行政書士の個人情報保護法と情報通信|出題の数と定義の違い

このページは、行政書士試験の基礎知識のうち、情報通信・個人情報保護の分野をまとめたものです。分野の名前は試験案内のとおりで、情報通信と個人情報保護を1つのまとまりとして扱います。

出題の数は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公開している令和2年度〜令和7年度の6年分の試験問題から、このサイトが数えたものです。個人情報保護法の条文は、令和8年度の試験の基準日にあたる令和8年4月1日現在の条文で確かめています。

基準日は令和8年度行政書士試験のご案内(「法令については、令和8年4月1日現在施行されている法令に関して出題します」)によります。条文はe-Gov法令検索で確かめました(2026年9月時点)。


これまでの出題

基礎知識の問47〜60のうち、情報通信と個人情報保護にあたる問を、年度順に並べたのが表Aです。公式の試験問題は問ごとの分野を示していないので、設問の書き出しから、このサイトが分野を分けています。


表A 基礎知識の情報通信・個人情報保護の問(令和2年度〜令和7年度・20問。設問から当サイトが分けたもの)
年度・問 分野 情報通信の型 設問の書き出し(試験問題から。空欄補充の問は題材)
令和2年度 問55 情報通信 用語 インターネット通信で用いられる略称に関する…
令和2年度 問56 個人情報保護 — 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に関する…
令和2年度 問57 個人情報保護 — 個人情報の保護に関する法律に関する…
令和3年度 問55 情報通信 技術と社会 次の文章の空欄(題材:顔認識・顔認証システムと個人情報保護法の規制)…
令和3年度 問56 情報通信 技術と社会 国土交通省自動車局による自動運転ガイドラインに定められた車両の自動運転化の水準に関する…
令和3年度 問57 個人情報保護 — 国の行政機関の個人情報保護制度に関する…
令和4年度 問55 情報通信 技術と社会 次の文章の空欄(題材:人工知能(AI))…
令和4年度 問56 情報通信 用語 情報通信に関する用語を説明した…
令和4年度 問57 個人情報保護 — 個人情報保護制度に関する…
令和5年度 問54 情報通信 制度と行政 日本における行政のデジタル化に関する…
令和5年度 問55 情報通信 用語 情報通信用語に関する…
令和5年度 問56 情報通信 技術と社会 次の文章の空欄(題材:インターネット上の広告とプライバシー)…
令和5年度 問57 個人情報保護 — 個人情報に関する…
令和6年度 問54 情報通信 制度と行政 デジタル環境での情報流通に関する…
令和6年度 問55 情報通信 制度と行政 欧米の情報通信法制に関する…
令和6年度 問56 情報通信 制度と行政 デジタル庁に関する…
令和6年度 問57 個人情報保護 — 個人情報保護法に関する…
令和7年度 問55 情報通信 技術と社会 ディープフェイクに関する…
令和7年度 問56 情報通信 技術と社会 インターネット上のなりすまし広告などを通じた近年の投資詐欺問題に関する…
令和7年度 問57 個人情報保護 — 個人情報保護制度に関する…

表Aの令和2年度〜令和7年度では、次のことが読み取れます。

  • 個人情報保護は、どの年度も1〜2問です。
  • 情報通信は1〜3問で、6年分の合計では情報通信が13問、個人情報保護が7問です。

分け方:設問に「個人情報」がある問を個人情報保護、情報通信の用語やデジタル化を扱う問を情報通信としました。顔認証と個人情報保護法の規制を題材にした問のように、どちらとも読める問は情報通信に数えています。

なお、情報公開法(行政機関情報公開法)と公文書管理法は、情報通信・個人情報保護の分野には入れていません。このサイトの手元の過去問(平成21年度〜令和7年度の択一式)で、問題の主題に情報公開法・公文書管理法が入っている問は、どれも法令等(行政法など)の問です(平成24年度 問25・令和2年度 問25・令和4年度 問42・令和6年度 問26・令和7年度 問26。このほか、行政法の問の一部の肢として出た例もあります)。このページでは扱いません。


情報通信で問われてきたこと

表Aの情報通信の13問を、設問の書き出しから3つの型に分けると、次のようになります(表Aの「情報通信の型」の列)。

用語(3問)
インターネット通信で使われる略称や、情報通信の用語の意味を問う型です。覚えた分だけ取れる型なので、略称は正式名称と意味をセットにして覚えます。
技術と社会(6問)
AI、顔認証、自動運転、ディープフェイク、なりすまし広告のように、新しい技術と、それが社会に起こしている問題を扱う型です。年度ごとに題材が入れ替わります。
制度と行政(4問)
行政のデジタル化、デジタル庁、欧米の情報通信法制のように、国や海外の制度を扱う型です。

用語は、覚えた語がそのまま問われることがあるので、準備が点につながりやすい型です。一方、表Aの技術と社会の6問は、同じ題材がくり返し出ているわけではありません。まず用語を固め、技術と社会・制度と行政は、ニュースで大きく扱われた技術や制度の名前と中身を押さえておく。この順番が準備しやすい進め方です。

顔認証の問のように、題材は情報通信でも、個人情報保護法の考え方が関わる問もあります。次の節の定義は、情報通信の問を読むときの土台にもなります。


個人情報保護法の定義

表Aの個人情報保護の問は、設問の書き出しを見ると、個人情報保護法や個人情報保護制度を正面から問うものです。条文の定義、とくに似た名前の用語の区別が土台になります。表Bは、個人情報保護法の定義を、条文の言い換えで並べたものです。


表B 個人情報保護法の定義(令和8年4月1日現在・令和7年6月1日施行の版)
用語 条文 定義の要点
個人情報 2条1項 生存する個人に関する情報で、氏名・生年月日などの記述等により特定の個人を識別できるもの(ほかの情報と容易に照合して識別できるものを含む)か、個人識別符号が含まれるもの
個人情報データベース等 16条1項 個人情報を含む情報の集合物で、特定の個人情報を電子計算機で検索できるように体系的に構成したものなど(利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるものを除く)
個人データ 16条3項 個人情報データベース等を構成する個人情報
保有個人データ 16条4項 個人情報取扱事業者が、開示・内容の訂正等・利用の停止等・第三者への提供の停止を行う権限を持つ個人データ(存否が明らかになると公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるものを除く)
個人識別符号 2条2項 身体の一部の特徴を電子計算機用に変換した符号や、役務・商品・カードなどで利用者ごとに異なるよう割り当てた符号のうち、政令で定めるもの
要配慮個人情報 2条3項 人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪により害を被った事実など、不当な差別・偏見その他の不利益が生じないよう特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報
仮名加工情報 2条5項 ほかの情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように、記述等の一部や個人識別符号の全部を削除するなどして加工した情報
匿名加工情報 2条6項 特定の個人を識別できないように加工し、かつ、もとの個人情報を復元できないようにした情報
個人関連情報 2条7項 生存する個人に関する情報で、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のどれにも当たらないもの
保有個人情報 60条1項 行政機関等の職員が職務上作成・取得した個人情報で、組織的に利用するものとして行政機関等が保有しているもの(行政文書・法人文書・地方公共団体等行政文書に記録されているものに限る)。行政機関等の側の用語

表Bの用語は、3つの組に分けて覚えると整理しやすくなります。

個人情報・個人データ・保有個人データ

この3つは、外側から順に狭くなる関係です。

  • 個人情報(2条1項)は、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの(1号)か、個人識別符号が含まれるもの(2号)です。
  • 個人データ(16条3項)は、個人情報のうち、個人情報データベース等を構成するものです。検索できるように体系的に構成された集まりに入っているかどうかで分かれます。
  • 保有個人データ(16条4項)は、個人データのうち、個人情報取扱事業者が開示・訂正・利用停止などを行う権限を持つものです。

個人データと保有個人データの定義は、事業者の義務を定める第4章の中の定義です(16条は「この章において」と書いています)。

仮名加工情報・匿名加工情報・個人関連情報

この3つは、個人を識別できるかどうかを軸に決められています。個人関連情報は、ほかのどれにも当たらない残りの情報です。

  • 仮名加工情報(2条5項)は、ほかの情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報です。照合すれば識別できる余地が残ります。
  • 匿名加工情報(2条6項)は、特定の個人を識別できないように加工し、もとの個人情報を復元できないようにした情報です。
  • 個人関連情報(2条7項)は、生存する個人に関する情報で、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のどれにも当たらないものです。

保有個人データと保有個人情報

名前が似ていますが、使う場面が違います。保有個人データは事業者の側(第4章)の用語、保有個人情報(60条1項)は行政機関等の側(第5章)の用語です。保有個人情報は、行政機関等の職員が職務上作成・取得し、組織的に利用するものとして保有している個人情報で、行政文書などに記録されているものに限られます。

設問に「事業者」とあるか「行政機関等」とあるかで、どちらの定義で読むかが決まります。


令和3年の改正で1本の法律に

いまの個人情報保護法は、民間の事業者だけでなく、国の行政機関や地方公共団体の機関などにも適用される1本の法律です。

以前は、国の行政機関については「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(行政機関個人情報保護法)という別の法律がありました。この法律は、令和3年法律第37号(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律)によって、令和4年4月1日に廃止されています。いまの個人情報保護法は、「行政機関等」の定義(2条11項)に、行政機関(1号)とならんで地方公共団体の機関(2号)を入れています。

表Aの設問の書き出しにも、この移り変わりが表れています。令和2年度 問56は、廃止前の行政機関個人情報保護法の名前で問われていました。廃止後の令和4年度以降の設問の書き出しは「個人情報保護制度」「個人情報」「個人情報保護法」で、廃止された法律の名前は出ていません(確かめたのは設問の書き出しだけです)。古い問題集で学ぶときは、法律の名前と条番号が、いまの個人情報保護法のどこにあたるかを確かめてください。

改正と廃止の日付は、e-Gov法令検索の改正履歴で確かめました(2026年9月時点)。個人情報保護法は、令和8年にも改正されています(令和8年法律第56号。e-Govでは令和8年7月17日施行の版から入っています)。令和8年度の試験の基準日(令和8年4月1日現在)より後の施行ですが、表Bの定義の文言は、この版でも変わっていないことを確かめています。


よくある質問

行政書士試験の情報通信・個人情報保護の対策は?

令和2年度〜令和7年度の公式の試験問題では、個人情報保護が毎年1〜2問、情報通信が毎年1〜3問でした(このサイトが設問から分けた数)。個人情報保護は、個人情報保護法の定義の区別から固めます。情報通信は、まず用語の型を固め、そのうえで技術と社会・制度と行政の型に広げる順番が準備しやすい形です。

情報通信・個人情報保護の用語は、どこから覚えればよいですか?

個人情報保護法の用語は、個人情報・個人データ・保有個人データの3つから覚えます。外側から順に狭くなる関係なので、その順にたどって覚えられます。そのあとに、仮名加工情報・匿名加工情報・個人関連情報を「個人を識別できるかどうか」で区別します。情報通信の用語は、略称を正式名称と意味のセットで覚えます。

個人情報・個人データ・保有個人データの違いは?

個人情報(2条1項)のうち、個人情報データベース等を構成するものが個人データ(16条3項)、個人データのうち、個人情報取扱事業者が開示・訂正・利用停止などを行う権限を持つものが保有個人データ(16条4項)です。後ろの2つは、事業者の義務を定める第4章の中の定義です。


まとめ

情報通信・個人情報保護は、令和2年度〜令和7年度の公式の試験問題で、情報通信が13問、個人情報保護が7問出ています。個人情報保護は、個人情報・個人データ・保有個人データの3段の関係と、仮名加工情報・匿名加工情報の区別から固めます。情報通信は用語から入り、新しい技術や制度は名前と中身を押さえる。範囲が決まっている部分から準備すると、基礎知識の基準点に向けた得点源になります。