宅地建物取引業(以下「宅建業」)の免許を受けるための要件は、大きく分けて3つです。1つ目は事務所があること、2つ目は事務所ごとに専任の宅建士を置くこと、3つ目は欠格事由に当たらないことです。
条文では、免許を受けられない場合が「免許の基準」として宅地建物取引業法(以下「法」)5条1項に列挙されており、一般にはこれが欠格事由と呼ばれます。専任の宅建士を置く要件(法31条の3第1項)を欠く者も、免許を受けられない者として法5条1項15号に規定されているため、2つ目の要件(専任の宅建士)は、3つ目の欠格事由の一部にも含まれます。以下、宅地建物取引業法施行令を「令」、同法施行規則を「規則」と呼びます。
事務所の要件
宅建業の「事務所」とは、本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設で、契約を締結する権限を持つ使用人を置くものを指します(令1条の2)。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、継続的に使用でき、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えていることが求められています。
自宅やレンタルオフィス、シェアオフィスを事務所にできるかについて、条文や解釈・運用の考え方には、個別の可否までは示されていません。実際の判断は都道府県の審査基準によるもので、その条件を満たさなければ、事務所として認められません。たとえば沖縄県の手引き(令和7年4月発行)では、自宅と兼用する事務所は原則として認めず、玄関から他の部屋を通らずに入れることや、居住部分と壁などの固定物で区切られていることなどの条件を満たす場合に限り認めるとしています。
物件を借りる前に、図面を持って申請先の都道府県に確認することをおすすめします。自宅・レンタルオフィス・シェアオフィスの扱い、事務所の写真と掲示するものは、宅建業の事務所の要件のページで解説しています。
専任の宅建士の要件
宅建業者は、事務所ごとに、業務に従事する者の5分の1以上の割合で、成年者である専任の宅建士を置かなければなりません(法31条の3第1項・規則15条の5の3)。退職などで不足したときは、2週間以内に要件を満たすための措置をとる必要があります(法31条の3第3項)。
人数の数え方や、常勤・専従の考え方、掛け持ち(兼務)の扱い、不足したときの手続きは、専任の宅建士の要件のページで解説しています。
欠格事由(免許の基準)の一覧
法5条1項は、次の表の号のいずれかに当たる場合や、免許の申請書・添付書類の重要な事項に虚偽の記載があり、または重要な事実の記載が欠けている場合は、免許をしてはならないと定めています(法5条1項柱書)。
| 号 | 中身 | 条文 |
|---|---|---|
| 1号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 | 法5条1項1号 |
| 2号 | 不正手段・業務停止処分違反等(66条1項8・9号)で免許取消し後5年(法人は聴聞公示前60日以内の役員も) | 法5条1項2号 |
| 3号・4号 | 3号:免許の取消処分の聴聞の公示の日から処分(または処分をしない決定)の日までに解散・廃業の届出をした者(相当の理由がある者を除く)で、届出の日から5年を経過しないもの/4号:同じ期間に合併により消滅した法人、または解散・廃業の届出をした法人(相当の理由がある法人を除く)の、公示の日前60日以内に役員であった者で、消滅・届出の日から5年を経過しないもの | 法5条1項3号〜4号 |
| 5号 | 拘禁刑以上の刑の執行終了等から5年 | 法5条1項5号 |
| 6号 | 宅建業法・暴対法違反、傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・背任、暴力行為等処罰法の罪による罰金刑の執行終了等から5年 | 法5条1項6号 |
| 7号 | 暴力団員等(暴力団員でなくなって5年を経過しない者を含む) | 法5条1項7号 |
| 8号・9号 | 申請前5年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者/不正・不誠実な行為のおそれが明らかな者 | 法5条1項8号〜9号 |
| 10号 | 心身の故障により宅建業を適正に営めない者(精神の機能の障害により認知・判断・意思疎通を適切に行えない者) | 法5条1項10号 規則3条の2 |
| 11号 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が1〜10号に該当 | 法5条1項11号 |
| 12号・13号 | 法人で、役員または政令で定める使用人のうちに1〜10号に該当する者があるもの(12号)/個人で、政令で定める使用人のうちに1〜10号に該当する者があるもの(13号) | 法5条1項12号〜13号 |
| 14号 | 暴力団員等が事業活動を支配する者 | 法5条1項14号 |
| 15号 | 事務所について専任の宅建士の設置要件(31条の3)を欠く者 | 法5条1項15号 |
号は法5条1項の号です。10号の中身は、法5条1項10号が委ねる規則3条の2の定めです。このほか、申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載があるときや、重要な事実の記載が欠けているときも、免許は受けられません(法5条1項柱書)。
実務で注意したいのは、欠格事由の確認の対象が申請者本人に限られないことです。法人の役員や政令で定める使用人、個人の政令で定める使用人が1号〜10号に該当するときも、その法人・個人は免許を受けられません(法5条1項12号・13号)。申請の前に、役員と政令で定める使用人の全員について確かめておくことをおすすめします。
5号の「拘禁刑以上の刑」は、2025年6月1日より前は「禁錮以上の刑」と規定されていました。
8号・9号(宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者)に当たるかは、個別の事情で判断されます。
役員の範囲(相談役・顧問・5%株主)
欠格事由でいう「役員」は、業務を執行する社員、取締役、執行役、これらに準ずる者のほか、相談役・顧問その他いかなる名称であるかを問わず、これらと同等以上の支配力を持つ者を含みます(法5条1項2号の括弧書)。解釈・運用の考え方では、名刺や案内状などで会長・相談役などの役職名を使っているかが、判断の一つの基準とされています。
一方で、発行済株式の5%以上を持つ株主は、それだけでは「役員」に該当しません。5%以上の株主は、免許の申請書に氏名・住所などを記載した書面を添える対象です(規則1条の2第1項2号)。欠格事由の審査の対象と、添付書類の対象を分けて考えると、整理しやすくなります。ただし、名称を問わず取締役と同等以上の支配力を持つ者は「役員」に含まれるため、株主であっても該当する場合があります。
なお、専任の宅建士のみなし規定(法31条の3第2項)でいう「役員」は、これより狭く、相談役・顧問を含みません。
政令で定める使用人
政令で定める使用人(一般には政令使用人と呼ばれます)は、宅建業に関し事務所の代表者である使用人です(令2条の2)。解釈・運用の考え方では、契約を締結する権限を持つ使用人について、原則として、継続的に業務を行うことができる施設の代表者などが該当し、取引の相手方に対して契約を締結する権限を行使する者も含まれる、と整理されています。
よくある質問
宅建業免許の要件は、何ですか?
事務所があること、事務所ごとに専任の宅建士を置くこと、欠格事由に当たらないことの3つです。条文では、免許を受けられない場合が「免許の基準」として法5条1項に列挙されています。
「欠格事由」とは、どういう意味ですか?
法5条1項の各号に該当すると免許を受けられない、という基準のことです。申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載がある場合なども、免許を受けられません(法5条1項柱書)。
政令で定める使用人にも、欠格事由はありますか?
あります。法5条1項12号・13号の定めでは、役員や政令で定める使用人が1号〜10号に該当すると、その法人・個人は免許を受けられません。
株主に欠格事由に該当する人がいると、免許は受けられませんか?
発行済株式の5%以上を持つ株主は、それだけでは「役員」ではなく、添付書類の対象です(規則1条の2第1項2号)。ただし、名称を問わず取締役と同等以上の支配力を持つ者は「役員」に含まれます(法5条1項2号の括弧書)。該当するかどうかは個別に判断されるので、申請先の都道府県に確認することをおすすめします。
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