宅建業の事務所とは、本店・支店のほか、それ以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものをいいます(宅地建物取引業法施行令(以下「令」)1条の2)。国の基準として示されているのは、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が示す「継続的に使用でき、社会通念上事務所として認識される程度の形態」にとどまり、自宅・レンタルオフィス・シェアオフィス・バーチャルオフィスを事務所として使えるかは、条文と解釈・運用の考え方に個別の定めがなく、都道府県の審査基準で判断されます。
事務所として認められない物件を借りると、借り直しの費用と時間がかかります。物件を契約する前に、図面を持って申請先の都道府県に確認しておくと、手戻りを避けられます。このページでは、事務所の定義、継続性と独立性、自宅やレンタルオフィスの扱い、写真と添付書類、事務所に掲げるもの、兼業、移転・増設を、条文(宅地建物取引業法(以下「法」)・同法施行規則(以下「規則」))と都道府県の運用に分けて整理します。
事務所ごとに、成年者である専任の宅建士を置くことも必要です(法31条の3第1項)。人数や常勤性は、専任の宅建士の要件のページで解説しています。
このページの目次
宅建業の「事務所」とは(本店・支店と、それ以外の場所)
令1条の2は、宅建業の事務所を次の2つに分けて定めています。
- 本店・支店(令1条の2第1号)
- 本店・支店以外で、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所のうち、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの(同条2号)
解釈・運用の考え方では、1号の本店・支店は、商業登記簿等に登載され、継続的に営業の拠点となる施設としての実体があるものとされています。宅建業を営まない支店は、事務所に当たりません。商業登記をしていない個人の場合は、営業の本拠が本店に当たると整理されています。
本店の扱いは、申請先の都道府県の案内もあわせて確かめておきましょう。たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、本店で宅建業を行わず支店だけで宅建業を営む場合も、本店を宅建業の事務所として扱い、本店にも専任の宅建士の設置、事務所の要件、営業保証金の供託などを求めています。
2号の「契約を締結する権限を有する使用人」は、本店・支店以外の場所が事務所に当たるかどうかを決める定義の要素です。解釈・運用の考え方では、原則として、その施設の代表者などが当たるとされています。令1条の2は、この使用人を置くことを義務として定めた規定ではないと読めます。事務所ごとに置くことが法で義務づけられているのは、専任の宅建士です(法31条の3第1項)。
ただし、事務所の代表者が常勤しない場合に、政令で定める使用人を置くよう求める都道府県があります。たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、代表者が常勤しない本店・支店には、政令で定める使用人を置く必要があるとしています。
事務所が1つの都道府県の中だけにあるか、2以上の都道府県にあるかで、知事免許か大臣免許かが決まります(法3条1項)。免許の区分は、宅建業免許とは(大臣免許と知事免許)で解説しています。
営業保証金と保証協会の分担金の額も、主たる事務所とその他の事務所ごとに定められています(令2条の4・7条)。事務所が増えるほど、供託する営業保証金や、保証協会に納める分担金が増えます。額と手続きは、営業保証金と保証協会のページで解説しています。
継続性と独立性(事務所として認められる形)
事務所の形(継続性・独立性)について法令が定めているのは、上の事務所の定義(令1条の2)と、免許の申請書に添える書類にとどまります。申請書には、事務所を使用する権原に関する書面、事務所付近の地図、事務所の写真を添えます(規則1条の2第1項3号・4号)。
国の基準としては、解釈・運用の考え方で、事務所は継続的に使用でき、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えていることが必要とされています。これは大臣免許の取扱いとして書かれたもので、出入口・仕切り・設備など、独立性の具体的な中身は、都道府県の審査基準と手引きで決まります。独立性について法令にあるのは、事務所の定義と添付書類にとどまります。
たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、事務所には継続性と独立性が必要だとし、テント・コンテナなどの臨時的な仮設建物、キャンピングカー、ホテルの一室は認めないとしています。同じ部屋を他の者と共同で使う場合は原則として認めず、170cm程度以上の固定式のパーティションで仕切られ、他の事務所を通らずに直接出入りできる場合は、独立性が保たれているかどうかを確認するとしています。また、同じ手引きの事務所の写真の留意事項では、事務所専用の固定電話、専任の宅建士の席(机・椅子)、応対場所(接客スペース)の設置を求めています。
これらは沖縄県の手引きの例です。法令と解釈・運用の考え方には、パーティションの高さや固定電話の要否の定めは見当たりません。基準は都道府県ごとに異なるため、申請先の都道府県の手引きで確かめておきましょう。
プレハブの建物についても、条文と解釈・運用の考え方に個別の定めは見当たりません。沖縄県の手引きの例のように臨時的な仮設建物を認めない都道府県もあり、継続的に使用できる形態かどうかで判断されるため、プレハブの建物を事務所にする場合も、申請先に事前に確認しておきましょう。
申請の準備を「5点セット」のように、そろえるものの数で説明されることもあります。何をそろえるかは法令の語ではなく、都道府県の手引きの確認事項です。また、書類をそろえれば認められる、という基準でもありません。
自宅を事務所にできるか(マンションの一室を含む)
自宅を宅建業の事務所として使えるかについて、条文と解釈・運用の考え方には個別の定めがありません。実際の判断は都道府県の審査基準によるもので、その条件を満たさなければ、事務所として認められません。
条件の例として、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、住宅の一部を兼用する事務所は原則として認めず、次の条件をすべて満たす場合に認めるとしています。
- 玄関から、他の部屋を通らずに事務所に行ける
- 居住部分と、壁など固定されたもので区切られている(開け閉めできるふすまなどは不可)
- 事務所としてのみ使用している
マンションなど区分所有建物の一室についても、同じ手引きでは原則として認めず、管理組合の承諾と使用承諾書、居住者がいない一室であることなどの条件を求めています。
条件の中身は、都道府県ごとに異なります。物件を借りる前や、自宅を改装する前に、図面を持って申請先に相談しましょう。沖縄県の手引きも、事前の相談が必要であるとしています。
レンタルオフィス・シェアオフィス・バーチャルオフィス
レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィスのいずれについても、条文と解釈・運用の考え方には、事務所として使えるかどうかの個別の定めがありません。判断の軸は、上の「継続性と独立性」で見た、継続的に使用できるか・独立しているかと、申請書に添える使用権原の書面・写真です(規則1条の2第1項3号・4号)。
利用の契約を結ぶ前に、申請先の都道府県に確認しておきましょう。
レンタルオフィス(個室)
個室として区切られているか、他の事務所を通らずに出入りできるか、継続的に使えるかが見られます。たとえば沖縄県の手引きでは、上の「継続性と独立性」で見たとおり、他の事務所を通らずに直接出入りできるかを確認するとしています。使用権原の書面として何を出すかも、申請先の手引きで確認できます。
シェアオフィス・コワーキングスペース
同じ部屋を他の者と共同で使う形について、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、原則として認めず、170cm程度以上の固定式のパーティションで仕切られ、他の事務所を通らずに直接出入りできる場合は、独立性が保たれているかどうかを確認するとしています。この基準に当てはめると、固定の席や仕切りのない共用スペースは、条件を満たしません。ほかの都道府県でも、申請先の基準で確かめておくことをおすすめします。
バーチャルオフィス
住所の利用や郵便物の受取だけを契約する形について、条文と解釈・運用の考え方に個別の定めはありません。ただし、国の基準は「継続的に使用でき、社会通念上事務所として認識される程度の形態」とされていて、申請書には事務所の写真を添えます(規則1条の2第1項4号)。解釈・運用の考え方では、写真は事務所の外観・入口付近・内部を撮るものとされています。業務を行う場所としての実体がこれに当たるかは、申請先が判断します。実際に業務を行う場所を別に確保し、その場所を事務所として申請すれば、手戻りを減らせます。その場所も、都道府県の審査基準を満たす必要があります。
事務所の写真と、申請書に添える書類
免許の申請書には、事務所について次の書類を添えます(規則1条の2第1項3号・4号)。
- 事務所を使用する権原に関する書面
- 事務所付近の地図
- 事務所の写真
解釈・運用の考え方では、地図は最寄りの交通機関や公共公益施設の位置を明示した概略図とし、写真は事務所の外観・入口付近・内部(報酬額表や業者票の掲示が確認できるもの)を撮る扱いとされています。これは大臣免許の取扱いとして書かれたもので、知事免許で何を求めるかは、都道府県によって異なります。
たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、申請時から3か月以内に撮影したカラー写真で、建物の外観全体、入口付近、応対場所、事務所までの経路、内部などの写真を求め、あわせて独立性が分かる間仕切りの写真と間取図の提出も必要としています。撮影の時期や撮る場所は申請先の手引きで決まるので、撮影の前に確かめておくと、撮り直しを防げます。
事務所に掲げるもの(標識・報酬額)と備え付けるもの
事務所には、次のものを掲げ、備え付けます。
- 標識(業者票):事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲げます(法50条1項)。様式は規則の別記様式第九号(規則19条2項1号)で、2025年12月1日に改正されています。
- 報酬の額:事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲示します(法46条4項)。
- 従業者名簿:事務所ごとに備え、最終の記載をした日から10年間保存します(法48条3項・規則17条の2第4項)。
- 帳簿:事務所ごとに備え付けます(法49条)。
解釈・運用の考え方では、業者票や報酬額の掲示を、一定の要件のもとでデジタルサイネージで行ってもよいと整理されています。業者票の様式の改正や従業者名簿の記載事項は、宅建業の従業者名簿と標識・報酬額の掲示・帳簿のページで解説しています。
兼業している場合(他の事業と同じ事務所)
宅建業のほかに営んでいる事業の種類は、免許の申請書の記載事項です(法4条1項6号)。法9条の変更の届出の対象は、4条1項1号から5号の事項(商号・役員・政令で定める使用人・事務所・専任の宅建士)で、兼業の事業(6号)は含まれていません。ただし、都道府県が別の書類の提出を求めることがあるため、兼業の内容が変わったときは、申請先の手引きで確かめておきましょう。
兼業している会社では、業務に従事する者の数え方や、専任の宅建士の扱いについて、解釈・運用の考え方に整理があります。専任の宅建士の要件(必要な人数と、業務に従事する者の数え方)のページで解説しています。
同じ部屋で他の事業も営む場合は、宅建業の事務所として独立しているかが問われます。沖縄県の手引きの例は、上の「継続性と独立性」で紹介しています。
事務所を移す・増やすとき
事務所の名称や所在地が変わったときは、変更の日から30日以内に、免許権者に変更の届出をしなければなりません(法9条・4条1項4号)。ただし、知事免許の業者が事務所を他の都道府県に移す場合や、2以上の都道府県に事務所を置くことになる場合など、免許をする者が変わるときは、変更の届出ではなく免許換えの申請が必要です(法7条1項1号〜3号)。変更の届出は宅建業の変更届、免許換えは宅建業の免許換えのページで解説しています。
事務所を増やしたときは、営業保証金を供託している業者は、増やした事務所の分の営業保証金を供託して届け出た後でなければ、新しい事務所で事業を始められません(法26条)。保証協会の社員は、新しい事務所を設置した日から2週間以内に、その分の分担金を保証協会に納めなければならず、納めないと社員の地位を失います(法64条の9第2項・3項)。主たる事務所の移転で最寄りの供託所が変わるときは、営業保証金の保管替えなどの手続きもあります(法29条1項)。詳しくは、営業保証金と保証協会(事務所を増やしたとき・移したとき)で解説しています。
移転先や新しい事務所も、このページで見た要件(継続性・独立性・写真)を満たす必要があります。移転や増設の前に、申請先に確認しておきましょう。
よくある質問
宅建業法で、事務所の要件はどう定められていますか?
宅建業法施行令1条の2の定めでは、事務所は、本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置く場所をいいます。独立性などの具体的な基準は、都道府県の審査基準で判断されます。
宅建士は、自宅を事務所として開業できますか?
条文に自宅の可否の定めはなく、都道府県の審査基準の条件を満たさなければ、事務所として認められません。たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、住宅の一部を兼用する事務所は原則として認めず、他の部屋を通らずに行けることなど3つの条件をすべて満たす場合に認めるとしています。なお、宅建士であることと宅建業の免許は別で、免許を受けるには事務所などの要件を満たす必要があります。
宅建業の事務所には、固定電話が必要ですか?
法令と解釈・運用の考え方には、固定電話の要否の定めは見当たりません。ただし、都道府県が求めることがあり、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、事務所専用の固定電話の設置を求めています。申請先の手引きで確かめておくことをおすすめします。
宅建業の事務所に必要なものは何ですか?
法律で定められているのは、事務所ごとの専任の宅建士の設置(法31条の3第1項)、標識(業者票)と報酬の額の掲示(法50条1項・46条4項)、従業者名簿と帳簿の備付け(法48条3項・49条)です。机や電話などの設備は、都道府県の手引きで確かめる必要があります。
バーチャルオフィスで、宅建業の免許は取れますか?
条文と解釈・運用の考え方に個別の定めはありません。国の基準は「継続的に使用でき、社会通念上事務所として認識される程度の形態」で、申請には事務所の写真を添えるため、業務を行う場所としての実体があるかを申請先が判断します。契約の前に、申請先に確認しておくと安心です。
関連するページ
免許の要件の全体は宅建業免許の要件、宅建業免許の全体像は宅建業免許とは、開業にかかる費用は宅建業の開業費用のページで解説しています。新規の申請の手続きは、宅建業免許の新規申請のページをご覧ください。