宅建業者は、事務所ごとに、標識(宅地建物取引業者票)と報酬の額を公衆の見やすい場所に掲げ、従業者名簿と帳簿を備え、従業者には従業者証明書を携帯させる義務があります(宅地建物取引業法(以下「法」)50条1項・46条4項・48条1項・3項・49条)。標識は、事務所のほか、案内所や分譲の現地などにも掲げます。
従業者名簿は最終の記載をした日から10年間、帳簿は各事業年度の末日に閉鎖してから5年間(自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間)保存します(宅地建物取引業法施行規則(以下「規則」)17条の2第4項・18条3項)。業者票と従業者名簿の様式は2025年に改正され、4月1日からは、業者票には専任の宅建士の氏名ではなく数を書き、従業者名簿の記載事項からは生年月日が除かれました。12月1日には、業者票の縦の寸法が変わっています。
これらの義務に違反したときの罰則は、下の「違反したときの罰則」で整理します。事務所ごとに掲げるもの・備えるものと保存の期間を、表1にまとめました。
| 何を | どこに・どうする | 保存・有効期間 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 標識(業者票) | 事務所等と、規則で定める業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に掲げる | — | 法50条1項 規則19条1項1号〜5号 |
| 報酬の額 | 事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示する | — | 法46条4項 |
| 従業者証明書 | 従業者に携帯させる(取引の関係者から請求があれば提示する) | 有効期間は5年以下(様式の備考) | 法48条1項〜2項 規則17条 |
| 従業者名簿 | 事務所ごとに備え、記載事項を記載する | 最終の記載をした日から10年間 | 法48条3項 規則17条の2第4項 |
| 帳簿 | 事務所ごとに備え、取引のあったつど記載する | 各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間) | 法49条 規則18条2項〜3項 |
標識・報酬の額の掲示、従業者証明書の携帯、従業者名簿と帳簿の備付けと記載の義務に違反すると、50万円以下の罰金の対象になります(法83条1項2号・3号の2・4号)。
このページでは、標識(業者票)と報酬額の掲示、従業者名簿、従業者証明書、帳簿の順に、記載事項・様式・保存と、違反したときの罰則を整理します。
標識(宅地建物取引業者票)の掲示
宅建業者は、事務所等と、規則で定める業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければなりません(法50条1項)。事務所等は、事務所と、規則15条の5の2の案内所などの場所です。規則で定める場所は、事務所等に当たらない次の場所です(規則19条1項1号〜5号)。
- 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、事務所以外のもの
- 一団の宅地建物の分譲をする場合の、その宅地・建物の所在する場所(分譲の現地)
- 案内所を設置してその分譲を行う場合の、その案内所
- 他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理・媒介を、案内所を設置して行う場合の、その案内所
- 業務に関して展示会などの催しを実施する場合の、その場所
標識の様式は、場所ごとに決まっています。事務所に掲げるのが、別記様式第九号の「宅地建物取引業者票」です。案内所などに掲げる標識は、宅建士を置くべき場所かどうかで様式が分かれます(規則19条2項1号〜6号)。表2にまとめました。
| 場所の区分 | 場所と様式(条文の定め) | 条文 |
|---|---|---|
| 1号 事務所 | 事務所 別記様式第九号 | 規則19条2項1号 |
| 2号 宅建士を置くべき継続的な施設・案内所・催しの場所 | 前項第一号、第三号又は第五号に規定する場所で法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの 別記様式第十号 | 規則19条2項2号 |
| 3号 宅建士を置かない継続的な施設・案内所・催しの場所 | 前項第一号、第三号又は第五号に規定する場所で前号に規定するもの以外のもの 別記様式第十号の二 | 規則19条2項3号 |
| 4号 一団の分譲の現地 | 前項第二号に規定する場所 別記様式第十一号 | 規則19条2項4号 |
| 5号 他の業者の分譲の代理・媒介の案内所(宅建士を置くべきもの) | 前項第四号に規定する場所で法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの 別記様式第十一号の二 | 規則19条2項5号 |
| 6号 他の業者の分譲の代理・媒介の案内所(宅建士を置かないもの) | 前項第四号に規定する場所で前号に規定するもの以外のもの 別記様式第十一号の三 | 規則19条2項6号 |
「前項第一号」などは、規則19条1項の場所(1号=継続的に業務を行うことができる施設を有する場所、2号=一団の分譲の現地、3号=分譲の案内所、4号=他の業者の分譲の代理・媒介の案内所、5号=展示会などの催しの場所)を指します。
業者票の様式の改正(2025年4月1日・12月1日)
業者票の様式は、2025年に2回改正されています。2025年4月1日からは、「この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の氏名」の欄が「専任の宅地建物取引士の数」の欄(宅地建物取引業に従事する者の数を併記)に改められ、「この事務所の代表者氏名」の欄が加わりました。2025年12月1日からは、縦の寸法が30cm以上から25cm以上になっています(横35cm以上は変わりません)。宅建士を置く案内所などの標識(別記様式第十号)からも、2025年4月1日に専任の宅建士の氏名の欄が除かれています。
古い解説や様式には、専任の宅建士の氏名を書く欄や、縦30cm以上の寸法が残っていることがあります。業者票を作り直すときは、いまの様式に合わせておくと安心です。
解釈・運用の考え方では、業者票の「宅地建物取引業に従事する者の数」は、専任の宅建士の数に変更があった場合にだけ変更し、そのとき提出する専任の宅地建物取引士設置証明書に書いた数と同じ数を書く扱いです。専任の宅建士を何人置くかは、専任の宅建士の要件(置く人数)で解説しています。
デジタルサイネージでの掲示と、クーリング・オフの文言
解釈・運用の考え方では、業者票や報酬額の掲示をデジタルサイネージで行ってもよいとしています。ただし、営業時間内その他公衆が必要なときに確認できること、確認できる旨の表示が常にわかりやすくされていることが要件で、分譲の現地の標識(別記様式第十一号)は、営業時間外も確認できること(人感センサーなど)も求められます。これは大臣免許の取扱いとして書かれたものなので、知事免許の業者は、申請先の都道府県に確認しておくと安心です。
宅建士を置く案内所などの標識(別記様式第十号)には、その場所がクーリング・オフの対象にならない場所(規則16条の5)に当たらないとき(つまり、その場所でした契約にクーリング・オフが適用されるとき)は、「この場所においてした契約等については、宅地建物取引業法第37条の2の規定によるクーリング・オフ制度の適用があります。」の文言を、2cm四方以上の文字で表示します(様式の備考)。標識の「事務所等」(法31条の3第1項の宅建士を置く場所)と、クーリング・オフの「事務所等」(規則16条の5)は、意味が異なる点に注意が必要です。
案内所などを設けるときは、標識とは別に、業務を開始する日の10日前までに、免許権者と所在地の都道府県知事に届け出る必要があります(法50条2項・規則19条3項)。届出の期限は、宅建業免許を受けた後の届出と期限の一覧(案内所等の届出)で解説しています。
報酬額の掲示
宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければなりません(法46条4項)。掲示するのは、国土交通大臣が定めた報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)で、その業者が受け取る報酬の料金表を掲示するという定めではありません。
デジタルサイネージで掲示するときの扱いは、業者票と同じ要件です(解釈・運用の考え方)。報酬の額そのもの(告示の計算の方法)は、このページでは扱いません。
従業者名簿
宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備え、記載事項を記載しなければなりません(法48条3項)。記載事項は、法で定める従業者の氏名と従業者証明書の番号に、規則17条の2第1項の4つの事項を加えたものです。表3にまとめました。
| 区分 | 条文の定め | 条文 |
|---|---|---|
| 法で定める事項(氏名・証明書の番号) | 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。 | 法48条3項 |
| 規則1号 主たる職務内容 | 主たる職務内容 | 規則17条の2第1項1号 |
| 規則2号 宅建士であるか否かの別 | 宅地建物取引士であるか否かの別 | 規則17条の2第1項2号 |
| 規則3号 その事務所の従業者となった年月日 | 当該事務所の従業者となつた年月日 | 規則17条の2第1項3号 |
| 規則4号 その事務所の従業者でなくなった年月日 | 当該事務所の従業者でなくなつたときは、その年月日 | 規則17条の2第1項4号 |
名簿の様式は、別記様式第八号の二です(規則17条の2第2項)。
2025年4月1日から、生年月日は記載事項に含まれていません(規則17条の2第1項)。様式(別記様式第八号の二)からも、性別と生年月日の欄が除かれました。古い様式や手引きには性別・生年月日の欄があるものがあるので、名簿を作り直すときは、いまの様式を使いましょう。
様式の備考では、一時的に業務に従事する者も記載すること、記載すべき事由が生じたら2週間以内に記載すること、変更や訂正をするときは前の文字を読めるようにしておくことが定められています(規則17条の2第2項・別記様式第八号の二)。
解釈・運用の考え方では、「主たる職務内容」の欄は、代表者・役員なら役職名を書き、それ以外の従業者は総務・人事・経理・財務・企画・設計・広報・営業などに区分して書き、所属する社内の組織名をなるべく付記する扱いです。また、従業者名簿と従業者証明書には、旧姓を併記してもよいとしています(現姓と旧姓を恣意的に使い分けないことが前提です)。
従業者名簿は、最終の記載をした日から10年間保存します(規則17条の2第4項)。沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、退職や異動でその事務所に勤務しなくなった後も記録を廃棄せず、名簿を閉鎖してから10年間保存すること、名簿が宅建士の登録の実務経験の証明資料にもなることを案内しています。
記載事項を電子計算機のファイルなどに記録し、必要に応じ事務所で紙面に表示できるときは、その記録を名簿への記載に代えられます(規則17条の2第3項)。取引の関係者から請求があったときは、従業者名簿を閲覧させなければなりません(法48条4項)。電子で備えている場合は、紙面か画面に表示して閲覧させます(規則17条の2第3項)。
名前の似た「宅建業者名簿」は、国土交通大臣・都道府県知事が備える宅建業者の名簿で(法8条1項)、宅建業者が事務所ごとに備える従業者名簿とは別のものです。宅建業者名簿の登載事項は、宅建業の変更届(届出書の様式と宅建業者名簿)で解説しています。
従業者証明書
宅建業者は、従業者に従業者証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはなりません。従業者は、取引の関係者から請求があったときは、証明書を提示しなければなりません(法48条1項・2項)。
解釈・運用の考え方では、証明書を携帯させる者は、代表者(社長)を含み、専任の宅建士の数を数えるときの「業務に従事する者」に、非常勤の役員と、単に一時的に事務の補助をする者を加えた範囲です。一時的な者の証明書の有効期間は業務に従事する期間に限り、証明書の交付を受けた者は、すべて従業者名簿に記載する扱いです。
証明書の様式は別記様式第八号です(規則17条)。様式の備考では、次のように定めています。
- 番号は、雇用された年の西暦の下2桁、雇用された月の2桁、従業者ごとに重複しない番号の順に付ける
- 業務に従事する事務所が変わったときは、裏面に記入する
- 用紙の色は、青色以外とする
- 有効期間は、5年以下とする
有効期間は「5年以下」とされていて、決まった年数で作り直すという定めではありません。また、宅建士も宅建業者の従業者として業務に従事する以上、宅建士証とは別に、従業者証明書を携帯させる対象になると読めます(法48条1項)。
帳簿(取引台帳)
宅建業者は、事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、宅建業に関し取引のあったつど、取引の年月日、取引に係る宅地・建物の所在と面積のほか、規則18条1項の事項を記載しなければなりません(法49条)。規則18条1項の事項は、次のとおりです。
- 売買・交換か、売買・交換・貸借の代理・媒介かの別(1号)
- 相手方や代理を依頼した者、媒介に係る各当事者とその代理人の氏名と住所(2号)
- 取引に関与した他の宅建業者の商号・名称(3号)
- 宅地の現況地目・位置・形状などの概況(4号)
- 建物の構造上の種別・用途などの概況(5号)
- 売買金額、交換物件の品目と交換差金、賃料(6号)
- 報酬の額(7号)
- 自ら売主となる新築住宅の場合は、引き渡した年月日・床面積など(8号)
- 取引に関する特約その他参考となる事項(9号)
帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間)保存します(規則18条3項)。記載事項を電子計算機のファイルなどに記録し、必要に応じ事務所で紙面に表示できるときは、その記録を帳簿への記載に代えられます。閉鎖と保存の定めは、この記録にも当てはまります(規則18条2項・3項)。
違反したときの罰則
次の違反は、50万円以下の罰金の対象です(法83条1項2号・3号の2・4号)。
- 報酬の額を掲示しない(法46条4項)
- 従業者に従業者証明書を携帯させない(法48条1項)
- 標識を掲げない(法50条1項)
- 従業者名簿を備えない、記載事項を記載しない、虚偽の記載をする(法48条3項)
- 帳簿を備え付けない、記載事項を記載しない、虚偽の記載をする(法49条)
法人の代表者や従業者などが、法人の業務に関してこれらの違反をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます(法84条2号)。
また、従業者証明書(法48条1項)と従業者名簿(法48条3項)の違反は、業務停止処分の対象としても定められています(法65条2項2号)。宅建業法の規定に違反したときは、指示処分の対象にもなります(法65条1項)。罰金の対象になるかどうかだけでなく、処分の対象にもなりうる義務として扱っておくと安心です。
よくある質問
宅建業の従業者名簿に記載すべき事項は?
氏名・従業者証明書の番号・主たる職務内容・宅建士であるか否かの別・その事務所の従業者となった年月日・従業者でなくなった年月日です(法48条3項・規則17条の2第1項)。2025年4月1日から、生年月日は記載事項ではありません。
従業者名簿は何年保存しますか?
最終の記載をした日から10年間です(規則17条の2第4項)。
宅地建物取引業者名簿と従業者名簿の違いは?
宅建業者名簿は、国土交通大臣・都道府県知事が備える宅建業者の名簿です(法8条1項)。従業者名簿は、宅建業者が事務所ごとに備える従業者の名簿です(法48条3項)。
従業者名簿は誰が閲覧できますか?
取引の関係者から請求があったとき、宅建業者は従業者名簿を閲覧させなければなりません(法48条4項)。
業者票の様式はいつ変わりましたか?
2025年4月1日に、専任の宅建士の氏名の欄が数の欄になり、代表者氏名の欄が加わりました。2025年12月1日に、縦の寸法が25cm以上になりました(規則の別記様式第九号)。
関連するページ
免許を受けた後の届出と期限は宅建業免許を受けた後の届出と期限の一覧、事務所の要件と掲げるものの一覧は宅建業の事務所の要件(事務所に掲げるもの)、専任の宅建士は専任の宅建士の要件のページで解説しています。商号や事務所などが変わったときは宅建業の変更届、宅建業をやめるときは宅建業の廃業届と営業保証金の取戻しのページをご覧ください。