宅建業を始めるには、営業保証金を供託所に供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納めるか、どちらかが必要です。供託する場合は主たる事務所で1,000万円(その他の事務所ごとに500万円)、保証協会に加入する場合の分担金は主たる事務所で60万円(その他の事務所ごとに30万円)で、保証協会の場合はこのほかに入会金・会費がかかります(額は協会によって異なります)。このページは、開業のときにどちらを選ぶかと、その手順をまとめています。
営業保証金を供託する場合は、主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、免許権者に届け出た後でなければ、事業を始めることはできません(宅地建物取引業法(以下「法」)25条1項・4項・5項)。保証協会に加入する場合は、加入しようとする日までに分担金を納め、協会の社員になれば、営業保証金を供託する必要はありません(法64条の9第1項・64条の13)。このページでは、2つの方法の比較、供託の手順と供託所、届出の期限、保証協会の仕組み、事業を始めた後の追加の手続き・還付・取戻しを、条文で整理します。
このページの目次
宅建業の供託金(営業保証金)と保証協会の分担金の比較
宅建業で一般に「供託金」と呼ばれることが多いのは、法令上は「営業保証金」と定められているものです(法25条1項)。営業保証金を供託する方法と、保証協会に加入して分担金を納める方法を、開業のときの手続きに絞って表1にまとめました。額は、宅地建物取引業法施行令(以下「令」)2条の4・7条で定められています。
| 項目 | 営業保証金を供託する | 保証協会に加入する | 条文 |
|---|---|---|---|
| 額 | 主たる事務所1,000万円+その他の事務所ごとに500万円 | 弁済業務保証金分担金として、主たる事務所60万円+その他の事務所ごとに30万円 | 令2条の4 令7条 |
| 納める先 | 主たる事務所の最寄りの供託所(法務局・地方法務局など)に、自分で供託する | 保証協会に納める(協会が、納付を受けた日から1週間以内に、同じ額の弁済業務保証金を供託所に供託する) | 法25条1項〜3項 供託法1条 法64条の7第1項〜2項 |
| いつまでに | 法に日数の定めはない。ただし、免許の日から3か月以内に届出がないと催告があり、催告の到達から1か月以内に届出がないと、免許を取り消されることがある | 加入しようとする日までに分担金を納める | 法25条6項〜7項 法64条の9第1項〜3項 |
| 事業を始められるとき | 供託して、免許権者に届け出た後 | 保証協会の社員となった後(社員は営業保証金の供託を要しない) | 法25条4項〜5項 法64条の13 |
| ほかにかかるもの | 金銭のほか、国債などの有価証券でも供託できる(有価証券は評価額で充てる) | 分担金のほかに、協会の入会金・会費などがかかる(協会・地方本部ごとに異なる) | 規則15条1項1号〜3号 |
どちらか一方を選びます(法64条の13)。事業を始めた後の追加の手続き(事務所の新設・還付による不足・保証協会の社員の地位の喪失・主たる事務所の移転)は、宅建業免許を受けた後の手続きのページの表2にまとめています。
どちらを選ぶかは、手元の資金、事務所の数、加入する協会の入会金・会費などを比べて決めることになります。事務所を増やすと、どちらの方法でも追加の供託・納付が必要です(下の「事務所を増やしたとき・移したとき」)。保証協会に加入した後も、還付があったときの還付充当金や、特別弁済業務保証金分担金を納める場面があります(下の「保証協会に加入する場合」)。
営業保証金の供託所と、供託の手順
営業保証金は、主たる事務所の最寄りの供託所に供託します(法25条1項)。供託所は、法務局・地方法務局、これらの支局と、法務大臣が指定する出張所です(供託法1条)。
供託は、法務大臣が定めた書式の供託書を作り、供託物に添えて供託所に差し出して行います(供託法2条)。
営業保証金は、金銭のほか、国債・地方債などの有価証券でも供託できます(法25条3項)。有価証券の評価額は、国債は額面、地方債・政府保証債は額面の90%、その他の債券は額面の80%です(宅地建物取引業法施行規則(以下「規則」)15条1項1号〜3号)。
どの供託所が「最寄り」に当たるかや、供託に必要なものの細目は、供託所と申請先の案内で確かめておきましょう。たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、免許の通知が届いたら、主たる事務所の所在地を管轄する供託所(那覇地方法務局)に供託し、供託書のコピーを添えて知事に届け出るよう案内しています。
取引の相手方への、供託所などの説明
宅建業者は、取引の相手方など(宅建業者を除きます)に対して、契約が成立するまでの間に、次の事項を説明するようにしなければなりません(法35条の2)。
- 保証協会の社員でない場合:営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所と、その所在地(法35条の2第1号)
- 保証協会の社員である場合:社員である旨、保証協会の名称・住所・事務所の所在地、弁済業務保証金を供託している供託所と、その所在地(同条2号)
この説明は、重要事項の説明(法35条)とは別の条文で定められています。
供託の届出と、届出の期限(催告と取消し)
営業保証金を供託したら、供託書の写しを添えて、その旨を免許権者に届け出ます(法25条4項)。この届出をした後でなければ、事業を始めることはできません(法25条5項)。届出の前に事業を始めると、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります(法81条1号)。
法は、この届出の日数を定めていません。ただし、免許を受けた日から3か月以内に届出がないときは、免許権者が届出をするよう催告し、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができるとされています(法25条6項・7項)。また、都道府県の手引きが期限を案内していることがあり、たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、供託等の手続きを免許の日から3か月以内に済ませるよう求め、期日を過ぎると未供託業者として免許を取り消されることがあると案内しています。
保証協会に加入する場合は、協会の社員になれば、営業保証金を供託する必要はありません(法64条の13)。
免許を受けてから1年以内に事業を開始しないときは、免許が取り消されます(法66条1項6号)。開業までの流れは、宅建業免許とは(免許から開業までの流れ)で解説しています。
免許を受けた後の届出の一覧は、宅建業免許を受けた後の届出と期限(営業保証金の供託の届出)にもまとめています。
保証協会に加入する場合(弁済業務保証金分担金)
保証協会は、宅建業者だけを社員とする一般社団法人で、国土交通大臣が指定します(法64条の2)。加入できる保証協会は1つだけで、ある協会の社員になっている宅建業者は、別の協会の社員になることはできません(法64条の4第1項)。
加入するときは、加入しようとする日までに、弁済業務保証金分担金を保証協会に納めます(法64条の9第1項)。協会は、納付を受けた日から1週間以内に、同じ額の弁済業務保証金を供託所に供託します(法64条の7第1項・2項)。保証協会の社員は、営業保証金を供託する必要がありません(法64条の13)。社員と取引をした相手方は、協会の認証を受けて、弁済業務保証金から弁済を受けます(法64条の8)。
加入した後も、次の場合は追加の納付が必要になり、期限までに納めないと社員の地位を失います。
- 還付充当金:弁済業務保証金の還付があったときは、協会から通知を受けた日から2週間以内に、還付額に相当する還付充当金を納めます(法64条の10)。
- 特別弁済業務保証金分担金:弁済業務保証金準備金で足りないときは、協会から通知を受けた日から1か月以内に納めます(法64条の12第3項〜5項)。額は協会が定めます。
- 事務所を新設したときの分担金:新しい事務所を設置した日から2週間以内に納めます(法64条の9第2項・3項)。
社員の地位を失ったときは、1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(法64条の15)。保証協会に加入すれば費用は分担金だけ、とは限らない点に注意が必要です。
2つの保証協会(どちらか一方に加入する)
国土交通大臣の指定を受けた保証協会について、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会と公益社団法人不動産保証協会の2団体があり、加入できるのはどちらか一方だけと案内しています。同じ手引きでは、社員になるには協会の入会審査があり、分担金のほかに入会金などの諸経費が必要であるとしています。
入会金・会費の額、入会の手続き、窓口となる地方本部は、協会ごとに異なります。額は、各協会・地方本部の案内で確かめておくことをおすすめします。
事務所を増やしたとき・移したとき
営業保証金を供託している宅建業者が、事業を始めた後に事務所を新設したときは、その事務所の分の営業保証金を供託して届け出た後でなければ、新しい事務所で事業を始めることはできません(法26条)。なお、供託と届出までの日数の定めはありません。
保証協会の社員は、新しい事務所を設置した日から2週間以内に、その分の分担金を協会に納めます。納めないと、社員の地位を失います(法64条の9第2項・3項)。
主たる事務所を移転して、最寄りの供託所が変わったときは、金銭だけで供託している場合は遅滞なく保管替えを請求し、それ以外の場合は、移転後の最寄りの供託所に遅滞なく新たに供託します(法29条1項)。免許換えで事務所が増えた場合も、追加の供託・納付があります(法26条・64条の9第2項)。免許換えの手続きは、宅建業の免許換えのページで解説しています。
事業を始めた後の営業保証金・保証協会の手続きは、宅建業免許を受けた後の届出と期限(営業保証金・保証協会の追加の手続き)に表でまとめています。移転先・新設する事務所の要件は、宅建業の事務所の要件(事務所を移す・増やすとき)で解説しています。
還付(取引の相手方が弁済を受けるとき)
営業保証金から還付を受けられるのは、宅建業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者を除きます)で、その取引により生じた債権についてです(法27条1項)。
還付によって営業保証金が不足したときは、宅建業者は、省令で定める日から2週間以内に不足額を供託し、供託した日から2週間以内に、免許権者に届け出なければなりません(法28条1項・2項)。
保証協会の社員の場合は、相手方は協会の認証を受けて弁済業務保証金から弁済を受け(法64条の8)、社員は上の還付充当金を納めます(法64条の10)。
取戻し(廃業したとき・保証協会に加入したとき)
廃業などで営業保証金を取り戻すときは、還付を受ける権利を持つ者に対し、6か月以上の期間を定めて申し出るよう公告し、その期間内に申出がなかった場合に取り戻すことができます。ただし、取り戻す事由が生じた時から10年を経過したときは、公告をせずに取り戻せます(法30条1項・2項)。取戻しの公告の手順は、宅建業の廃業届と営業保証金の取戻しのページで解説しています。
保証協会に加入して営業保証金の供託が要らなくなった場合の取戻しについては、法64条の14が法30条2項の公告の定めを準用していないため、公告なしで取り戻せると読めます。また、有価証券の償還などで営業保証金を変換するため新たに供託したときは、遅滞なく、供託書正本の写しを添えて免許権者に届け出ます(規則15条の4の2)。解釈・運用の考え方では、この場合の旧供託物の取戻しには、公告を要しない扱いとされています。どちらも、取り戻す前に、申請先と供託所の案内で手続きを確かめておきましょう。
よくある質問
営業保証金は、いくら必要ですか?
令2条の4の定めでは、主たる事務所で1,000万円、その他の事務所ごとに500万円です。保証協会に加入すれば営業保証金の供託は要らず、弁済業務保証金分担金(主たる事務所で60万円、その他の事務所ごとに30万円。令7条)と、協会の入会金・会費を納めます。
営業保証金は、どこに供託しますか?
主たる事務所の最寄りの供託所です(法25条1項)。供託所は、法務局・地方法務局、これらの支局と、法務大臣が指定する出張所です(供託法1条)。
営業保証金は、いつまでに供託しますか?
法は届出の日数を定めていません。ただし、免許の日から3か月以内に届出がないと催告があり、催告の到達から1か月以内に届出がないと、免許を取り消されることがあります(法25条6項・7項)。届出の前は、事業を始められません(法25条5項)。都道府県の手引きが期限を案内していることもあり、沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、供託等の手続きを免許の日から3か月以内に済ませるよう求めています。
営業保証金は、取り戻せますか?
廃業などのときは、6か月以上の期間を定めた公告を経て取り戻せます。取り戻す事由が生じた時から10年を経過したときは、公告は要りません(法30条1項・2項)。
保証協会に加入しないで、宅建業を始められますか?
始められます。その場合は、営業保証金を供託して、免許権者に届け出た後に事業を始めます(法25条1項・5項)。
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