「注意」は、過去問では確かめていませんが、誤解しやすい点です。「どちらの試験で出るか」の表には、出題の事実だけを記載しています。今後の出題を予想したものではありません。


表1 抵当権と根抵当権の対照
項目 抵当権 根抵当権 条文
被担保債権宅建の出題:平成26年 問4・平成15年 問6 ほか1件宅建・直近10年:出題なし問われ方:根抵当権でも被担保債権を特定しなければならない、とする形(平成15年 問6 肢1)/債務者に対する現在および将来のあらゆる債権を担保できる、とする形(平成12年 問5 肢1・平成26年 問4 肢1) 特定の債権を担保する。設定するときに、どの債権を担保するのかが決まっている 一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保する。債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものなどに限定して定める 民法369条1項
民法398条の2第1項
民法398条の2第2項
付従性(債権が消えたとき)宅建の出題:平成15年 問6・平成7年 問6宅建・直近10年:出題なし注意:根抵当権でも、元本が確定したあとは、確定した債権が全部消滅すれば消滅します。表のこの行は元本の確定前のことです 被担保債権が成立しなければ成立せず、被担保債権が消滅すれば消滅する 元本の確定前は、個々の債権が弁済されて消滅しても、根抵当権は消滅しない。担保すべき債権が一時的に無くなっても残る 民法369条1項
民法398条の2第1項
随伴性(債権が譲渡されたとき)宅建の出題:平成23年 問4・平成19年 問8 ほか2件宅建・直近10年:出題なし行政書士の出題:令和4年 問29・令和2年 問29 ほか1件行政書士・直近10年:3回問われ方:確定日付のある証書で債権譲渡の対抗要件を備えれば、元本の確定前でも根抵当権を行使できる、とする形(平成19年 問8 肢2) 被担保債権が譲渡されると、抵当権もその債権とともに移る 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない 民法398条の7第1項
優先弁済の範囲(2年分と極度額)宅建の出題:平成29年 問10・平成23年 問4 ほか7件宅建・直近10年:1回行政書士の出題:令和4年 問29・平成30年 問30 ほか1件行政書士・直近10年:2回問われ方:根抵当権でも最後の2年分に限られる、とする形(平成15年 問6 肢4・平成23年 問4 肢1・令和4年 問29 肢4)/極度額とは別に、最後の2年分の利息を上乗せして主張できる、とする形(平成8年 問7 肢2・平成12年 問5 肢3・平成19年 問8 肢3)注意:抵当権の2年分の制限は、後順位の抵当権者などの利害関係人を保護するためのものです。利害関係人がいない場合には、2年分を超える利息についても抵当権を行使できます(平成7年 問6 肢2) 満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できる。遅延損害金は利息その他の定期金と通算して2年分を超えられない 2年分の制限はない。確定した元本と、利息その他の定期金と、遅延損害金の全部について、極度額を限度として行使できる 民法375条1項
民法375条2項
民法398条の3第1項
抵当権の処分(譲渡・放棄・順位の譲渡・順位の放棄)宅建の出題:令和5年 問10・令和元年 問10 ほか5件宅建・直近10年:2回問われ方:元本の確定前の根抵当権でも、他の債権者の利益のためにその順位を譲渡できる、とする形(平成元年 問5 肢1・平成26年 問4 肢4 の裏返し) できる。同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、抵当権そのものやその順位を譲渡・放棄できる 元本の確定前はできない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすること(転抵当)は妨げられない。順位の変更は、抵当権と同じようにできる 民法376条1項
民法398条の11第1項
民法374条1項
被担保債権の範囲・債務者の変更宅建の出題:平成19年 問8・平成元年 問5宅建・直近10年:出題なし行政書士の出題:令和4年 問29・令和2年 問29 ほか1件行政書士・直近10年:3回問われ方:後順位の抵当権者がいるときは、その承諾を得なければ変更できない、とする形(平成19年 問8 肢1・平成28年 問31 肢1・令和2年 問29 肢2) 変更する仕組みがない。別の債権を担保するには、新たに抵当権を設定する 元本の確定前は変更できる。後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は要らない。元本の確定前に登記をしなかったときは、変更しなかったものとみなす 民法398条の4第1項
民法398条の4第2項
民法398条の4第3項
極度額の変更と減額請求宅建の出題:平成23年 問4・平成12年 問5 ほか1件宅建・直近10年:出題なし行政書士の出題:令和4年 問29・令和2年 問29 ほか1件行政書士・直近10年:3回問われ方:いったん登記された極度額は、利害関係人の承諾を得ても増額できない、とする形(平成12年 問5 肢2)/元本の確定後は極度額の減額を請求できない、とする形(平成23年 問4 肢4・令和2年 問29 肢5) 極度額という仕組みがない 極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければできない。元本の確定後は、設定者が、現に存する債務の額に以後2年間の利息等を加えた額まで減額するよう請求できる 民法398条の5
民法398条の21第1項
元本の確定宅建の出題:平成23年 問4・平成8年 問7宅建・直近10年:出題なし行政書士の出題:令和4年 問29・令和2年 問29 ほか1件行政書士・直近10年:2回問われ方:確定すべき期日の定めがないときは、期間が経過しても設定者は確定を請求できない、とする形(平成23年 問4 肢3) 元本が確定するという仕組みがない 確定すべき期日の定めがないときは、設定者は設定の時から3年を経過したときに確定を請求でき、請求の時から2週間を経過したときに確定する。根抵当権者はいつでも請求でき、この場合は請求の時に確定する 民法398条の19第1項
民法398条の19第2項
民法398条の19第3項
第三取得者が担保を消滅させる方法宅建の出題:令和4年 問4・平成28年 問4 ほか4件宅建・直近10年:2回行政書士の出題:平成28年 問31・平成23年 問45(記述式) ほか1件行政書士・直近10年:1回問われ方:保証人でも抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば抵当権消滅請求ができる、とする形(平成21年 問6 肢1・平成27年 問6 肢2)/差押えの効力が発生した後でも、売却許可決定が確定するまでは抵当権消滅請求ができる、とする形(平成21年 問6 肢2) 抵当権消滅請求(差押えの効力が発生する前に、登記をした各債権者へ民法383条1項各号の書面を送付する)と、抵当権者の請求に応じた代価弁済。主たる債務者・保証人とこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求ができない 根抵当権消滅請求(元本の確定後、現に存する債務の額が極度額を超えるときに、極度額に相当する金額を払い渡すか供託する) 民法378条
民法379条
民法380条
民法382条
民法383条1項各号
民法398条の22第1項
対抗要件と登記事項宅建の出題:平成26年 問4・平成22年 問5宅建・直近10年:出題なし問われ方:根抵当権の設定を第三者に対抗するには、登記に加えて債務者の異議をとどめない承諾が必要である、とする形(平成26年 問4 肢2) 登記が対抗要件で、順位は登記の前後による 同じ。登記事項として、担保すべき債権の範囲と極度額も登記する 民法177条
民法373条
不動産登記法88条2項1号
物上保証人の催告の抗弁宅建の出題:平成26年 問4宅建・直近10年:出題なし問われ方:抵当権の実行では債務者への催告を請求できるが、根抵当権の実行ではできない、とする形(平成26年 問4 肢3)注意:民法452条の催告の抗弁権は保証人についての定めで、物上保証人にこれを準用する規定は確認できません。抵当権でも根抵当権でも同じ扱いになります 物上保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができない 同じ。抵当権と根抵当権で違いはない 民法452条

根抵当権の欄は、ことわりのない限り元本の確定前のことです。元本が確定すると、随伴性の否定(民法398条の7第1項)や処分の制限(民法398条の11第1項)は働かなくなります

担保する債権:特定されているか、枠で決まっているか

抵当権は、債務の担保として不動産に設定するもので(民法369条1項)、担保するのは特定の債権です。これに対して根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保します(民法398条の2第1項)。ここでいう「一定の範囲」は自由に広げられるものではなく、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものなど、種類を限定して定めなければなりません(同条2項・3項)。債務者に対するあらゆる債権をまとめて担保する根抵当権は、設定できないということです。

元本の確定前の根抵当権について、随伴性がないことは条文に明記されています(民法398条の7第1項)。これに対して付従性がないことは、不特定の債権を担保するという定め(民法398条の2第1項)から導かれるものです。どちらも表1の該当する項目で確かめられます。

優先弁済の範囲:最後の2年分か、極度額か

抵当権で優先弁済を受けられる利息は、満期となった最後の2年分に限られます(民法375条1項)。遅延損害金も、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができません(同条2項)。一方、根抵当権にこの制限はなく、確定した元本と、利息その他の定期金と、遅延損害金の全部について、極度額を限度として行使できます(民法398条の3第1項)。

「極度額とは別に、最後の2年分の利息を上乗せして請求できる」という形の選択肢が、両方の試験で繰り返し出ています。極度額は上限であって、その外に2年分が積まれるわけではありません。

元本が確定する前は、権利の動かし方が変わる

抵当権者は、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、抵当権そのものやその順位を譲渡し、または放棄することができます(民法376条1項)。これに対し、根抵当権では、元本の確定前はこの処分ができません(民法398条の11第1項)。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすること、つまり転抵当は妨げられないと定められています(同項ただし書)。順位の変更(民法374条1項)は、抵当権と同じようにできます。

一方で、根抵当権にだけ認められていることもあります。被担保債権の範囲や債務者は、元本の確定前であれば変更でき、このとき後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は要りません(民法398条の4第1項・2項)。もっとも、元本の確定前に登記をしなかったときは、変更しなかったものとみなされます(同条3項)。極度額の変更のほうは、利害関係を有する者の承諾がなければできません(民法398条の5)。第三者の承諾が要る変更と要らない変更が並んでいるので、区別して押さえておきましょう。

根抵当権の元本は、確定すべき期日の定めがない場合、設定者からは設定の時から3年を経過したときに確定を請求でき、請求の時から2週間を経過したときに確定します。根抵当権者からはいつでも請求でき、この場合は請求の時に確定します(民法398条の19第1項・2項)。確定すべき期日の定めがあるときは、この規定は適用されません(同条3項)。

消滅させる方法も、名前は似ていて内容が異なる

抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができます(民法379条)。手続は、登記をした各債権者に対して民法383条1項各号の書面を送付するというもので、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前にしなければなりません(民法382条)。主たる債務者、保証人およびこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができません(民法380条)。抵当不動産を買い受けて第三取得者になっても同じで、ここは両方の試験で問われています。このほか、抵当権者の請求に応じて代価を弁済する代価弁済もあります(民法378条)。

根抵当権の場合は、根抵当権消滅請求といいます(民法398条の22第1項)。元本の確定後に、現に存する債務の額が極度額を超えるときに、極度額に相当する金額を払い渡すか供託して請求するもので、請求できるのは物上保証人や、抵当不動産について所有権・地上権・永小作権・対抗することができる賃借権を取得した第三者です。名前は似ていますが、元本の確定後であることと極度額に相当する金額を払い渡すか供託することが、抵当権消滅請求と異なる点です。


この論点は、どちらの試験で出るか

ここからは条文を離れて、実際の出題の事実を見ていきます。表2は、宅建試験と行政書士試験のそれぞれで、抵当権と根抵当権がどのように問われてきたかを並べたものです。年度は、どちらの試験も過去問で問番号まで確かめたものだけを載せています。


表2 この論点は、どちらの試験で出るか
項目 宅建 行政書士
抵当権は出るか 出題されます。令和4年 問4 のように1問まるごと抵当権という年があり、平成28年から令和7年までの12回にも繰り返し出題されています 出題されます。5肢すべてを抵当権で使う問題(令和6年 問30 ほか)に加えて、記述式でも問われています(令和5年 問45 ほか)
根抵当権は出るか 出題されていますが、平成26年 問4(抵当権と根抵当権を並べた問題)が最後です。平成27年から令和7年までの13回は、選択肢の1つにも「根抵当」の語が出ていません 出題されます。根抵当権だけで5肢すべてを使う問題が、平成28年 問31・令和2年 問29・令和4年 問29 にあります
出題の形式 4肢択一。正しいもの・誤っているものを1つ選ぶ形のほか、正しいものがいくつあるかを選ぶ形もあります 5肢択一と、妥当なものの組合せを選ぶ形。これに加えて、40字程度で書く記述式があります
試験科目としての位置づけ 宅地建物取引業法施行規則が定める試験の内容のうち、「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること」に含まれます 「行政書士の業務に関し必要な法令等」として出題される46題の中に、民法が挙げられています
どこまで問われるか 条文と、代表的な判例の結論まで。抵当権の処分による配当額の計算が、令和元年 問10・令和5年 問10 と繰り返し問われています 判例の要件まで。抵当権に基づく妨害排除請求が認められる場合や、物上代位と債権譲渡・相殺の優劣が、肢の形で細かく問われます
出題の実績からいえること 抵当権は、条文と判例の結論、そして配当の計算が繰り返し問われています。根抵当権は、抵当権との違いを問う形(平成26年 問4)で出題されたのが最後です 抵当権は判例の要件まで問われます。根抵当権は、民法398条の2から398条の22までの条文が、1問の5肢に分かれて問われます

出題の事実だけを記載しています。今後の出題を予想したものではありません。年度は、どちらの試験も過去問で問番号まで確認できたものだけを掲載しています

表2の「試験科目としての位置づけ」に引用した文言は、それぞれの試験の実施団体が公表しているものです(一般財団法人 不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」/一般財団法人 行政書士試験研究センター「試験概要」)。どちらの試験でも、民法そのものが出題範囲に含まれているということです。

違いがあるのは、出題の形式と、問われる深さです。宅建試験は4肢択一で、抵当権の処分による配当額を計算させる問題が繰り返し出ています。行政書士試験は5肢択一と組合せに加えて、40字程度で書く記述式があり、抵当権はその記述式でも問われてきました。そして、根抵当権の扱いが、2つの試験で大きく分かれます。


宅建試験で、根抵当権はどこまで出ているか

宅建試験の問題文に「根抵当」の語が出てきたのは、平成26年 問4 が最後です。それ以降、令和7年までの本試験では、選択肢の1つにも出ていません。表2の「根抵当権は出るか」の項目が、この事実を示しています。

そして、その平成26年 問4 は、「抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合」を並べて、被担保債権の決め方、対抗要件、催告の抗弁、順位の譲渡の4点を比べさせる問題でした。つまり、宅建試験で根抵当権が問われるときは、根抵当権そのものの細かい手続ではなく、抵当権とどこが違うかという形で問われてきたということです。

宅建試験の対策としては、表1の対照の範囲、とくに被担保債権の決め方、対抗要件、抵当権の処分ができるかどうかを押さえておくと、平成26年 問4 のような対比の形に対応できます。根抵当権の細かな規定を追う前に、表1の右の列と左の列を見比べておくほうが効率的です。

このページに載せているのは、過去の出題の事実だけです。今後の出題を予想するものではありませんので、学習を進めるときの参考資料として活用してください。


論点ごとに、いつ問われたか

抵当権は論点の幅が広いので、どこから学習を始めるかで迷いやすいところです。表3は、抵当権と根抵当権を論点ごとに分け、それぞれが宅建試験と行政書士試験でいつ問われたかを並べたものです。1つの問で複数の論点が問われることがあるため、同じ年度が複数の項目に載っています。


表3 論点別の出題実績
論点 宅建での出題年度 行政書士での出題年度 条文
効力の及ぶ範囲(付加一体物・従物・従たる権利) 平成27年 問6・平成25年 問5 ほか2件直近10年:出題なし 平成30年 問30・平成22年 問30直近10年:1回 民法370条
民法87条2項
物上代位(賃料・損害保険金・転貸賃料) 令和3年12月 問10・平成28年 問4 ほか10件直近10年:2回 令和6年 問30・令和5年 問45(記述式) ほか2件直近10年:3回 民法372条
民法304条1項
担保される利息・遅延損害金の範囲(最後の2年分) 平成29年 問10・平成13年 問7 ほか2件直近10年:1回 平成30年 問30・平成21年 問29直近10年:1回 民法375条1項
民法375条2項
順位と順位の変更 平成28年 問4・平成25年 問5 ほか3件直近10年:1回 出題なし 民法373条
民法374条1項
民法374条2項
抵当権の処分と配当の計算 令和5年 問10・令和元年 問10 ほか3件直近10年:2回 出題なし 民法376条1項
民法376条2項
第三取得者(代価弁済・抵当権消滅請求) 令和4年 問4・平成28年 問4 ほか4件直近10年:2回 平成23年 問45(記述式)直近10年:出題なし 民法378条
民法379条
民法380条
民法382条
民法383条1項各号
法定地上権 平成30年 問6・平成28年 問4 ほか4件直近10年:2回 令和元年 問30・平成26年 問29 ほか1件直近10年:1回 民法388条
抵当地の上の建物の競売(一括競売) 令和4年 問4・平成27年 問6 ほか3件直近10年:1回 平成23年 問30直近10年:出題なし 民法389条1項
民法389条2項
抵当建物使用者の引渡しの猶予 令和4年 問4・令和3年12月 問10 ほか1件直近10年:2回 令和6年 問30・平成21年 問30直近10年:1回 民法395条1項
民法395条2項
抵当権に基づく妨害排除請求 平成25年 問5・平成7年 問6直近10年:出題なし 令和6年 問30・令和3年 問29 ほか2件直近10年:3回 民法369条1項(判例)
共同抵当(同時配当・異時配当) 平成13年 問7直近10年:出題なし 出題なし 民法392条1項
民法392条2項
抵当権の消滅(被担保債権の消滅・時効・時効取得) 平成12年 問2・平成7年 問6直近10年:出題なし 令和5年 問28・平成28年 問27 ほか4件直近10年:2回 民法396条
民法397条
民法145条
被担保債権の範囲・随伴性・極度額・元本の確定 平成26年 問4・平成23年 問4 ほか5件直近10年:出題なし 令和4年 問29・令和2年 問29 ほか2件直近10年:3回 民法398条の2第1項
民法398条の3第1項
民法398条の7第1項
民法398条の19第1項
民法398条の21第1項

1つの問で複数の論点が問われることがあるため、同じ年度が複数の項目に載っています。3つ以上ある項目は、新しい年度の2件を載せ、残りは件数で示しています

表3を左右で見比べると、2つの試験で繰り返し出ている形が違うことが分かります。宅建試験で目立つのは、抵当権の処分による配当の計算です。1番抵当権者が後順位の債権者のために順位を譲渡したり放棄したりしたとき、それぞれの配当額がいくらになるかを計算させる問題が、令和元年 問10 と令和5年 問10 に出ています。条文そのものは短いのですが、計算をしなければ答えを出せません。

一方、行政書士試験で目立つのは、判例の要件をどこまで押さえているかです。抵当権に基づく妨害排除請求が認められるのはどういう場合か、物上代位と債権譲渡や相殺はどちらが優先するかといった点が、肢の形で細かく問われています。表3では、順位の変更、抵当権の処分、共同抵当の3つの項目で、行政書士試験の欄が「出題なし」になっています。

両方の試験で年度が並んでいる論点

表3で、宅建試験と行政書士試験の両方の欄に年度が並んでいる項目のうち、物上代位、法定地上権、抵当建物使用者の引渡しの猶予を、条文に沿って確認します。第三取得者については、表1の「第三取得者が担保を消滅させる方法」の項目で触れました。

物上代位は、抵当権が、目的物そのものだけでなく、その売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭にも及ぶという仕組みです(民法372条・304条1項)。賃料債権や火災保険金債権がその例です。ただし条文には、その払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならないという限定が付いています(民法304条1項ただし書)。賃借人がさらに転貸している場合の転貸賃料債権については、原則として物上代位できないとされており、この点も両方の試験で問われています。

法定地上権は、土地とその上に存する建物が同一の所有者に属する場合に、その土地または建物に抵当権が設定され、実行によって所有者を異にするに至ったとき、建物について地上権が設定されたものとみなす、というものです(民法388条)。成否を見るのは1番抵当権を設定した当時です。更地に抵当権を設定した後に建物が築造されても成立せず、2番抵当権が設定された時点で土地と建物が同じ所有者になっても、それだけでは成立しません(平成18年 問5・平成21年 問7)。土地と建物に共同抵当権を設定したあとで建物を取り壊して再築した場合も、新しい建物に同じ順位の抵当権を設定したなどの事情がない限り、成立しないとされています(平成30年 問6。行政書士試験でも平成23年 問30 で問われました)。なお、抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は土地とともにその建物を競売することができますが、優先権を行使できるのは土地の代価についてだけです(民法389条1項)。このように、法定地上権と一括競売の規定は互いに関連しています。

抵当建物使用者の引渡しの猶予は、抵当権者に対抗することができない賃貸借によって建物を使用または収益する者のうち、競売手続の開始前から使用または収益をする者などについて、買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは建物を引き渡すことを要しない、という定めです(民法395条1項1号・2号)。名前のとおり建物についての規定で、土地の賃借人には猶予がありません。買受けの時より後の使用の対価について、買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がないときは、この猶予は適用されません(同条2項)。


行政書士試験では、どこまで問われるか

行政書士試験には、40字程度で書く記述式があります。抵当権はこの記述式でも問われていて、平成23年 問45 では、第三取得者が抵当権を消滅させる方法を2つ書かせています。答えは抵当権消滅請求と代価弁済で、どちらも表1で扱った条文です。令和5年 問45 では、抵当権の目的である建物が焼失して火災保険金債権が発生した場合に、優先弁済権を行使するにはどうすればよいかが問われました。物上代位により、払渡しの前に差押えをする、というのが答えになります(民法372条・304条1項)。

択一では、根抵当権だけで5肢すべてを使う問題が、平成28年 問31・令和2年 問29・令和4年 問29 に出ています。問われているのは、被担保債権の範囲の変更に第三者の承諾が要るか、元本の確定前の債権譲渡で根抵当権を行使できるか、極度額の減額を請求できるのはいつか、といった点で、いずれも表1の右の列にある条文です。行政書士試験では、民法398条の2から398条の22までが、1問の5肢に分かれて問われています。

なお、抵当権が出てくる記述式には、改正前の民法を前提にしたものもあります(平成28年 問45 の売主の担保責任など)。現行の民法では同じ形では成り立たないため、このページでは扱っていません。


よくある質問

宅建試験で根抵当権は出ますか?

出題の実績はあります。ただし、宅建試験の問題文に「根抵当」の語が出てきたのは平成26年 問4 が最後で、それ以降、令和7年までの本試験では選択肢の1つにも出ていません。その平成26年 問4 も、抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合を比べさせる形でした。

抵当権と根抵当権で、担保される利息の範囲はどう違いますか?

抵当権は、満期となった最後の2年分についてのみ行使でき、遅延損害金も利息その他の定期金と通算して2年分を超えられません(民法375条1項・2項)。根抵当権にはこの制限がなく、確定した元本と、利息その他の定期金と、遅延損害金の全部について、極度額を限度として行使できます(民法398条の3第1項)。

元本が確定する前の根抵当権は、順位を譲渡できますか?

できません。元本の確定前は、民法376条1項による根抵当権の処分をすることができないと定められています(民法398条の11第1項)。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすること(転抵当)は妨げられず(同項ただし書)、根抵当権の順位の変更(民法374条1項)もできます。

抵当権消滅請求は誰ができますか?

抵当不動産の第三取得者です(民法379条)。主たる債務者、保証人およびこれらの者の承継人は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になっても、抵当権消滅請求をすることができません(民法380条)。また、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前にしなければならないという時期の制限があります(民法382条)。

代価弁済と抵当権消滅請求の違いは何ですか?

手続を始める人が違います。代価弁済は、抵当不動産について所有権または地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済するもので、抵当権はその第三者のために消滅します(民法378条)。抵当権消滅請求は、第三取得者のほうから、登記をした各債権者に民法383条1項各号の書面を送付して行うものです(民法379条・383条)。登記をしたすべての債権者が承諾し、第三取得者がその代価または金額を払い渡すか供託したときに、抵当権が消滅します(民法386条)。

行政書士試験では、抵当権と根抵当権はどのように問われますか?

5肢択一と記述式の両方で問われています。択一では、抵当権の効力や物上代位が1問の5肢すべてを使って問われ、根抵当権も同じ形で平成28年・令和2年・令和4年に出ています。記述式では、平成23年 問45 で抵当権消滅請求と代価弁済が、令和5年 問45 で火災保険金債権への物上代位が問われました。


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