宅地建物取引業(以下「宅建業」)を営むには、宅建業の免許が必要です(宅地建物取引業法(以下「法」)3条1項)。一般には「宅建業許可」と呼ばれることもありますが、法令上の名前は「免許」です。
免許は2種類あり、事務所が2以上の都道府県にあれば国土交通大臣の免許(大臣免許)を、1つの都道府県にだけあればその都道府県知事の免許(知事免許)を受けます(法3条1項)。免許の有効期間は5年です(法3条2項)。
ただし、免許を受けただけでは、まだ事業を始めることはできません。営業保証金を供託して、その旨を届け出るまでは開始できません(法25条5項)。なお、保証協会に加入した場合は、この供託が不要になります(法64条の13)。このページでは、宅建業の範囲、宅建士の資格との違い、2種類の免許、有効期間、開業までの流れ、無免許営業の禁止を、条文とあわせて整理します。以下、宅地建物取引業法施行令を「令」、同法施行規則を「規則」と呼びます。
宅建業とは:免許が必要になる取引
宅建業とは、次の取引を「業として」行うことです(法2条2号)。
- 宅地・建物の売買・交換(自ら当事者となるもの)
- 宅地・建物の売買・交換・貸借の代理
- 宅地・建物の売買・交換・貸借の媒介
「業として」に当たるかについて、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、取引の対象者、取引の目的、物件の取得の経緯、取引の態様、反復継続性などの要素を総合して判断するとしています。親族間や隣地所有者間のような、特定の関係者どうしの取引や、相続税の納税・住み替えのための売却などは、事業性が低い例として挙げられています。
ただし、これらは総合して判断するための要素で、どれか1つに当てはまれば免許が要らない、というものではありません。
免許が要らない場合
宅建業の定義に含まれるのは、自ら当事者となる売買・交換と、売買・交換・貸借の代理・媒介です。そのため、自らが貸主となって宅地・建物を貸すことは、宅建業の定義に当たりません(法2条2号)。
また、国と地方公共団体には、宅建業法の規定が適用されません(法78条1項)。信託会社(令8条に定めるものを除きます)にも免許の規定は適用されず、国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされます。ただし、信託会社が宅建業を営もうとするときは、国土交通大臣への届出が必要です(法77条1項〜3項)。
「免許が要らない」と判断して、それが誤っていた場合の影響は大きくなります。自分の取引が「業として」に当たるかは個別に判断されるので、免許を受けずに取引を始める前に、申請先の都道府県に確認することをおすすめします。
宅建業免許と宅建士の資格の違い
宅建業免許と宅建士の資格は、名前が似ていますが、別のものです。
宅建業免許は、宅建業を営む事業者(会社・個人事業主)が受ける免許です(法3条1項)。免許に試験はなく、申請をして、免許の基準(法5条1項の欠格事由など)に当たらないかの審査を受けます。
宅建士(宅地建物取引士)は、人の資格です。宅建試験に合格し、都道府県知事の登録を受け、宅建士証の交付を受けた人を宅建士といいます(法2条4号・18条1項・22条の2第1項)。
この2つは、事務所ごとに置く専任の宅建士という要件で結びついています。宅建業者は、事務所ごとに、業務に従事する者の5分の1以上の割合で、成年者である専任の宅建士を置かなければならず(法31条の3第1項・規則15条の5の3)、これを欠くと免許を受けられません(法5条1項15号)。
一方で、法には、免許を申請する本人(法人の代表者や個人事業主)が宅建士でなければならないという定めはありません。ただし、その場合も、事務所ごとの専任の宅建士は置かなければなりません。
専任の宅建士を何人置くか、誰を置けるかは、専任の宅建士の要件のページで解説しています。宅建に合格した人が宅建士証を受けるまでの流れは、宅建に合格してから宅建士証を受けるまでの手続きのページにまとめています。
大臣免許と知事免許
どちらの免許を受けるかは、事務所がどこにあるかで決まります(法3条1項)。2つの免許の違いを表1にまとめました。
| 免許 | 誰が受けるか | 申請先 | 法定の費用 | 都道府県による違い | 条文 |
|---|---|---|---|---|---|
| 宅建業免許の新規申請(大臣免許) | 2以上の都道府県に事務所を設置して営もうとする者 | 本店所在地を管轄する地方整備局長等(2024年5月25日から、都道府県知事を経由しない) | 登録免許税9万円 | 無(国の手続き。標準処理期間90日=解釈・運用の考え方。沖縄は沖縄総合事務局) | 法3条1項 規則32条1項 登録免許税法別表第一 |
| 宅建業免許の新規申請(知事免許) | 1つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置して営もうとする者 | 事務所所在地の都道府県知事(担当課は都道府県ごと) | 申請手数料:標準33,000円(電子26,500円)。実額は都道府県の条例 | 有(手数料の実額・納付方法・部数・追加書類・審査期間) | 法3条1項 法4条1項 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(本則の表) |
知事免許の申請手数料は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令が定める標準額です。実際の額は都道府県の条例で定められます。
ここでいう事務所は、本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設で、契約を締結する権限を持つ使用人を置くものです(令1条の2)。解釈・運用の考え方では、宅建業を営まない支店は事務所に当たらないと整理されています。
大臣免許の申請先は、本店の所在地を管轄する地方整備局長等です(規則32条1項)。以前は都道府県知事を経由して申請する仕組みでしたが、2024年5月25日からは、知事を経由せずに地方整備局長等へ申請します。現在の法78条の3は、国土交通大臣から知事への情報提供を定める規定です。
費用は、大臣免許の新規申請では登録免許税(登録免許税法別表第一)、知事免許では都道府県の条例で定める申請手数料です。表1の知事免許の額は政令が定める標準額であり、実際の額は、申請先の都道府県の案内で確認できます。審査の期間は、大臣免許については解釈・運用の考え方に標準処理期間(表1)が示されていますが、知事免許は都道府県ごとに異なります。申請先・必要書類・審査期間は、宅建業免許の新規申請のページで解説しています。
有効期間は5年
宅建業免許の有効期間は5年です(法3条2項)。有効期間が満了した後も宅建業を営むには、免許の更新を受けなければなりません(法3条3項)。更新の申請は、有効期間が満了する日の90日前から30日前までに行います(規則3条)。
なお、宅建士が5年ごとに受ける宅建士証の更新(法定講習を受けて、新しい宅建士証の交付を受ける手続き)は、宅建業免許の更新とは別の手続きです(宅建士証の有効期間は法22条の2第3項)。
免許を受けても、すぐには開業できない:開業までの流れ
宅建業免許を受けても、その日から営業できるわけではありません。免許から開業までの手続きを、表2にまとめました。開業までにかかる費用は、宅建業の開業費用のページにまとめています。
| 手続き | いつまでに | どこへ | 法定の費用 | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 宅建業免許の新規申請(知事免許) | 期限の定めなし(営業を始める前に受ける) | 事務所所在地の都道府県知事(担当課は都道府県ごと) | 申請手数料:標準33,000円(電子26,500円)。実額は都道府県の条例 | 法3条1項 法4条1項 |
| 営業保証金の供託 | 法定の期限なし(免許から3か月以内に届出がなければ催告、催告到達から1か月以内に届出がなければ免許取消しがありうる)。都道府県の手引きは「免許の日から3か月以内に」と案内(沖縄) | 主たる事務所の最寄りの供託所 | 主たる事務所1,000万円+その他の事務所ごとに500万円 | 令2条の4 法25条6項〜7項 |
| 営業保証金の供託の届出 | 届出の日数の定めなし。届出前は事業を開始できない(違反は罰則)。免許証は、大臣免許では届出と引き換えに交付する扱い(解釈・運用の考え方)。知事免許は都道府県の運用による | 免許権者(大臣または知事) | — | 法25条4項 法25条5項 法81条1号 |
| 保証協会への加入(弁済業務保証金分担金の納付) | 加入しようとする日までに分担金を納付 | 宅建業保証協会(全国宅地建物取引業保証協会/不動産保証協会)の地方本部 | 分担金:主たる事務所60万円+その他の事務所ごとに30万円(法定)。入会金・会費等は協会・地方本部で異なる | 法64条の9第1項〜3項 令7条 法64条の13 |
営業保証金の供託と保証協会への加入は、どちらか一方を選びます。保証協会の入会金・会費などは、協会・地方本部によって異なります。大臣免許の費用は表1のとおりです。
開業までの流れは、次のとおりです。
- 要件を満たす:事務所があること、専任の宅建士を置くこと、欠格事由に当たらないこと。詳しくは宅建業免許の要件のページで解説しています。
- 免許を申請する:知事免許は事務所の所在地の都道府県知事へ、大臣免許は本店の所在地を管轄する地方整備局長等へ申請します(法4条1項・規則32条1項)。書類と手順は、宅建業免許の新規申請のページで解説しています。
- 営業保証金を供託して届け出るか、保証協会に加入する:営業保証金を供託したときは、供託書の写しを添えて免許権者(免許をした国土交通大臣または都道府県知事)に届け出ます(法25条4項)。保証協会に加入した場合は、営業保証金の供託は要りません(法64条の13)。どちらを選ぶかと手順は、営業保証金と保証協会のページで解説しています。
- 事業を始める:営業保証金の供託の届出をした後でなければ、事業を開始できません(法25条5項)。保証協会に加入する場合は、協会の社員となり、営業保証金の供託が不要になった後に事業を始めます(法64条の13)。
- 開業後の届出と更新:役員や専任の宅建士が変わったときの変更の届出(法9条)や、5年ごとの免許の更新があります。
営業保証金の供託の届出について、宅建業法には「免許から何日以内」という届出の期限は定められていません。ただし、免許を受けた日から3か月以内に届出がないときは、免許権者が届出をするよう催告し、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができるとされています(法25条6項・7項)。また、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、免許の日から3か月以内に供託等の手続きをするよう案内しています。免許を受けたら、早めに供託か保証協会への加入を進めておくと安心です。
届出の前に事業を始めると、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(法81条1号)。また、免許を受けてから1年以内に事業を開始しないときや、引き続いて1年以上事業を休止したときは、免許が取り消されます(法66条1項6号)。
解釈・運用の考え方では、大臣免許の免許証は、営業保証金を供託した旨の届出(保証協会に加入した場合は、協会からの報告)があったときに交付する扱いとされています。知事免許の扱いは都道府県ごとの運用で、たとえば沖縄県の手引きでは、届出書と引き換えに免許証を交付するとしています。
無免許営業と名義貸しの禁止
免許を受けない者は、宅建業を営むことができません(法12条1項)。また、免許を受けない者が、宅建業を営む旨の表示をしたり、宅建業を営む目的で広告をしたりすることも禁止されています(法12条2項)。事務所や看板、ホームページを準備する段階でも、免許を受ける前にこうした表示・広告をしないよう注意が必要です。
宅建業者が自分の名義で他人に宅建業を営ませること(名義貸し)や、他人に宅建業を営む旨の表示・広告をさせることも禁止されています(法13条1項・2項)。
無免許営業や名義貸しによる営業などに対する罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です(法79条1号〜4号)。これらの違反では、法人にも1億円以下の罰金が科されます(法84条1号)。無免許の者の表示・広告や、名義貸しによる表示・広告に対しては、100万円以下の罰金が科されます(法82条2号)。
よくある質問
宅建業を営むには、免許が必要ですか?
法3条1項の定めでは、宅建業を営むには免許が必要です。国・地方公共団体には宅建業法の規定が適用されません(法78条1項)。自分の取引が「業として」に当たるかは個別に判断されるので、迷うときは申請先の都道府県に確認することをおすすめします。
宅建業の免許は、宅建士の資格がなくても受けられますか?
法には、免許を申請する本人が宅建士でなければならないという定めはありません。ただし、事務所ごとに、業務に従事する者の5分の1以上の割合で専任の宅建士を置くことが必要で(法31条の3第1項・規則15条の5の3)、これを欠くと免許を受けられません(法5条1項15号)。
宅建業免許に、試験はありますか?
免許は、試験を受けて取るものではありません。申請をして(法4条1項)、法5条1項の免許の基準(欠格事由など)に当たらないかの審査を受けるものです。試験があるのは、人の資格である宅建士のほうです。
大臣免許と知事免許は、どう決まりますか?
法3条1項の定めでは、事務所が2以上の都道府県にあれば大臣免許、1つの都道府県にだけあれば知事免許です。解釈・運用の考え方では、宅建業を営まない支店は事務所に当たらないと整理されています。
免許を受けたら、すぐに営業できますか?
できません。法25条5項の定めでは、営業保証金を供託して届け出た後でなければ事業を開始できません。保証協会に加入した場合は、営業保証金の供託は要りません(法64条の13)。
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